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【2025最新】ポジティブリスト制度にどう対応する?既存資材の見直し・証明書取得・運用管理の手順

【2025最新】ポジティブリスト制度にどう対応する?既存資材の見直し・証明書取得・運用管理の手順

2025年6月、食品用器具・容器包装に関する「ポジティブリスト制度」が完全施行されます。この制度は、プラスチック製の食品用資材について、国が安全性を確認した物質のみ使用を認める仕組みです。製造・輸入・販売に関わる企業は、既存資材の適合性確認、証明書取得、そして継続的な運用管理が求められます。

ポジティブリスト制度とは何か:2025年施行の最新動向

ポジティブリスト制度は、食品衛生法に基づき、食品用器具・容器包装に使用できる物質をあらかじめリスト化し、リストに掲載された物質のみの使用を認める規制です。従来の「ネガティブリスト」方式から転換し、より厳格に安全性を管理する仕組みとなりました。

ポジティブリストに掲載される物質の種類

リストには、基ポリマー、添加剤、モノマーなど約1,500物質が掲載されており、それぞれに使用条件や溶出規格が定められています。企業はこれらの物質を組み合わせて製品を設計しますが、リストに掲載されていない物質を使用すると法令違反となります。リストは厚生労働省のウェブサイトで公開されており、定期的に更新されるため、常に最新版を確認することが求められます。

また、リストに掲載された物質であっても、使用量や接触する食品の種類によって制限がかかる場合があります。例えば、脂肪性食品に接触する資材では、より厳しい溶出試験が求められることがあります。このため、単にリストを確認するだけでなく、個別の使用条件を精査する必要があります。

完全施行に向けた経過措置

2020年6月の施行から2025年6月までの5年間は、経過措置期間として設定されています。この期間中は、従来のネガティブリスト基準を満たしていれば、ポジティブリストに未掲載の物質を使用した製品も流通が認められてきました。しかし、2025年6月以降は、ポジティブリストに適合しない製品の製造・輸入・販売が全面的に禁止されます。

完全施行後は、行政による監視・指導も強化されます。違反が発覚した場合、製品の回収命令、営業停止、罰則の適用など、厳しい措置が取られる可能性があります。また、取引先からの証明書提出要請も増加しており、対応が遅れると取引停止のリスクが生じるおそれがあります。

対象事業者と求められる義務

ポジティブリスト制度の対象となるのは、食品用器具・容器包装を製造・加工・輸入・販売するすべての事業者です。樹脂メーカー、フィルムメーカー、成形加工メーカー、印刷メーカー、商社、そして最終的に食品を充填する食品メーカーまで、サプライチェーン全体が関係します。

主な義務としては、以下の3点が挙げられます。第一に、使用する物質がポジティブリストに適合していることの確認です。第二に、サプライチェーン内での情報伝達義務、具体的には証明書や保証書の発行と伝達です。第三に、製造管理基準(GMP)の遵守と、必要に応じた営業届出の提出です。これらの義務を怠ると、法令違反となるだけでなく、取引先からの信頼を失うことにもつながります。下記は、サプライチェーンの各段階で役割と義務を整理したものです。

対象事業者主な義務内容具体的な対応例
樹脂メーカー原材料のPL適合証明書発行使用物質のリスト適合確認、
証明書作成・伝達
加工メーカー受領証明書の確認、
最終製品の適合証明
上流からの証明書保管、
加工工程の記録管理
輸入事業者輸入品の適合確認、
和英併記証明書取得
海外サプライヤーとの交渉、
書類の整備
食品メーカー容器包装の適合確認、
記録保管
調達先への証明書要請、
社内管理体制構築

既存資材の適合性確認:見直しと棚卸しの実務手順

ポジティブリスト制度への対応の第一歩は、自社で使用している既存資材の適合性を確認することです。製造・輸入・使用しているすべての食品用プラスチック資材をリストアップし、一つひとつがポジティブリストに適合しているかを検証します。この作業は、品質管理部門、調達部門、製造部門が連携して行う必要があります。

資材のリストアップとデータベース化

既存資材のリストアップでは、製品番号、材質、サプライヤー名、使用開始日、用途を明記した管理台帳を作成します。この台帳は、今後の証明書取得や情報伝達の基礎資料となります。特に大企業では、複数の事業所や関連会社で異なる資材を使用している場合があるため、全社横断的な調査が必要です。

データベース化にあたっては、既存の購買管理システムや品質管理システムと連携させると効率的です。各資材に対して、ポジティブリスト適合状況、証明書取得状況、有効期限などのステータスを記録し、リアルタイムで管理できる仕組みを構築します。これにより、監査や取引先からの問い合わせにも迅速に対応できます。

