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品質保証体系図とは?品質活動の全体像を整理する“見える化”ツール

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品質保証体系図とは?品質活動の全体像を整理する“見える化”ツール

製造業の現場では、品質トラブルが発生した際に「どの部署が何をすべきか」が曖昧で、対応が後手に回るケースが少なくありません。また、品質マネジメントシステムの全体像を経営層や監査員に説明する場面でも、組織の品質保証活動がどのように機能しているのかを明確に示すことが求められます。品質保証体系図は、こうした課題を解決するための「組織全体の設計図」です。本記事では、品質保証体系図の定義から構成要素、作成手順、他の品質管理ツールとの違い、そして現場改善やトラブル対応への活用方法まで、実務に直結する情報を体系的に解説します。

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品質保証体系図とは何か

品質保証体系図とは、組織全体の品質保証活動に関わる部署・役割・業務プロセス・連携ルートを体系的に可視化した図です。製品やサービスの企画・設計から製造・検査・出荷・アフターサービスに至るまでの一連の流れにおいて、各部門がどのような責任を持ち、どのように連携し、どこで情報を共有するのかを明確にします。

品質保証体系図の目的と役割

品質保証体系図の最大の目的は、組織の品質活動を「見える化」し、全社的な品質マネジメント体制を確立することです。品質保証体系図を整備することで、経営層は品質戦略を俯瞰的に把握でき、現場担当者は自部門の役割と他部門との連携ポイントを正確に理解できます。これにより、品質トラブル発生時の初動対応が迅速化し、再発防止策の立案もスムーズになります。

また、ISO9001などの品質マネジメント規格では、組織の役割・責任・権限を明確にすることが要求されており、品質保証体系図はこれらの要求事項に対応する有効な文書となります。監査対応や認証取得の場面でも、組織の品質保証体制を説明する際の中核資料として活用されます。

QC工程表など他ツールとの違い

品質管理の現場では、QC工程表や作業指示書といったツールも広く使われていますが、品質保証体系図とは明確に役割が異なります。QC工程表は製造現場における各工程の管理項目・検査方法・判定基準を詳細に定めた「現場の教科書」であり、主に製造ラインのオペレーターや品質検査員が日常業務で参照するものです。

一方、品質保証体系図は組織全体の品質活動の流れと各部署の役割分担を示す「組織の設計図」であり、経営層や管理職、ISO担当者が全社的な品質マネジメントを統括するために用います。両者は相互補完的な関係にあり、品質保証体系図で全体像を把握した上で、QC工程表で現場の具体的な管理手法を定めることで、実効性の高い品質保証体制を構築できます。下記の項目ごとの違いを示した表も参照してみてください。

項目品質保証体系図QC工程表
対象範囲組織全体の品質活動製造現場の各工程
主な利用者経営層・管理職・ISO担当者現場オペレーター・検査員
記載内容部署・役割・連携ルート工程・管理項目・検査方法
目的組織の品質マネジメント体制の可視化製造工程の品質管理の標準化

品質保証体系図の基本的な構成

品質保証体系図を効果的に機能させるためには、どのような情報を盛り込むべきかを明確にする必要があります。ここでは、品質保証体系図の主要な構成要素を解説します。

関与部署と組織構造

品質保証体系図には、品質活動に関わるすべての部署を明記します。製造部門・品質管理部門・設計開発部門・購買部門・営業部門・アフターサービス部門など、製品ライフサイクル全体に関与する組織単位をリストアップし、それぞれの位置づけを図示します。

組織図と連動させることで、品質保証体系図は単なる業務フロー図ではなく、実際の組織構造と責任系統を反映した実用的な文書となります。経営層直下に品質保証部門を配置するのか、製造部門と並列に位置づけるのかといった組織設計の方針も、この図から読み取れるようにすることが重要です。

各部署の役割と責任

各部署が品質保証活動においてどのような役割を担い、どこまでの責任を持つのかを具体的に記載します。例えば、設計部門は「設計審査の実施と記録」、製造部門は「工程内検査の実施と不適合品の隔離」、品質管理部門は「出荷検査の実施と品質データの集計・分析」といった形で、役割を明文化します。

