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健康経営の成果を測るには?経産省2025年版「健康経営ガイドブック」で読み解く代表的KPI一覧

体調管理・労務環境

健康経営の成果を測るには?経産省2025年版「健康経営ガイドブック」で読み解く代表的KPI一覧

健康経営への取り組みが従業員の生産性向上や企業価値向上につながることは広く知られていますが、その成果を客観的に測定・評価する仕組みは確立されているでしょうか。経済産業省が発表した2025年版「健康経営ガイドブック」では、企業が健康経営の効果を数値で把握するための代表的なKPI(重要業績評価指標)が詳細に示されています。 本記事では、健康経営度調査や健康経営優良法人認定の評価基準としても重要な位置を占めるこれらのKPIについて、具体的な設定方法から運用ノウハウまで体系的に解説します。

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健康経営KPIの基本概念

健康経営におけるKPIの設定は、従業員の健康状態の改善が、企業の生産性や業績の向上にどのようにつながるかを可視化・数値化するための枠組みです。適切なKPIを導入することで、健康経営の成果を客観的に評価し、経営戦略の一部として健康投資を位置づけることが可能になります。

経済産業省が実施する健康経営度調査では、企業の取り組みを以下の5つの観点から評価しています:

  1. 経営理念・方針
  2. 組織体制
  3. 制度・施策実行
  4. 評価・改善
  5. 法令遵守・リスクマネジメント

この中でも、「評価・改善」の領域では、KPIを活用した定量的な進捗把握と継続的改善の体制構築が、企業の成熟度を測る上で重要な要素とされています。

2025年版ガイドブックの新しい動向

2025年版の健康経営ガイドブックでは、これまでの基本的な健康指標(例:健康診断受診率、喫煙率、運動習慣など)に加え、時代の変化に即した新たな評価項目が導入されています。

特に注目されるのは以下のような観点です。

  • 女性特有の健康課題への対応(例:月経・更年期・不妊治療などへの支援)
  • メンタルヘルス対策の強化(セルフケアや職場内支援体制の充実)
  • 仕事と介護の両立支援(柔軟な勤務制度、相談体制の整備)

これらの項目の追加により、企業の健康経営がより包括的かつ多様性に対応したものへと進化しつつあることが示されています。KPIのあり方も、単なる数値管理ではなく、従業員のライフステージや個別ニーズを考慮した柔軟かつ戦略的な設計が求められる時代に入ったといえるでしょう。

戦略マップに基づくKPI設計の重要性

健康経営のKPI設計では、戦略マップの考え方を活用することが推奨されています。これは、投入した資源(インプット)から活動(アクティビティ)、そして成果(アウトプット)、最終的な結果(アウトカム指標)まで一連の流れを体系化するアプローチです。戦略マップにより、健康投資がどのような経路を通じて企業価値向上に結びつくかを明確にし、経営層への説明責任を果たすことができます。

PHR活用による測定精度向上

近年注目されているPHR(パーソナルヘルスレコード)の活用により、従来の健診データだけでは把握できなかった従業員の日常的な健康状態の変化をリアルタイムで測定することが可能になっています。ウェアラブルデバイスやスマートフォンアプリから得られるデータを活用することで、より精密なKPI設定と効果測定が実現できます。

健康状態・リスク評価領域の代表的KPI

従業員の健康状態とリスク評価に関するKPIは、健康経営の基盤となる重要な指標群です。2025年版ガイドブックの健康診断関連の基本的なKPIとしては、健康診断受診率、有所見率、特定保健指導対象者割合、生活習慣病リスク保有者率などが挙げられます。

これらの指標は、企業全体の健康リスクの現状把握と経年変化の追跡に不可欠です。健診データの分析により、生活習慣病リスクを早期発見し、重症化予防への投資効果を定量的に評価することが可能になります。

基本健診データ活用KPI

従業員の健康状態を定量的に把握し、継続的な改善につなげるためには、KPIの活用が欠かせません。以下は、基本健診データを活用したKPIの一覧表であり、企業が従業員の健康状態を把握し、健康経営の効果を定量的に評価するために用いられる代表的な指標です。

KPI項目測定方法目標設定例
健康診断受診率受診者数÷対象者数×100100%(法定義務)
有所見率有所見者数÷受診者数×100業界平均以下
特定保健指導対象者率対象者数÷40歳以上受診者数×100前年度比-5%
BMI適正範囲者率BMI18.5-25.0未満者数÷受診者数×10070%以上
血圧正常値者率収縮期血圧130mmHg未満者数÷受診者数×10080%以上

メンタルヘルス関連KPI

メンタルヘルス対策のKPIでは、ストレスチェック受検率、高ストレス者割合、メンタルヘルス不調による休職率、復職成功率などが重要な指標となります。特に、ストレスチェック制度の有効活用により、職場環境改善の効果を定量的に把握することが求められています。メンタルヘルス関連KPIの改善は、従業員のエンゲージメントスコア向上と直結し、最終的に企業の生産性向上につながる重要な投資領域です。

