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せん断力とは?意味や計算方法を分かりやすく解説

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せん断力とは?意味や計算方法を分かりやすく解説

製造業や建設現場において、構造物や部品の強度設計を行う際に欠かせないのが「せん断力」の理解です。梁や柱などの構造部材、ボルトやリベットなどの締結部品、さらには金属加工における切断工程まで、せん断力はあらゆる場面で発生し、製品の安全性や品質を左右する重要な要素となります。しかし、「せん断力とは何か」「どのように計算すればよいのか」といった基本的な疑問を持つ技術者や設計者は少なくありません。本記事では、せん断力の定義から計算方法、実務での活用例まで、体系的かつ具体的に解説していきます。

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せん断力とは何か

せん断力とは、物体の断面を境界として、その面に沿って滑らせるように作用する力のことを指します。物体を引っ張る「引張力」や押しつぶす「圧縮力」とは異なり、せん断力は物体内部で「ずれ」や「すべり」を生じさせる力です。

身近な例として、ハサミで紙を切る動作を考えてみましょう。ハサミの上刃と下刃が紙を挟み込み、互いに反対方向に力を加えることで、紙の繊維が断面に沿って切断されます。この時、紙の断面には互いに逆向きの力が作用しており、これがせん断力の典型的な例です。

せん断力が発生する代表的な場面

せん断力は、構造物や機械部品において、接合部や支点付近で特に大きく発生します。製造現場や設計業務では、以下のような場面でせん断力の検討が必要となります。

  • ボルトやリベットなどの締結部品における破断リスク
  • 梁や柱などの構造部材の支点付近での応力集中
  • 溶接接合部や接着接合部でのせん断破壊
  • 金属のせん断加工(パンチング、せん断切断)における材料分離
  • 歯車やキーなどの動力伝達部品での荷重伝達

これらの場面では、せん断力が設計上の許容値を超えると、部品の破断や構造物の崩壊につながるため、正確な計算と評価が不可欠です。

せん断力と他の力との違い

せん断力を正しく理解するには、引張力や圧縮力との違いを明確にしておく必要があります。引張力は物体を引き伸ばす方向に働き、圧縮力は物体を縮める方向に働きますが、せん断力は物体の断面に平行に作用し、断面をずらすように働きます。

例えば、鋼材を引っ張る試験では引張応力が支配的ですが、ボルト接合部では軸に垂直な方向にせん断力が作用します。このように、荷重の作用方向と断面の関係によって、発生する力の種類が変わるのです。

せん断力の計算方法

せん断力の計算は、設計や強度評価において基本となる重要なスキルです。ここでは、せん断力の基本的な計算式から、実際の計算例まで段階的に解説していきます。

せん断力の基本計算式

せん断力の大きさは、作用する荷重Fを断面積Aで割ることで求められ、これをせん断応力τ(タウ)と呼びます。計算式は以下の通りです。

τ = F / A

ここで、τはせん断応力(N/mm²またはMPa)、Fはせん断力(N)、Aはせん断が発生する断面積(mm²)を表します。この式は、せん断力が断面に均一に分布していると仮定した場合の平均せん断応力を示しています。

単位と記号の整理

せん断力の計算では、単位の統一が非常に重要です。以下の表に、主要な記号と単位をまとめました。

記号名称単位(SI単位系)単位(工学単位系)
Fせん断力N(ニュートン)kgf(キログラム重)
τせん断応力Pa、MPa、N/mm²kgf/mm²
Aせん断断面積mm²、m²mm²、cm²
τa許容せん断応力MPa、N/mm²kgf/mm²

実務では、1 MPa = 1 N/mm²という関係がよく使われます。また、工学単位系から SI 単位系への換算では、1 kgf ≒ 9.8 N という関係を用います。