この際、単に「品質管理を行う」といった抽象的な表現ではなく、具体的な業務内容や成果物まで明示することで、実際の運用場面で混乱が生じにくくなります。また、責任の所在が不明確な業務領域がないか、複数部署で重複している業務がないかをチェックすることも重要です。

業務連携プロセス

品質保証活動は、複数の業務プロセスが連鎖して成立します。品質保証体系図では、製品企画から設計・試作・量産準備・量産・出荷・アフターサービスに至る一連のプロセスを時系列で整理し、各プロセスで発生する品質関連情報がどのように伝達・共有されるのかを示します。

特に、設計変更情報の伝達ルートや不適合品発生時の報告経路、顧客クレームのエスカレーションフローなど、トラブル対応に直結する情報の流れを明確にすることで、迅速かつ的確な対応が可能となります。また、情報の記録媒体や保管場所も併記しておくと、監査対応や過去のトラブル事例の振り返りがスムーズになります。

連携・報告ルートと意思決定プロセス

品質保証活動では、部門間の連携が不可欠です。品質保証体系図には、定期的な品質会議の開催タイミングや参加部署、重大不適合発生時のエスカレーションルート、経営層への報告基準などを明示します。

また、品質に関する重要な意思決定がどのような承認プロセスを経て行われるのかを図示することで、現場担当者が判断に迷う場面でも適切な上位者に相談できる体制を整えます。例えば、顧客からの仕様変更要求に対して、営業部門・設計部門・製造部門・品質管理部門がどの順序で検討し、最終的に誰が承認するのかといったフローを明確にしておくことが重要です。品質保証活動の主な項目は、以下のとおりです。

  • 品質会議の開催頻度と参加部署
  • 不適合品発生時の報告基準とエスカレーション先
  • 顧客クレーム発生時の初動対応と責任者
  • 設計変更や仕様変更の承認プロセス
  • 品質目標の設定と進捗管理の責任部署

品質保証体系図の作成手順とポイント

品質保証体系図を自社の実態に合わせて作成するには、体系的なアプローチが必要です。ここでは、実際の作成手順と押さえるべきポイントを解説します。

現状の品質活動の棚卸し

品質保証体系図の作成は、まず現状の品質活動を網羅的に洗い出すことから始まります。各部署にヒアリングを行い、どのような品質関連業務を誰が担当しているのか、どのような文書や記録が作成されているのか、部門間でどのような情報共有が行われているのかを把握します。

この際、形式的な手順書や規程だけでなく、実際の現場で行われている業務の実態を正確に反映させることが重要です。例えば、規程上は品質会議が月1回開催されることになっていても、実際には開催されていない、あるいは形骸化しているといった状況があれば、それを正直に記録し、改善の対象として認識します。

組織構造と責任分担の明確化

現状把握ができたら、組織図を基に品質保証活動に関わる部署とその役割を整理します。この段階で、責任範囲が曖昧な業務や複数部署で重複している業務が明らかになることがあります。こうした課題は品質保証体系図の作成プロセスで解決していく必要があります。

また、品質保証活動の責任者を明確に定めることも重要です。一般的には、品質保証部門長や品質管理責任者が全社的な品質保証活動を統括する役割を担いますが、組織によっては製造部門長や技術部門長がその役割を兼務する場合もあります。いずれにせよ、品質保証体系図には責任者の役職名と権限範囲を明記します。

業務フローと情報連携の図示

組織構造と役割分担が整理できたら、次に業務フローと情報の流れを図示します。フローチャートやスイムレーン図など、視覚的に理解しやすい形式を選択し、製品企画から出荷・アフターサービスまでの一連のプロセスを時系列で配置します。

各プロセスの節目で発生する品質関連の判定ポイント(設計審査、試作評価、初品検査、出荷判定など)を明示し、その判定結果が次工程にどのように伝達されるのかを矢印や線で示します。また、不適合品が発見された場合の処置フローや、顧客クレームが発生した場合の対応フローも併記しておくと、トラブル発生時の迅速な対応につながります。

文書化と関係者への展開

品質保証体系図が完成したら、文書として正式に承認し、関係者全員に展開します。ISO9001の文書管理規程に従い、文書番号・版数・承認者・発行日などを記載し、組織の公式文書として位置づけます。

