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剛性とは?強度との違いから設計での重要性までわかりやすく解説

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剛性とは?強度との違いから設計での重要性までわかりやすく解説

製品設計や材料選定において、「剛性」と「強度」は頻繁に用いられる重要な指標ですが、両者の違いを正確に理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。これらを混同すると、設計時に誤った材料選定や構造設計を行ってしまい、製品の性能不足やトラブルにつながる可能性があります。本記事では、剛性の定義から強度との違い、設計における重要性、そして剛性を高めるための実践的な手法まで、技術者の皆様に向けて解説します。

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剛性の基本的な定義と意味

剛性とは、物体に外力を加えたときに「どれだけ変形しにくいか」を示す物性値です。具体的には、力を加えた際の変形量の少なさを表す指標であり、剛性が高いほど同じ力を受けても変形量が小さくなります。この剛性を定量的に評価する際に用いられるのが、材料固有の物性である「ヤング率(縦弾性係数)」です。

弾性変形と剛性の関係

剛性を理解する上で重要なのが「弾性変形」の概念です。弾性変形とは、外力を取り除くと元の形状に戻る可逆的な変形を指します。剛性は主にこの弾性変形領域内での変形しにくさを表す指標であり、材料が弾性限度を超えて塑性変形する前の挙動を評価します。

フックの法則に従えば、応力σとひずみεの関係は「σ = E × ε」で表され、ここでのEがヤング率です。この関係式から、ヤング率が高い材料ほど同じひずみ量を生じさせるために大きな応力が必要となることがわかります。設計現場では、この特性を活用して部品の変形量を予測し、許容範囲内に収めるための材料選定や寸法設定を行います。

剛性を決定する要因

剛性は材料そのものの物性だけでなく、構造体の形状や寸法によっても大きく変化します。代表的な要因として、断面二次モーメント、部材の長さ、支持条件などが挙げられます。

例えば梁の曲げ剛性は「EI」で表され、Eはヤング率、Iは断面二次モーメントです。断面二次モーメントは断面形状によって決まる値であり、同じ断面積でも形状によって大きく異なります。H形鋼やI形鋼が高い曲げ剛性を持つのは、材料を外側に配置することで断面二次モーメントを大きくしているためです。このように、剛性は材料選定だけでなく構造設計によっても最適化可能な特性といえます。剛性と強度・硬さ・靭性との違い

設計や材料選定において混同されやすい物性として、剛性、強度、硬さ、靭性があります。これらは互いに関連しながらも、それぞれ異なる物理的特性を表しており、用途や目的に応じて適切に評価する必要があります。ここでは各物性の定義と違いを明確にし、設計判断における使い分けについて解説します。

剛性と強度の違い

剛性と強度は最も混同されやすい概念ですが、両者は全く異なる物性です。剛性は「変形のしにくさ」を示すのに対し、強度は「破壊や永久変形に耐えられる力の大きさ」を示します。剛性が高くても強度が低い材料は存在し、逆もまた然りです。

例えば、ガラスは高いヤング率を持ち剛性が高い材料ですが、引張強度は比較的低く、脆性破壊しやすい特性があります。一方、ゴムは剛性が非常に低く大きく変形しますが、破断するまでには相当な変形量に耐えられます。設計においては、部品が受ける荷重条件や使用環境に応じて、剛性と強度のどちらを優先すべきか判断する必要があります。

硬さと靭性の位置づけ

硬さは「表面の傷つきにくさや圧痕に対する抵抗」を示す物性であり、ビッカース硬さやロックウェル硬さなどの試験方法で評価されます。硬さが高い材料は摩耗に強く、工具や軸受などに適していますが、硬さと剛性は必ずしも相関しません。

靭性は「破壊に至るまでに吸収できるエネルギー量」を示し、材料の粘り強さを表します。高靭性の材料は衝撃荷重や繰り返し荷重に対して優れた耐性を持ち、亀裂が進展しにくい特性があります。強度が高くても靭性が低い材料は脆性破壊を起こしやすく、安全性の面で課題となる場合があります。