女性特有の健康課題対応KPI

2025年版ガイドブックでは、女性特有の健康課題対応が重要視されています。これらの健康課題対応には、婦人科検診受診率、更年期症状による就労支障率、妊娠・出産・育児関連休業取得率、プレコンセプションケア(妊娠前管理)実施率などのKPIが有効です。これらは、女性従業員の長期的な健康維持と職場での活躍を支援する取り組みの効果を測定する重要な指標です。

生産性・パフォーマンス評価のKPI設定方法

健康経営における重要な評価軸の一つが、従業員の生産性・パフォーマンスへの影響測定です。プレゼンティーズム(出勤しているが体調不良等により生産性が低下している状態)とアブセンティーズム(欠勤・休職による損失)の両面から、健康状態が業務パフォーマンスに与える影響を定量化することが強く推奨されています。

これらのツールにより、従業員が感じている健康問題が実際の業務パフォーマンスにどの程度影響しているかを数値化できます。プレゼンティーズム損失額の算定により、健康投資のROI(投資収益率)を経営層に対して明確に示すことが可能になります。

プレゼンティーズム測定の具体的手法

プレゼンティーズムの測定には、WHO-HPQ(World Health Organization Health and Work Performance Questionnaire)やWLQ(Work Limitations Questionnaire)などの標準化された測定ツールが活用されています。

プレゼンティーズムの測定では、従業員自身による主観的評価と客観的な業務指標の組み合わせが重要です。主観的評価では、「過去4週間で健康問題により通常の仕事ができなかった時間の割合」を0-100%で回答してもらう方法が一般的です。客観的指標としては、売上高、処理件数、エラー率、顧客満足度などの業務KPIと健康状態の相関分析を行います。

アブセンティーズム関連KPI

従業員の健康課題は、欠勤や休職といった形で業務に直接的な影響を及ぼすことがあります。こうしたアブセンティーズムを可視化し、予防・対応策を講じるためには、適切なKPIの設定とモニタリングが欠かせません。

以下は、企業におけるアブセンティーズム管理に有効なKPIと、その算出方法、一般的なベンチマーク例をまとめたものです。

KPI項目算出方法ベンチマーク例
疾病休職率疾病休職者数÷従業員数×100業界平均2.5%以下
平均欠勤日数年間総欠勤日数÷従業員数年間5日以下
健康起因欠勤率健康理由欠勤日数÷総労働日数×1003%以下
復職成功率復職後1年継続者数÷復職者数×10085%以上
労災発生率労災件数÷従業員数×1000業界平均以下

エンゲージメントと健康の関連性KPI

従業員エンゲージメントと健康状態の関連性を測定するKPIも重要な評価軸となっています。従業員満足度調査、エンゲージメントスコア、離職率、健康経営施策への従業員参加率などを健康関連指標と組み合わせて分析することで、健康投資が従業員のモチベーションや定着率にどの程度寄与しているかを把握できます。

エンゲージメントスコアが高い従業員ほど健康状態が良好であり、結果として高いパフォーマンスを発揮する傾向が確認されています。

施策実行・参加状況の測定指標

健康経営施策の実行状況と従業員参加状況を測定するKPIは、投入した資源がどの程度活用されているかを把握する重要な指標群です。従業員参加率の測定では、健康セミナー参加率、健康アプリ利用率、健康イベント参加率、保健指導受講率などが基本的なKPIとなります。単純な参加率だけでなく、参加者の満足度や行動変容の程度まで含めた多面的な評価が重要です。

健康増進施策の効果測定KPI

健康増進施策の効果測定では、運動習慣改善率、食生活改善率、禁煙成功率、減量達成率などの行動変容指標が重要です。これらの指標は、施策実施前後の比較により効果を定量化できます。また、ウェアラブルデバイスやスマートフォンアプリを活用することで、日常的な活動量や生活習慣の変化をリアルタイムで追跡することも可能になっています。

労働時間管理・環境改善関連KPI

労働時間管理や環境改善に関連するKPIとしては、以下のようなものがあります。

  • 平均残業時間:月間平均残業時間の推移
  • 有給休暇取得率:取得日数÷付与日数×100
  • 長時間労働者割合:月80時間超残業者数÷従業員数×100
  • テレワーク実施率:テレワーク実施者数÷対象者数×100
  • 職場環境満足度:職場環境に関する従業員満足度調査結果
  • 安全衛生委員会開催回数:法定回数の遵守状況

法令遵守・リスクマネジメント指標

健康経営における法令遵守とリスクマネジメントの状況を示すKPIも重要な評価項目です。労働安全衛生法に基づく各種取り組みの実施状況、産業医との連携体制構築、安全衛生教育の実施率、職場巡視の実施頻度などが含まれます。法令遵守・リスクマネジメント指標の改善は、企業の社会的責任を果たすだけでなく、従業員の安全・安心な職場環境の実現により生産性向上にも直結します。