ポジティブリストとの照合方法

まず、ポジティブリストとの照合は必須です。リストには、物質名、CAS番号、使用条件、溶出規格などが記載されています。サプライヤーから提供された成分表のCAS番号と照合し、すべての物質がリストに掲載されているかを確認します。

照合作業では、物質名だけでなくCAS番号での照合が重要です。同じ物質でも複数の呼称が存在する場合があり、名称だけでは誤認のリスクがあります。また、添加剤やインクなど微量成分も見落とさず、全成分を確認する必要があります。不明な点があれば、サプライヤーに問い合わせ、詳細な組成情報を取得します。

非適合資材が見つかった場合の対応策

照合の結果、ポジティブリストに適合しない物質が使用されている資材が見つかった場合、速やかに対応策を検討します。対応策としては、代替資材への切り替え、サプライヤーとの協議による配合変更、あるいは使用中止が考えられます。代替資材を選定する際は、機能性、コスト、供給安定性を総合的に評価します。

サプライヤーとの協議では、ポジティブリストに適合した配合への変更を依頼します。多くの樹脂メーカーや加工メーカーは、既に制度対応品を開発しているため、代替案の提案を受けることが可能です。ただし、配合変更には試作・評価期間が必要であり、早急な行動が求められます。下記のように、それぞれの対応策には長所と短所があります。

対応策メリットデメリット
代替資材への切り替え迅速に対応可能、サプライヤーの既存品を利用機能・コストの変動、製品評価が必要
配合変更の依頼既存の仕様を維持しやすい開発期間とコストがかかる、サプライヤーの対応に依存
使用中止法令違反リスクを確実に回避製品ラインナップの縮小、顧客への影響

証明書取得の具体的フロー:PL適合証明書と安全性証明書

ポジティブリスト制度では、サプライチェーン全体で情報を伝達するため、証明書の発行と受領が義務付けられています。証明書には主に「PL適合証明書」と「安全性証明書」の2種類があり、それぞれの役割と取得方法を理解することが重要です。

PL適合証明書の取得手順

PL適合証明書の取得は、サプライヤーへの証明書発行依頼から始まり、受領後の内容確認、社内データベースへの登録というフローで進めます。まず、取引先のサプライヤーに対して、正式な依頼書を送付します。依頼書には、対象製品の品番、用途、証明書の様式などを明記します。

サプライヤーから証明書を受領したら、記載内容を精査します。製品名、ロット番号、使用物質のリスト、CAS番号、使用量、リスト掲載番号などが正確に記載されているかを確認します。特に、輸入品の場合は和英併記が求められるため、英語の原本と日本語訳の整合性もチェックします。不備があれば速やかにサプライヤーに修正を依頼します。

安全性証明書の内容と発行プロセス

安全性証明書は、PL適合証明書に加えて、溶出試験や品質管理体制の証明を含む場合があります。特に、食品に直接接触する一次包装材では、蒸発残留物試験、過マンガン酸カリウム消費量試験、重金属試験などの溶出試験結果の提示が求められることがあります。これらの試験は、公的試験機関や自社の試験室で実施します。

発行プロセスは、PL適合証明書と同様に、上流から下流へと順次伝達されます。最終的に食品メーカーは、容器包装メーカーから安全性証明書を受け取り、自社製品の安全性を担保します。証明書には有効期限が設定されている場合があるため、定期的な更新と管理が必要です。

輸入品および複合素材への対応

輸入品の場合、海外のサプライヤーがポジティブリスト制度を理解していない場合があります。このため、制度の概要を説明し、必要な証明書のフォーマットを提供するなど、丁寧なコミュニケーションが求められます。和英併記の証明書が必要であり、翻訳の正確性も重要です。場合によっては、専門の翻訳業者や法務担当者の支援を受けることも検討します。

複合素材品(例:多層フィルム、印刷包装材)では、各層ごとに使用物質を確認し、証明書を取得する必要があります。印刷インクや接着剤も対象となるため、印刷業者や接着剤メーカーからも証明書を取得します。複数のサプライヤーが関与するため、情報の集約と整理が複雑になりますが、漏れなく対応することが法令遵守につながります。

下記のチェックポイントを確実に実施することで、証明書取得のプロセスを標準化し、漏れやミスを防ぐことができます。

  • サプライヤーへの依頼書送付と様式の提示
  • 証明書受領後の記載内容の精査とCAS番号の照合
  • 不備がある場合の修正依頼とフォローアップ
  • 証明書の社内データベースへの登録と有効期限管理
  • 輸入品の和英併記対応と翻訳の正確性確認
  • 複合素材品の各構成要素ごとの証明書取得