リベット接合部のせん断力計算例

実際の計算例として、リベット接合部のせん断力を求めてみましょう。直径10mmのリベットに50kNの荷重が作用する場合、リベットに発生するせん断応力を計算します。

まず、リベットの断面積Aを求めます。A = π × (d/2)² = 3.14 × (10/2)² = 78.5 mm²となります。次に、荷重50kN = 50,000 Nをこの断面積で割ります。τ = 50,000 / 78.5 ≒ 637 N/mm² = 637 MPaとなります。

この値を材料の許容せん断応力と比較することで、リベットが安全かどうかを判定できます。一般的な構造用鋼材の許容せん断応力は200~250 MPa程度であるため、この例では明らかに過大な応力が発生しており、設計の見直しが必要です。

梁におけるせん断力の理解

建築や土木分野では、梁や柱などの構造部材のせん断力を正確に把握することが設計の基本となります。梁には曲げモーメントとともにせん断力が作用し、これらを適切に評価しなければ構造物の安全性は確保できません。

梁のせん断力図(S.F.D図)の意味

せん断力図(Shear Force Diagram, S.F.D図)は、梁の各位置におけるせん断力の大きさを視覚的に表現したもので、設計や解析において不可欠なツールです。横軸に梁の位置、縦軸にせん断力の大きさをとり、梁全体のせん断力分布を一目で把握できます。

せん断力図を描く際の基本ルールとして、支点や荷重点で急激に変化し、分布荷重がある区間では直線的に変化します。また、せん断力がゼロとなる位置は、曲げモーメントが最大となる位置と対応しています。

単純梁のせん断力計算

最も基本的な例として、スパン4mの単純梁の中央に集中荷重20kNが作用する場合を考えます。支点反力は対称性から各10kNとなります。

左端から中央までのせん断力は、支点反力10kNがそのまま作用するため+10kNです。中央の荷重点を通過すると、20kNの荷重が下向きに作用するため、せん断力は-10kNに変化します。この値が右端まで続きます。

梁の位置せん断力(kN)状態
左端(支点A)+10支点反力による上向き
中央直前+10一定値を保持
中央直後-10集中荷重通過で変化
右端(支点B)-10支点到達でゼロに

この計算結果から、せん断力の最大値は10kNであり、この値を用いて梁の断面設計や補強の必要性を判断します。

分布荷重を受ける梁のせん断力

等分布荷重を受ける梁では、せん断力が直線的に変化します。例えば、スパン6mの単純梁に10kN/mの等分布荷重が作用する場合、支点反力は30kNずつとなります。

左端のせん断力は+30kNですが、分布荷重により1m進むごとに10kNずつ減少し、中央(3m地点)でゼロとなります。さらに進むと負の値となり、右端で-30kNに達します。このように、分布荷重下では直線的にせん断力が変化する特徴があります。

せん断力と関連する重要概念

せん断力を正しく扱うには、関連する専門用語や概念を正確に理解しておく必要があります。ここでは、実務で頻繁に使われる重要な関連概念について解説します。

せん断応力とせん断強度の違い

せん断応力は実際に材料に作用している応力の大きさであり、せん断強度は材料が破壊される限界の応力値です。設計では、せん断応力がせん断強度を超えないように安全率を考慮して部材を設計します。

せん断応力は前述の τ = F / A で計算される実際の応力値です。一方、せん断強度は材料固有の特性値であり、材料試験によって測定されます。一般的な構造用鋼材(SS400)のせん断強度は約400MPa程度です。

許容せん断応力の考え方

実際の設計では、材料のせん断強度をそのまま使うのではなく、安全率を考慮した「許容せん断応力」を用います。許容せん断応力は、せん断強度を安全率で割った値として定義されます。

建築基準法や各種設計基準では、材料や用途に応じた許容せん断応力が規定されています。例えば、一般構造用鋼材では許容せん断応力を降伏点の約60%程度に設定することが多く、SS400材では約140~160MPa程度が標準的な値となります。

共役せん断応力の原理

せん断応力には重要な特性として「共役性」があります。ある面にせん断応力が作用すると、それに直交する面にも同じ大きさのせん断応力が必ず発生します。これを共役せん断応力の原理と呼びます。

