送信中です

ご入力内容を送信中です。
しばらくそのままでお待ちください。

Report

レポート

  1. PROTRUDE – 現場のあらゆる課題、解決策のすべてがここに –トップ
  2. レポート
  3. OEEとは?計算方法や工場の稼働率を最大化する改善ステップ

OEEとは?計算方法や工場の稼働率を最大化する改善ステップ

品質・保全

設備保全

OEEとは?計算方法や工場の稼働率を最大化する改善ステップ

OEE(Overall Equipment Effectiveness:設備総合効率)は、製造業において設備の効率性を総合的に測る重要なKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)です。工場の稼働率、品質、パフォーマンスを統合した指標として、世界中の製造企業で活用されています。OEEを正しく理解し活用することで、現場の生産性向上やコスト削減を実現し、競争力の強化につながります。本記事では、OEEの基本概念から具体的な計算方法、現場での改善ステップまでを体系的に解説いたします。

関連リンク:「設備保全」に関する記事一覧

OEEの基本概念と製造業での重要性

OEE(設備総合効率)は、製造設備がどれだけ効率的に稼働しているかを数値化した総合指標です。単なる稼働時間の測定ではなく、時間効率・性能効率・品質効率の3つの要素を組み合わせて設備の真の能力を評価します。

OEEの定義と基本概念

OEEは時間稼働率・性能稼働率・良品率の3要素を掛け合わせた総合効率指標で、設備の潜在能力に対する実際のパフォーマンスを百分率で表します。

この指標は1960年代に日本で開発された概念が基となっており、現在ではISO22400などの国際規格でも標準的なKPIとして位置づけられています。OEEの数値は0%から100%の間で表され、一般的に85%以上が世界トップクラスの水準とされています。

製造業でOEEが注目される理由

製造業においてOEEが重視される背景には、グローバル競争の激化と製造原価の最適化ニーズがあります。単純な生産量や稼働時間の管理だけでは、真の生産効率は把握できません。

OEEを導入することで、設備投資の効果測定、生産計画の精度向上、現場改善の優先順位付けが可能になり、データドリブンな製造管理が実現できます。データに基づいて工場を管理することで、ムダをなくして本来の力を引き出すための指標がOEEなのです。

OEEと従来の稼働率指標の違い

従来の稼働率は主に時間ベースの指標でしたが、OEEは多面的な評価を行います。例えば、設備が動いていても生産速度が低下している場合や、不良品が多発している場合、従来の稼働率では問題を見逃してしまいます。

OEEでは性能稼働率と良品率を組み込むことで、これらの隠れたロスを可視化し、総合的な設備効率の評価が可能となります。

OEEと従来の稼働率の違いを、整理すると以下のようになります。

指標測定範囲見落としがちな要素
従来の稼働率稼働時間のみ速度低下・品質不良
OEE時間・速度・品質なし(総合評価)

OEEの構成要素と詳細な計算方法

OEEは3つの主要要素から構成され、それぞれが設備効率の異なる側面を測定しています。これらの要素を正確に理解し計算することが、効果的な改善活動の基盤となります。

時間稼働率の計算と改善ポイント

時間稼働率は、計画された生産時間に対して実際に設備が稼働している割合を示す指標です。

計算式は「実稼働時間 ÷ 負荷時間 × 100」で表されます。負荷時間とは、計画生産時間から計画保全時間を除いた時間を指します。一般的に90%以上であれば、時間管理が良好であると判断されます。時間稼働率を高めるためには、故障や段取りにかかる時間を減らす工夫や、立ち上げ時の手順改善などが効果的です。

性能稼働率の計算と基準設定

性能稼働率は、設備が理論上の最大速度に対してどの程度の実力を発揮しているかを示す指標です。

計算式は「理論生産個数 ÷ 実生産個数 × 100」で、理論生産個数は基準サイクルタイムから求めます。高い性能稼働率は、生産速度の最適化が図れていることを意味します。

良品率の定義と不良品管理

良品率は、総生産個数のうち、再加工や廃棄を必要としない合格品の割合を示します。

計算式は「良品個数 ÷ 総生産個数 × 100」で、総生産個数には不良品や手直し品も含まれます。良品率が高いほど、工程の安定性や品質管理体制が良好であると判断されます。

7大ロスとOEE低下の主要因分析

OEEの低下要因を体系的に分析するために、製造現場では「7大ロス」という概念が活用されています。これらのロス要因を特定し対策することで、効率的なOEE改善が実現できます。ここでは、OEEを構成する3要素(時間稼働率・性能稼働率・良品率)に対応したロスを体系的に整理します。

時間稼働率に影響する4つのロス

時間稼働率を下げてしまう大きな原因には、故障ロス、段取り・調整ロス、刃具交換ロス、立上がりロスの4つがあります。これらが発生すると、その分だけ実際に生産に使える時間が削られてしまいます。

例えば、故障によるロスは予防保全を徹底することで減らせますし、段取りや調整にかかる時間は作業のやり方を標準化したり、治具を改良したりすることで短縮できます。刃具の交換については、寿命を見極めて最適なタイミングで実施することが有効です。また、機械の立上がり時に時間を取られてしまうロスは、作業手順を見直すことで改善できます。

このように、それぞれのロスに合わせた取り組みを進めることで、稼働時間を最大限に活用できるようになります。

性能稼働率と速度低下ロス

速度低下ロスは、設備が稼働していても理論値より遅い速度で運転されている状態を指します。この要因には設備の部分的故障、材料品質のバラツキ、作業者の熟練度不足などがあります。