運用管理の実務ポイント:情報伝達・記録保管・社内体制の整備

証明書を取得した後も、継続的な運用管理が不可欠です。ポジティブリスト制度は、一度対応すれば終わりではなく、新規資材の導入、サプライヤーの変更、配合変更などがあるたびに、適合性の確認と証明書の更新が必要です。また、行政の監査や取引先の監査に備え、情報伝達の記録と証明書の保管を適切に行う体制を構築します。

運用管理の基本は、サプライチェーン内での確実な情報伝達と、トレーサビリティの確保です。誰が、いつ、どの証明書を受領し、どのように管理しているかを記録し、必要な時にすぐに参照できるようにします。これにより、問題発生時の迅速な対応や、原因究明が可能となります。

情報伝達の仕組みと書面管理

情報伝達は、書面(紙または電子データ)で行うことが法令で定められており、口頭や電話での伝達は認められません。証明書や保証書は、サプライヤーから受領した原本をそのまま保管するか、自社の様式に転記して次の事業者に伝達します。転記する場合は、元の証明書と照合し、誤りがないことを確認します。

情報伝達の記録としては、証明書の発行日、受領日、伝達先、伝達方法などを記録します。これにより、万が一の監査時にも、情報伝達が適切に行われていたことを証明できます。また、証明書の更新時期を管理し、有効期限が切れる前に再取得を依頼する仕組みも重要です。

記録の保管期間と管理方法

証明書や情報伝達の記録は、製品の製造・販売が終了した後も一定期間保管する必要があります。具体的な保管期間は法令で明示されていない場合もありますが、一般的には5年から10年の保管が推奨されます。自治体によっては、営業届出の際に記録保管の体制を確認される場合もあります。

記録の管理方法としては、紙ベースでの保管に加え、電子化してクラウドやサーバーに保存する方法が効率的です。電子化により、検索性が向上し、複数拠点での共有も容易になります。ただし、電子データのバックアップとセキュリティ対策も必須となります。定期的なバックアップと、アクセス権限の管理により、データの紛失や漏洩を防ぎます。

社内教育と責任者の配置

ポジティブリスト制度への対応は、一部の部門だけでなく、全社的な取り組みが必要です。品質管理部門、調達部門、製造部門、営業部門など、関係するすべての部門の担当者が、制度の内容と自部門の役割を理解することが重要です。定期的な社内研修やセミナーを実施し、最新の法令情報や実務上の注意点を共有します。

また、ポジティブリスト対応の責任者を明確に配置し、全社的な調整と進捗管理を行う体制を構築します。責任者は、各部門との連携、サプライヤーとの交渉、証明書の管理、監査対応などを統括します。大企業では、専任の担当者やプロジェクトチームを設置することも有効です。以下の表は、ポジティブリスト制度における運用管理項目を整理したもので、各業務の実施内容と担当部門の役割分担を示しています。

運用管理項目実施内容担当部門
情報伝達証明書の受領・伝達・記録品質管理部門・調達部門
記録保管証明書の保管・電子化・バックアップ品質管理部門・情報システム部門
社内教育研修実施・マニュアル整備・周知人事部門・品質管理部門
監査対応行政監査・取引先監査への資料提供品質管理部門・法務部門

この表に示すとおり、運用管理には複数の部門が連携して取り組む必要があります。部門間の情報共有と役割分担を明確にし、スムーズな運用を実現します。

まとめ

ポジティブリスト制度への対応は、2025年6月の完全施行に向け、既存資材の見直し、証明書取得、運用管理の各段階を確実に実施することが求められます。まず、自社のすべての該当資材をリストアップし、ポジティブリストとの適合性を確認します。非適合資材が見つかった場合は、代替資材への切り替えやサプライヤーとの協議により、速やかに対応策を講じます。

次に、サプライヤーからPL適合証明書や安全性証明書を取得し、サプライチェーン全体で情報を伝達します。証明書は書面で管理し、有効期限や更新時期を記録して、継続的に適合状況を維持します。また、営業届出やGMPの遵守、社内教育と責任者の配置により、全社的な対応体制を構築します。

制度は今後も改正される可能性があり、最新の法令情報と業界動向を常に把握することが重要です。本記事で解説した手順と注意点を参考に、自社の対応状況を総点検し、法令遵守と取引継続を確実なものとしましょう。

参考文献
https://www.sato.co.jp/market/column/71/

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