また、品質保証体系図は単に作成して配布するだけでなく、全社的な教育や研修の場で活用し、各部署の担当者が自部門の役割と他部門との連携ポイントを正確に理解できるようにします。新入社員教育やISO内部監査員養成研修などでも、品質保証体系図を教材として用いることで、組織全体の品質マネジメント体制への理解が深まります。

下記の表は、作業ステップごとの作業内容と確認ポイントを示しています。

作成ステップ主な作業内容確認ポイント
現状把握各部署へのヒアリング・業務の洗い出し実態に即した情報収集ができているか
組織整理関与部署の特定・役割分担の明確化責任範囲の重複や空白がないか
フロー作成業務プロセスと情報連携の図示判定ポイントと伝達経路が明確か
文書化・展開正式承認・関係者への配布・教育全員が理解・活用できる状態か

品質保証体系図と品質マネジメントシステム

品質保証体系図は、ISO9001をはじめとする品質マネジメントシステム規格の要求事項に対応する重要な文書です。ここでは、ISO9001との関連性と活用方法を解説します。

ISO9001の要求事項と品質保証体系図

ISO9001の要求事項では、組織の役割・責任・権限を明確にすることが求められています(5.3項「組織の役割、責任及び権限」)。品質保証体系図は、この要求事項に対応する文書として機能し、組織がどのように品質マネジメントシステムを運用しているのかを明示します。

また、ISO9001では「プロセスアプローチ」の考え方が重視されており、組織の業務をプロセスの連鎖として捉え、各プロセスの相互作用を管理することが求められます。品質保証体系図は、まさにこのプロセスアプローチを具現化するツールであり、各プロセスの入力・出力・責任者・管理指標を整理することで、効果的なプロセス管理を実現します。

内部監査・外部審査での活用方法

ISO9001の内部監査や認証機関による外部審査では、品質マネジメントシステムが実際に機能しているかが確認されます。品質保証体系図は、監査員や審査員に対して組織の品質保証体制を説明する際の重要な資料となります。

内部監査では、品質保証体系図に記載された役割分担や業務フローが実際に運用されているかを確認するためのチェックリストとして活用できます。また、外部審査では、審査員が組織の品質マネジメントシステムの全体像を理解するための資料として提示することで、審査がスムーズに進行します。

継続的改善と品質保証体系図の見直し

品質マネジメントシステムは、継続的改善を前提としています。組織変更や業務プロセスの変化、新製品の投入、法規制の改正など、さまざまな要因により品質保証活動の内容は変化します。品質保証体系図も、こうした変化に応じて定期的に見直す必要があります。

品質保証体系図の見直しは、単に図を修正するだけでなく、組織の品質活動全体を見直す良い機会となります。例えば、年1回のマネジメントレビューや内部監査の結果を踏まえて、品質保証体系図の内容が現状と合っているかを確認し、必要に応じて改訂します。改訂履歴を記録しておくことで、組織の品質マネジメントシステムがどのように進化してきたかを振り返ることもできます。品質保証体系図の見直しにおける主な活動は、以下のとおりです。

  • ISO9001の5.3項「組織の役割、責任及び権限」への対応
  • プロセスアプローチの具現化と各プロセスの相互作用の明示
  • 内部監査でのチェックリストとしての活用
  • 外部審査での説明資料としての提示
  • マネジメントレビューでの見直しと継続的改善への反映

まとめ

品質保証体系図は、組織全体の品質活動を可視化し、各部署の役割と連携を明確にする「見える化」ツールです。品質保証体系図は組織の「設計図」として機能し、経営層から現場担当者まで全員が品質マネジメント体制を共通認識できる基盤となります。

品質保証体系図の作成には、現状の品質活動の棚卸しから始まり、組織構造と役割分担の明確化、業務フローと情報連携の図示、文書化と関係者への展開という段階的なアプローチが必要です。

品質トラブル発生時の迅速な初動対応、部門間連携の強化、品質データの効果的な活用など、組織の品質保証活動を実効性あるものにするための実用的なツールです。自社の実態に合わせた品質保証体系図を整備し、定期的に見直すことで、組織全体の品質レベルを継続的に向上させることができます。

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