材料機械特性の定義・評価指標・設計上の意味に関する比較表になります。

物性定義評価指標設計上の意味
剛性変形しにくさヤング率、せん断弾性係数使用時の変形量制御
強度破壊に耐える力引張強度、降伏強度破損防止、安全率確保
硬さ表面の傷つきにくさビッカース硬さ、ロックウェル硬さ摩耗抵抗、表面保護
靭性破壊までのエネルギー吸収シャルピー衝撃値、破壊靭性衝撃吸収、亀裂進展防止

設計における使い分けの実際

実際の設計では、これらの物性を総合的に評価し、使用条件に最適な材料と構造を選定します。精密機械の基台やフレームでは、加工精度や位置決め精度を維持するために高剛性が求められます。一方、衝撃荷重を受ける部品では強度と靭性の両立が重要です。

自動車のボディ設計を例にとると、衝突安全性のためには適度な変形による衝撃吸収と、乗員空間を守るための強度が必要です。同時に、走行時の振動を抑えるためには車体剛性も重要となります。このように、実際の製品では複数の物性を総合的に考慮したバランスの取れた設計が求められます。

設計・製造現場における剛性の重要性

製造現場や製品設計において、剛性は製品性能や生産性、品質に直結する極めて重要な要素です。ここでは、実際の設計・製造現場で剛性がどのように重視されているか、具体的な事例とともに解説します。

精密加工における剛性の役割

工作機械や測定器など、高精度が求められる製品では、剛性が性能を決定づける最重要因子となります。加工機の剛性が不足すると、切削力によって工具や被削材が変位し、寸法精度や表面粗さが悪化します。特に高速加工や重切削では、剛性不足がびびり振動を引き起こし、工具寿命の短縮や加工面品質の低下につながります。

マシニングセンタや旋盤のベッド部分に鋳鉄が多用されるのは、高いヤング率と優れた振動減衰特性を持っているためです。また、精密測定機器では温度変化による変形を最小限にするため、低熱膨張係数と高剛性を両立した材料が選定されます。これらの機器では、構造剛性の確保が測定精度や加工精度の前提条件となっています。

構造物の座屈と剛性の関係

圧縮荷重を受ける細長い部材では、座屈と呼ばれる現象が発生します。座屈は材料の強度に達する前に、部材が横方向に急激に変形する現象であり、構造物の破壊につながります。座屈荷重はヤング率と断面二次モーメントに比例し、部材長さの2乗に反比例します。

このため、柱や支柱などの圧縮部材では、強度よりも剛性が設計上の支配的因子となる場合が多く見られます。同じ材料を用いる場合、断面形状を工夫して断面二次モーメントを大きくすることで、座屈に対する抵抗力を効果的に高められます。パイプ構造やH形断面が圧縮部材に多用される理由はここにあります。

ねじり剛性の重要性

回転する軸や伝動装置では、ねじり剛性が性能と信頼性を左右します。ねじり剛性は「ねじりモーメントに対する回転角の変化しにくさ」を示し、せん断弾性係数と断面の極断面二次モーメントによって決まります。

自動車のドライブシャフトや工作機械の主軸では、ねじり剛性が不足すると動力伝達効率の低下、応答性の悪化、振動の発生などの問題が生じます。高速回転する部品では、ねじり剛性と固有振動数の関係も重要であり、共振を避けるための剛性設計が必須となります。産業用ロボットのアームでも、ねじり剛性が位置決め精度や動作速度に直接影響するため、軽量化と剛性確保の両立が設計上の重要課題です。

ねじり剛性の設計重要点と影響領域の要点リストは下記のとおりです。

  • 精密加工機械では剛性不足がびびり振動や精度低下を引き起こす
  • 座屈現象では強度よりも剛性が支配的因子となる
  • 回転軸や伝動装置ではねじり剛性が性能を決定する
  • 構造物の固有振動数は剛性と質量のバランスで決まる
  • 熱変形を抑制するには剛性と熱膨張係数の両面からの検討が必要

剛性を高めるための設計手法と材料選定

製品の剛性を向上させるためには、材料選定と構造設計の両面からアプローチする必要があります。単に高ヤング率の材料を選定するだけでなく、断面形状の最適化、リブやガセットの追加、接合部の剛性確保など、設計上の工夫によって効果的に剛性を高めることができます。ここでは、実践的な剛性向上策を解説します。

