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外観検査におけるキズの基準とは?JISと実務での判断ポイントを解説

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外観検査におけるキズの基準とは?JISと実務での判断ポイントを解説

製造現場では日々、製品の外観検査が行われていますが、「このキズは合格なのか不合格なのか」という判定に悩むケースは少なくありません。検査員によって判定がばらつき、取引先とのクレームに発展することもあるでしょう。外観検査におけるキズの基準を明確化し、再現性のある検査体制を構築するには、JIS規格の理解と実務への適用が不可欠です。本記事では、JISにもとづく観察条件から具体的な基準設定方法まで、現場で活用できる知識を体系的に解説します。

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外観検査とは?基本概念とJIS規格における位置づけ

外観検査は製品品質を確保するための重要な工程であり、目視によってキズ、汚れ、色ムラ、形状不良などの外観不良を検出・判定する作業です。この検査の信頼性を担保するためには、統一された基準と再現可能な検査条件の設定が必要となります。

JIS規格では、外観検査に関する基本的な考え方と観察条件が定められています。特にJISZ9110(照度基準)は、検査環境における照明条件の根拠となる重要な規格です。また、製品分野ごとに具体的な外観基準を定めたJIS規格も存在し、これらを参考にすることで科学的根拠のある基準設定が可能になります。

外観検査の目的と重要性

外観検査の主な目的は、顧客満足度の維持と製品価値の保護であり、機能面への影響がない外観不良であっても、商品性や信頼性に大きく影響する可能性があります。

製造業では、外観品質が企業ブランドイメージに直結するため、一貫性のある検査基準の確立が競争力維持の重要な要素となります。特に大企業では、グローバルな品質基準への対応も求められるため、国際的に通用する基準設定が不可欠です。

JIS規格と外観検査の関係

JIS規格における外観検査は、観察条件の標準化と視認性を基軸とした判定基準の設定を重視しています。例えば、JISK6903(高圧化粧板)では、照度800〜1,100lx、観察距離1.5〜2mという具体的な数値基準が示されており、これらの条件下で視認できる欠陥の有無により合否を判定します。

このようなJIS規格の考え方は、主観的になりがちな外観判定を客観的な基準にもとづいて実施するための指針として機能します。自社基準を策定する際も、これらの規格を参考とすることで、社内外での説明責任を果たせる根拠を確保できます。

JISにもとづく検査環境と観察条件の設定

外観検査の再現性を確保するためには、検査環境の標準化が最も重要な要素です。JIS規格にもとづいた観察条件を設定することで、誰が検査を実施しても同等の結果が得られる検査体制を構築できます。

検査環境の設定では、照度、観察距離、観察角度、背景色、観察時間などの要素を総合的に管理する必要があります。これらの条件が一つでも変動すると、検査結果に大きな影響を与える可能性があるため、定期的な測定と管理が欠かせません。

照度と照明の管理基準

JIS Z 9110にもとづく検査照明は、一般的に800〜1,100lxの範囲で設定され、この照度レベルでの視認性が外観合否判定の基準となります。

照度管理では、検査エリア全体での照度均一性も重要な要素です。照度計を使用した定期測定により、照度ドリフトや局所的な照度不足を検出し、適切な補正を行う仕組みを構築する必要があります。また、照明機器の劣化や汚れによる照度低下も考慮し、清掃・交換のスケジュールを設定することが重要です。以下は、検査項目別の推奨照度と測定頻度を示したものです。

検査項目推奨照度(lx)測定頻度
一般外観検査800〜1100週1回
精密外観検査1000〜1500週2回
色調判定750〜1000週1回

観察距離と角度の標準化

観察距離は視認性に直接影響する重要な要素で、一般的には1.5〜2mの範囲で設定されます。この距離は、実際の使用距離や製品の大きさを考慮して決定する必要があります。自動車外装部品は実際の視認距離を、電子機器は使用時の観察距離を基準とするのが適切です。

観察角度については、正反射光と拡散反射光の両方を考慮し、複数の角度から検査することが推奨されます。特に光沢のある表面では、角度により欠陥の視認性が大きく変化するため、標準的な観察角度を設定し、必要に応じて追加角度での確認を行う手順を確立することが重要です。