組織体制・経営層関与の評価項目

健康経営の成功には、経営層のコミットメントと適切な組織体制の構築が不可欠です。2025年版ガイドブックでは、トップダウンによる健康経営の推進体制と、現場レベルでの実行力を両立させる組織づくりの重要性が強調されています。

経営層関与度測定指標

評価項目では、健康経営責任者の設置、専任担当者の配置、健康経営推進チームの設立などが基本的なKPIとなります。さらに、経営層による健康経営方針の明文化、定期的な進捗報告、予算配分の適切性なども重要な評価軸です。経営層が健康経営を経営戦略の一環として位置づけ、継続的に資源を投入する体制を構築することで、従業員の健康意識向上と企業価値向上の好循環を実現できます。

経営層関与度測定指標としては、以下のようなものがあります。

評価項目測定方法評価基準
健康経営方針の明文化文書化された方針の存在確認明文化済み・周知済み
経営層による発信頻度年間の健康経営関連発信回数四半期に1回以上
健康経営予算配分率健康経営予算÷総人件費×100業界ベンチマーク以上
取締役会報告頻度年間の健康経営進捗報告回数年2回以上
専任担当者配置率健康経営専任者数÷従業員1000人1名以上配置

産業医・専門職連携KPI

産業医や保健師などの専門職との連携状況も重要な評価項目です。産業医面談実施率、保健指導実施率、健康相談窓口利用率、専門職による職場巡視回数などのKPIにより、専門的知見を活用した健康管理体制の充実度を測定できます。また、外部専門機関との連携状況や、最新の医学的知見を施策に反映する仕組みの構築状況も評価対象となります。

仕事と介護両立支援施策KPI

高齢化社会の進展に伴い、仕事と介護の両立支援も健康経営の重要な要素となっています。介護休業制度利用率、介護支援制度認知度、介護離職率、介護相談窓口利用率などのKPIにより、従業員のライフステージに応じた支援体制の充実度を評価できます。仕事と介護両立支援施策の充実により、経験豊富な中高年従業員の継続的な活躍を支援し、企業の人材力強化につながります。

PDCAサイクルによるKPI運用と継続改善

健康経営KPIの真の価値は、単なる数値の測定ではなく、PDCAサイクルを通じた継続的改善プロセスの中で発揮されます。SMART原則(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性、Time-bound:期限付き)に基づいたKPI設定により、明確な成果指標を確立できます。効果的なKPI設定により、健康経営への投資が確実に成果につながる施策の優先順位付けと資源配分を実現できます。

データ収集・分析体制の構築

KPIの効果的な運用には、正確で継続的なデータ収集体制の構築が不可欠です。健診データ、人事データ、勤怠データ、福利厚生利用データなど、多様な情報源からのデータを統合的に管理・分析する仕組みが必要になります。また、個人情報保護に配慮したデータ取り扱いルールの整備も重要な要素です。

ステークホルダー報告とコミュニケーション

各ステークホルダーにとって、適切な報告とコミュニケーションを行う際のポイントは異なります。それぞれの関心事項に合わせた情報提供を行うことで、施策の理解促進と信頼構築を図りましょう。

とりわけ、健康経営に関するデータや成果は、対象ごとに内容や伝え方を最適化することが重要です。以下に、主なステークホルダー別の報告観点と重点ポイントを示します。

  • 経営層向け:投資収益率と戦略的成果の報告
  • 人事部門:採用・定着率への効果測定結果
  • 現場管理職:部門別健康状況と生産性指標
  • 従業員:個人の健康改善状況と職場環境改善効果
  • 株主・投資家:ESG評価向上と企業価値への貢献
  • 健康保険組合:医療費削減効果と予防投資の成果

継続改善のための仕組みづくり

PDCAサイクルの継続的な運用には、定期的な振り返りと改善提案の仕組みが必要です。月次・四半期・年次での段階的な評価サイクルを設定し、短期的な課題への迅速な対応と中長期的な戦略調整を両立させることが大切です。

また、従業員からのフィードバック収集や外部専門家による客観的評価も活用して、多角的な視点から改善点を特定しましょう。継続的改善の仕組みにより、健康経営が一過性の取り組みではなく、企業文化として定着し、持続的な価値創造につながります。

まとめ

「2025年版健康経営ガイドブック」から読み取れるKPIは、企業が健康経営の成果を客観的に測定し、継続的に改善していくための重要な指針となります。健康状態・リスク評価から生産性・パフォーマンス、施策実行状況、組織体制まで、多角的な視点からのKPI設定により、健康投資の効果を経営層や関係者に対して明確に示すことが可能になります。

適切なKPI設定と運用により、従業員の健康状態改善が企業の生産性向上、業績向上、そして企業価値向上につながる好循環を実現できます。健康経営は、従業員の福利厚生という側面だけでなく、経営戦略の重要な一環として位置づけ、戦略的に取り組むべき投資領域なのです。

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