材料選定による剛性向上

材料のヤング率は剛性に直接影響するため、高剛性が求められる用途では高ヤング率材料の選定が基本となります。鋼材は汎用性と高剛性を兼ね備えた代表的な材料ですが、軽量化が求められる場合はアルミニウム合金やマグネシウム合金が選択されます。

航空宇宙分野では、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のように、高ヤング率と低密度を両立した先進材料が積極的に採用されています。CFRPは繊維方向で鋼を上回るヤング率を実現しながら、密度は鋼の約4分の1と軽量です。

断面形状の最適化

曲げ剛性やねじり剛性は、材料のヤング率だけでなく断面形状によって大きく変化します。同じ材料体積でも、断面形状を工夫することで剛性を飛躍的に向上させることが可能です。曲げ剛性を高めるには、材料を中立軸から遠い位置に配置して断面二次モーメントを増大させます。

I形断面、H形断面、箱型断面などは、この原理を応用した効率的な断面形状です。例えば、矩形断面の梁を同じ断面積のI形断面に変更すると、曲げ剛性を数倍に向上させることができます。パイプ構造も中空部分を持つことで、軽量かつ高剛性を実現する代表例です。板金部品では、曲げ加工やプレス加工で断面に凹凸をつけることで、平板よりも大幅に剛性を高められます。

リブ・ガセット・補強材の活用

薄肉構造や大型部品では、リブやガセットを追加することで効果的に剛性を向上できます。リブは板状部品の裏面に設けられる補強板であり、少ない材料追加で曲げ剛性を大幅に高めることができます。ガセットは接合部や応力集中部に設けられる補強材で、局部的な剛性不足を解消します。

樹脂成形品では、リブの配置が剛性と成形性のバランスを決定する重要な設計要素です。リブの高さ、厚さ、配置間隔を最適化することで、材料使用量を最小限に抑えながら必要な剛性を確保できます。金属フレーム構造でも、要所に補強材を配置することで、全体の重量増加を抑えながら剛性を高めることが可能です。

剛性向上手法による効果・適用例・留意点の比較表になります。

剛性向上手法効果適用例留意点
高ヤング率材料の採用材料特性による直接的向上鋼からチタン、
CFRPへの変更
コスト、
加工性、
接合性
断面形状の最適化断面二次モーメント増大中実からパイプ、
I形への変更
製造性、
局部座屈
リブ・ガセット追加局部的な剛性向上板金部品、
樹脂成形品の補強
応力集中、
成形性
接合部の剛性向上構造全体の一体性向上溶接、
ボルト締結部の補強
製造工数、
疲労強度

接合部と支持条件の考慮

構造物の実効剛性は、部材単体の剛性だけでなく接合部の剛性にも大きく依存します。ボルト締結や溶接接合部で剛性が不足すると、部材間に相対変位が生じ、構造全体の剛性低下につながります。特に大型構造物では、接合部の数が多くなるため、各接合部の剛性確保が重要です。

溶接構造では、連続溶接よりも断続溶接の方が剛性が低下します。ボルト締結では、締付力の管理、ボルトの配置、接合面の平面度などが剛性に影響します。また、支持条件も実効剛性を左右する重要因子であり、固定端と単純支持では同じ部材でも剛性が大きく異なります。設計時には、部材剛性だけでなく接合部や境界条件を含めた系全体としての剛性評価が不可欠です。

まとめ

剛性は材料や構造物の「変形しにくさ」を示す物性であり、ヤング率によって定量的に評価されます。強度が「破壊に耐える力」を示すのに対し、剛性は弾性変形領域での変形抵抗を表し、設計用途によって重視すべき物性が異なります。

設計現場では、精密加工機械の加工精度、構造物の座屈防止、回転軸のねじり剛性など、剛性が製品性能を直接左右する場面が多数存在します。剛性を向上させるには、高ヤング率材料の選定だけでなく、断面形状の最適化、リブやガセットの追加、接合部の剛性確保といった構造設計上の工夫が効果的です。

製品の要求性能と使用条件を的確に把握し、剛性と強度のバランスを考慮した最適な材料選定と構造設計を行うことが、高品質な製品開発の基盤となります。

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