キズの分類と評価基準の体系化

外観検査におけるキズの適切な評価のためには、まずキズを体系的に分類し、それぞれの特性に応じた評価基準を設定する必要があります。キズの種類により、測定方法や許容基準が大きく異なるため、明確な定義と分類基準の確立が欠かせません。

キズの評価では、大きさ、深さ、位置、本数、群発状態などの複数要素を総合的に判断する必要があります。これらの要素を定量化し、合否判定ルールとして明文化することで、検査員による判定のばらつきを最小限に抑えることができます。

キズの種類と特性

外観不良判定基準では、線状キズ、点状キズ、面状キズ、打痕、クラック、欠けなど、形状特性にもとづいたキズの分類が基本となります。

線状キズは長さと幅で評価し、点状キズは直径や面積で評価します。面状キズは面積と深さ、打痕は直径と深さ、クラックは長さと深さ、欠けは面積と深さがそれぞれ主要な評価項目となります。これらの測定には、適切な測定器具の選定と標準的な測定手順の確立が必要です。

評価領域と重要度の設定

製品の使用条件や意匠上の重要度により、検査対象領域を分類し、それぞれに適した許容基準を設定することが重要です。例えば、自動車外装部品では、正面から見える主要面と側面や裏面では許容基準を変更し、電子機器では操作面とそれ以外で基準を区分します。

評価領域の設定では、視認距離での実際の見え方を考慮し、直径300mm円内、500mm×500mm範囲内など、具体的な評価範囲を明示することが必要です。また、エッジ部や角部など、構造的にキズが生じやすい部位については、別途基準を設定することも検討すべきです。各領域に適用する評価基準とその重要度の例は、以下のとおりです。

  • 主要面:最も厳しい基準を適用
  • 副次面:主要面より緩和した基準
  • 非重要面:機能に影響しない範囲で許容
  • エッジ部:構造上の制約を考慮した基準

実務における合否判定基準の設定方法

JIS規格の考え方を実際の製品に適用するには、顧客要求、使用条件、意匠価値、製造プロセスの特性を総合的に考慮した実務的な基準設定が必要です。この基準設定では、定量的な数値基準と視認性基準を組み合わせ、現場で判断しやすい形式に整理することが重要です。

合否判定基準の設定では、許容レベルだけでなく、境界サンプルの作成と管理も重要な要素となります。数値だけでは表現が困難な微細な差異について、実物サンプルによる判定基準を併用することで、検査精度の向上と判定ばらつきの抑制を実現できます。

定量的基準の数式化

キズ許容範囲の設定では、「個数×サイズ×密度×位置×視認性」の組み合わせにより、合否判定ルールを数式化し、客観的な判定基準を確立します。

例えば、線状キズの場合は「長さ2mm以下かつ幅0.1mm以下のキズは、評価範囲内で3本まで許容、ただし隣接するキズ間の距離は10mm以上とする」といった具体的な基準を設定します。面状キズでは「面積0.6mm²以下のキズは5個まで許容、0.6mm²を超える場合は1個まで許容」のような段階的基準を適用します。以下の表は、各キズ種類に対応する測定項目と許容基準例を示したものです。

キズ種類測定項目許容基準例
線状キズ長さ×幅2mm以下×0.1mm以下、3本まで
点状キズ直径0.5mm以下、10個まで
面状キズ面積0.6mm²以下、5個まで
打痕直径×深さ1mm以下×0.05mm以下、2個まで

サンプル基準板と限度見本の活用

数値基準だけでは判定が困難な微細な差異について、サンプル基準板や限度見本を作成し、視覚的な判定基準を補完することが重要です。これらの見本は、合格品の上限、不合格品の下限を示すボーダーラインのサンプルとして機能し、検査員の判定精度向上に大きく寄与します。

限度見本の管理では、経年変化による劣化や汚損を防ぐため、適切な保管環境の整備と定期的な更新スケジュールの設定が必要です。また、見本の撮影による画像データ化により、デジタル基準としての活用も検討しましょう。

業界・検査手法別の適用ポイント

外観検査の基準設定は、業界特性や製品特性により大きく異なります。樹脂製品、金属製品、塗装製品、鋳造品、電子機器など、それぞれの材料特性や製造プロセスに応じた適切な基準設定が必要です。また、目視検査、拡大観察、浸透探傷検査、AI外観検査など、検査手法により検出可能な欠陥レベルも異なるため、手法に応じた基準調整も重要です。