速度低下ロスの改善には、設備のメンテナンス強化、作業標準の最適化、オペレーター教育の充実が重要です。また、生産データの継続的な監視により、速度低下の早期発見と対策が可能となります。

良品率と品質ロス要因

不良・手直しロスと立上がり不良ロスが良品率を低下させる主要因となり、材料の無駄、作業時間の増加、顧客満足度の低下を引き起こします。

品質ロスの削減には、工程能力の向上、検査システムの強化、作業環境の改善が効果的です。特に立上がり不良ロスは、段取り後の条件設定の精度向上により大幅な改善が期待できます。

OEEを構成する3要素(時間稼働率・性能稼働率・良品率)は、次のようなロスに影響を与えます。

ロス分類具体的内容OEE構成要素
故障ロス設備故障による停止時間稼働率
段取り・調整ロス製品切替時の停止時間稼働率
速度低下ロス理論速度との差性能稼働率
不良・手直しロス品質不良による損失良品率

OEE改善のための実践的な4ステップ

OEEの効果的な改善には体系的なアプローチが必要です。データ収集から改善実行まで、段階的に取り組むことで確実な成果を得ることができます。

ステップ1:現状把握とデータ収集体制の構築

正確なOEE測定のためには、稼働時間、生産数量、不良数の精密なデータ収集システムの構築が不可欠で、手動記録からデジタル化への移行が推奨されます。

データ収集では、測定項目の標準化、記録タイミングの統一、責任者の明確化が重要です。IoTセンサーやPLCデータの活用により、リアルタイムでの状況把握と分析精度の向上が実現できます。

ステップ2:ロス要因の特定と優先順位付け

収集したデータを基に7大ロスの影響度を定量的に分析し、改善効果の高い要因から優先的に取り組みます。パレート分析を活用して、全体への影響が大きい20%の要因を特定することが効率的です。

要因分析では、時間軸での変動パターン、製品別・設備別の傾向分析も重要な視点となります。これにより、根本的な改善策の方向性を明確にできます。

ステップ3:具体的改善施策の立案と実行

特定された主要ロス要因に対して、予防保全の強化、作業標準の見直し、設備改良、人材育成など、多角的な改善施策を組み合わせた包括的なアプローチが効果的です。

改善施策の実行では、短期的な対症療法と中長期的な根本対策を組み合わせることが重要です。また、現場スタッフとの協力体制を構築し、改善活動への参画意識を高めることが成功の鍵となります。

ステップ4:効果測定と継続的監視

改善施策の実行後は定期的な効果測定を行い、OEEの変化を監視します。週次・月次でのレビューサイクルを確立し、目標達成状況と課題の早期発見に努めることが重要です。

効果測定では、OEE値だけでなく各構成要素の変化も詳細に分析し、改善施策の有効性を検証します。期待した効果が得られない場合は、要因分析の見直しや追加施策の検討が必要となります。

  • データ収集の自動化とリアルタイム監視
  • ロス要因の定量分析と優先順位設定
  • 多角的改善施策の同時実行
  • 継続的な効果測定と見直し

デジタル技術を活用したOEE向上戦略

これまで紹介した改善ステップを支援する手段として、デジタル技術の活用が近年ますます重要になっています。現代の製造業では、IoT・AI・データ分析などのデジタル技術を活用したOEE改善が主流となっています。これらの技術により、従来困難だった詳細な現状分析と予測的な改善活動が可能となります。

IoTによるリアルタイムデータ収集

IoTセンサーとPLCの連携により、設備の稼働状況、生産数量、品質データをリアルタイムで収集し、人的ミスの排除と分析精度の向上を実現できます。

センサーデータの活用により、設備の微細な変化や異常の兆候を早期に検知し、予防的な保全活動につなげることができます。また、生産条件と品質の相関分析により、最適な運転パラメータの特定も可能となります。

AIとビッグデータ分析の活用

蓄積された大量の生産データをAIで分析することで、人間では発見困難なパターンや相関関係を特定できます。機械学習アルゴリズムを用いた故障予測、品質予測により、プロアクティブな改善活動が実現できます。

予測分析により、設備故障の事前察知、最適な保全タイミングの決定、品質不良の予防などが可能となり、OEEの大幅な改善につながります。

デジタルダッシュボードによる可視化

リアルタイムでOEEを表示するデジタルダッシュボードを導入すると、現場の管理者や経営層は、いま工場がどのような状態にあるのかをすぐに確認できるようになります。その結果、問題が起きたときに迅速に判断し、改善の行動をとれる環境が整います。

ダッシュボードには、OEEの推移を時間ごとに見られるグラフや、生産効率を下げている要因の内訳、さらに設備ごとや製品ごとの比較結果がわかりやすく表示されます。これにより、現場での改善活動がデータに基づいて進めやすくなり、効果的な取り組みにつながります。

まとめ

OEEは製造業における設備効率の総合指標として、時間稼働率・性能稼働率・良品率の3要素で構成される重要なKPIです。7大ロスの体系的な分析により、改善すべき要因を特定し、優先順位を明確にした施策の実行が効果的なOEE向上につながります。

現代の製造現場では、IoTやAI技術を活用したデジタル化により、従来困難だった詳細なデータ収集と予測的な改善活動が可能となっています。継続的なデータ分析と改善サイクルの確立により、世界トップクラスの85%以上のOEE達成と、持続的な競争力強化を実現できます。

OEEの成功は単なる数値目標の達成ではなく、現場全体の生産性向上と品質の安定化により、企業の収益性と市場競争力の向上に直結する重要な経営指標となるのです。

関連リンク:「設備保全」に関する記事一覧

関連ソリューション

Contact コンタクト

ITソリューション・テクノロジーサービスの
最適なプランをご提案します