  • 物体の平衡条件から導かれる力学的必然性
  • 垂直面と水平面のせん断応力が等しくなる
  • 応力解析や強度計算の基礎となる重要原理
  • 複雑な応力状態の理解に不可欠な概念

この原理により、一つの面のせん断応力を計算すれば、直交する面の応力も自動的に決まります。FEM解析などでも、この原理に基づいて応力が計算されています。

実務におけるせん断力の活用

せん断力の知識は、実際の製造現場や設計業務において具体的にどのように活用されるのでしょうか。ここでは、代表的な応用例と注意点を紹介します。

ボルト・リベット接合の設計

ボルトやリベットによる接合部の設計では、せん断力による破壊が最も重要な検討項目となります。特に、引張荷重を受ける継手では、ボルトに大きなせん断力が作用するため、適切な本数と配置の設計が必要です。

設計手順としては、まず接合部に作用する荷重を求め、次にボルト1本あたりのせん断力を計算します。この値を材料の許容せん断応力と比較し、安全率を満たす本数を決定します。実際には、ボルト孔による断面欠損や応力集中も考慮する必要があります。

溶接継手のせん断強度評価

溶接継手においても、せん断力の評価は重要です。特に、隅肉溶接や突合せ溶接では、溶接部にせん断応力が集中しやすく、適切な溶接サイズの決定が必要となります。

溶接種類せん断力の作用設計上の注意点
隅肉溶接のど厚断面に作用のど厚を有効断面として計算
突合せ溶接溶接線に沿って作用完全溶込みの品質確保が重要
プラグ溶接円形断面に均一分布孔径と配置の最適化が必要
スロット溶接長円断面に分布端部の応力集中に注意

溶接部の許容せん断応力は、母材よりも若干低く設定されることが一般的であり、溶接品質の確保が前提となります。非破壊検査によって溶接欠陥がないことを確認することも重要です。

金属加工におけるせん断力

プレス加工やせん断加工では、材料を切断するために必要なせん断力を事前に計算し、適切な設備を選定します。せん断力は、材料の厚さ、せん断強度、切断長さの積として求められます。

例えば、板厚3mm、せん断強度400MPa、切断長さ500mmの鋼板をせん断する場合、必要なせん断力は F = 3 × 400 × 500 = 600,000 N = 600 kN となります。実際にはクリアランスやせん断角度の影響も考慮し、1.2~1.5倍程度の余裕を持った設備を選定します。

品質管理での活用

製造現場では、製品の品質保証のためにせん断試験が実施されます。ボルトやリベットのせん断試験、溶接部のせん断強度試験などを通じて、製品が設計基準を満たしているかを確認します。

  • 試験片を用いたせん断強度の測定と規格値との比較
  • ロット管理による品質のばらつき把握
  • 不適合品の原因分析とプロセス改善
  • トレーサビリティ確保のためのデータ管理

これらの試験データは、製品の信頼性を証明する重要なエビデンスとなり、顧客への品質保証資料としても活用されます。大企業では、こうした品質データを統計的に分析し、継続的な工程改善に結びつけています。

まとめ

せん断力は、物体の断面に沿って滑らせるように作用する力であり、構造物や機械部品の設計において極めて重要な要素です。基本的な計算式 τ = F / A を理解し、実際の設計や品質管理に応用することで、安全で信頼性の高い製品を実現できます。

梁や接合部におけるせん断力の評価、せん断応力と許容値の比較、さらには製造現場での品質試験まで、せん断力の知識は幅広い場面で活用されています。本記事で解説した基礎理論と計算方法を習得することで、実務における設計判断や強度評価の精度を高めることができるでしょう。

製造業や建設業界において、安全性と品質の確保は最優先事項です。せん断力の正しい理解と適切な計算手法の実践により、高品質な製品開発と信頼性の高いものづくりを実現していきましょう。

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