各業界で重視される品質特性や顧客要求レベルを理解し、それに適した検査基準を設定することで、過剰品質による コスト増加を避けながら、必要十分な品質レベルを確保できます。

材料特性を踏まえた基準の調整

樹脂製品では成形時の流動マークやウェルドライン、金属製品では加工痕や酸化膜、塗装製品では塗膜厚ムラやオレンジピールなど、材料固有の特性を考慮した基準設定が必要です。

鋳造品では、鋳肌荒れや湯境など鋳造特有の外観特性があり、これらについては機能への影響度と意匠価値のバランスを考慮した許容基準の設定が重要です。電子機器では、実装部品の隙間や配線パターンの視認性など、機能との関連性を重視した基準設定が求められます。

検査手法ごとの検出精度の違い

目視検査では0.1mm程度以上のキズが検出対象となり、拡大観察では0.01mm程度まで検出可能です。浸透探傷検査(PT)では表面開口欠陥の検出に特化し、目視では確認困難な微細クラックも検出できます。AI外観検査では、学習データの質により検出精度が決まるため、人間の視認性基準との整合性確保が重要です。

これらの検査手法を組み合わせる際は、それぞれの検出限界と特性を理解し、重複する領域での基準統一と、手法固有の基準設定を適切に使い分ける必要があります。特に自動検査導入時は、人間の判定基準をデジタル化し、AI学習用の教師データとして活用することが重要です。以下は、主要な検査手法とその検出精度に関する詳細を示したものです。

  • 目視検査:0.1mm以上のキズ、視認性重視
  • 拡大観察:0.01mm程度、詳細形状確認
  • 浸透探傷:表面開口欠陥、高感度検出
  • AI検査:学習データ依存、高速大量処理

AIによる外観検査の基準設計と運用方法

AI外観検査システムの導入では、従来の人間による判定基準をデジタル化し、機械学習アルゴリズムが理解できる形式に変換することが最大の課題となります。このプロセスでは、視認性条件や観察条件を含めた総合的な判定ロジックの数値化と、高品質な教師データの準備が重要です。AI外観検査の精度向上には、人間の判定との一致率向上が不可欠であり、そのためには基準の明確化と境界条件での判定ロジックの最適化が重要です。

教師データの品質管理

AI外観検査導入における教師データ作成では、JISにもとづく観察条件下で撮影した画像に対し、人間の判定基準と完全に一致するラベリングを実施することが重要です。

教師データの品質向上には、複数の検査員による判定結果の一致度確認と、境界条件サンプルの充実が効果的です。特にOK/NG/ボーダーの3段階でのラベリングにより、AI学習時の判定境界の最適化が可能になります。また、照度条件や撮影角度の変動を考慮した多様なデータセットの構築により、実運用での安定性向上を図れます。

運用時のKPI設計と改善サイクル

AI外観検査の運用では、合否一致率、再現性、検査速度、流出不良率などの定量的なKPIを設定し、継続的な改善を実施することが重要です。人間とAIの判定一致率は95%以上を目標とし、不一致ケースについては原因分析と学習データの追加により精度向上を図ります。

また、検査環境の変動(照度変化、製品のばらつき等)に対するロバスト性も重要な評価項目です。定期的な照度管理と併せて、AI判定精度のモニタリングシステムを構築し、精度低下の早期発見と対策実施の仕組みを確立することが運用の成功において重要になります。以下は、AI外観検査運用時のKPI項目、目標値、測定頻度の例を表でまとめたものです。

KPI項目目標値測定頻度
人間-AI一致率95%以上週1回
日間再現性κ係数0.8以上日次
流出不良率10ppm以下月1回

まとめ

外観検査におけるキズの基準設定は、JIS規格にもとづく科学的根拠と実務要求のバランスを取ることが重要です。照度800〜1,100lx、観察距離1.5〜2mなどのJIS基準を基礎とし、自社製品の特性に応じた定量的基準の設定により、再現性の高い検査体制を構築できます。

キズの種類別評価項目の体系化と数値化により、検査員による判定ばらつきを最小化し、顧客クレーム時の説明根拠も確保できます。AI外観検査導入時も、これらの基準をデジタル化することで、人間の判定との整合性を保ちながら自動化の効果を最大化できるでしょう。

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参考文献
https://www.brains-tech.co.jp/impulse/blog/visual-inspection-introduction/

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