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運行管理システムとは?基本的な概要と仕組み
運行管理システムとは、運送業や物流業において車両やドライバーの管理、配車計画の作成、運行状況の把握などを一元的に行うためのITシステムです。従来は紙や表計算ソフトで管理していた業務をデジタル化することで、効率化と安全性の向上を実現します。
このシステムは主にクラウド型とオンプレミス型の2種類があります。クラウド型はインターネット経由でサービスを利用するため、初期投資を抑えられる一方、オンプレミス型は自社サーバーにシステムを構築するため、セキュリティ面でのカスタマイズが可能です。自社の規模や業務内容に合わせた最適なタイプを選択することが重要です。
運行管理システムの基本的な仕組み
運行管理システムの基本的な仕組みは、車両に設置されたGPS端末やドライブレコーダーからデータを収集し、それをサーバーで管理・分析するというものです。収集されたデータは、リアルタイムで確認できるだけでなく、蓄積されて過去の運行履歴として活用することも可能です。
また、多くのシステムではクラウド技術を活用しているため、インターネット環境があればパソコンやスマートフォンなどさまざまなデバイスからアクセスできます。これにより、事務所にいなくても外出先や在宅勤務中でも運行状況を確認したり、必要な指示を出したりすることが可能になります。
タイプ | 特徴 | 向いている企業 |
---|---|---|
クラウド型 | ・初期費用が比較的安価 ・導入が容易 ・バージョンアップが自動 | ・中小規模の運送会社 ・IT専門スタッフがいない企業 |
オンプレミス型 | ・セキュリティレベルが高い ・カスタマイズ性が高い ・自社で完全管理 | ・大規模な運送会社 ・独自の業務フローがある企業 |
ハイブリッド型 | ・基幹システムは自社で管理 ・一部機能はクラウドで利用 | ・セキュリティと利便性のバランスを重視する企業 |
運行管理システムの主要機能とそれぞれの効果
運行管理システムには多様な機能が搭載されています。自社の課題や業務内容に応じて必要な機能を備えたシステムを選択することが大切です。ここでは、代表的な機能とその効果について解説します。
GPS動態管理機能
GPS動態管理機能は、車両の現在位置や走行状況をリアルタイムで把握できる機能です。地図上に車両の位置が表示されるため、配車担当者は各車両の状況を一目で確認できます。また、渋滞情報と連動させることで、最適なルート選択や到着時間の予測が可能になります。
急な配送依頼や配送先の変更にも迅速に対応できるため、顧客満足度の向上にも寄与します。さらに、GPSデータを活用することで、不必要な迂回や空走を防ぎ、燃料費の削減にもつながります。
配車計画・管理機能
配車計画・管理機能は、各車両の稼働状況や積載量、ドライバーの勤務状況などを考慮しながら最適な配車計画を立案する機能です。手作業では時間がかかる配車計画がシステム上で効率的に行えるため、配車担当者の負担軽減につながります。
また、配送先や荷物の情報、車両やドライバーの情報をデータベース化することで、過去の配送実績や特記事項を参照しながら計画を立てることができます。これにより、経験の浅い担当者でも的確な配車が可能になり、人材育成や業務の標準化にも役立ちます。
安全運転支援・指導機能
安全運転支援・指導機能は、ドライバーの運転状況を分析し、安全運転をサポートする機能です。急加速や急ブレーキ、速度超過などの危険運転をリアルタイムで検知し、警告を発することができます。また、運転データを蓄積して分析することで、ドライバーごとの運転特性や改善点を把握できます。
これらのデータを活用して具体的な安全指導を行うことで、事故リスクの低減や燃費向上が期待できます。また、安全運転のレベルが向上することで、車両の維持費削減やドライバーの疲労軽減にもつながります。
日報・点呼管理機能
日報・点呼管理機能は、日々の運行記録や点呼情報をデジタルで管理する機能です。従来は紙で記録していた日報や点呼情報を電子化することで、記入ミスの防止や集計作業の効率化が図れます。また、法令で義務付けられている点呼のアルコールチェックなども、専用端末と連携させることで確実に実施・記録できます。
蓄積されたデータは労務管理や給与計算にも活用でき、事務作業の大幅な効率化が実現します。さらに、デジタルデータとして保存されるため、監査や行政への報告が必要な際にもスムーズに対応できます。
運行管理システム導入のメリット
運行管理システムを導入することで、運送業・物流業はさまざまなメリットを享受できます。業務効率化からコスト削減、安全性向上まで、経営課題の解決につながる効果が期待できます。
業務効率化と省人化
運行管理システムの導入により、これまで手作業で行っていた多くの業務が自動化・効率化されます。配車計画の立案、日報作成、点呼記録など、日々の煩雑な作業がシステム上で簡単に行えるようになるため、大幅な時間短縮が可能です。
特に配車業務においては、車両やドライバーの稼働状況、荷物の情報などを一元管理できるため、最適な配車が容易になります。また、急な配送依頼や変更にも柔軟に対応できるようになり、人手不足の環境下でも質の高いサービスを維持できるようになります。
コスト削減効果
運行管理システムの導入は、さまざまな面でコスト削減につながります。まず、GPSによる最適ルート選択や空走防止により、燃料費の削減が期待できます。また、エコドライブの促進によって燃費向上も図れます。
さらに、事故防止による修理費や保険料の削減、適切な点検・整備による車両寿命の延長など、間接的なコスト削減効果も大きいです。業務効率化による残業時間の削減や、ペーパーレス化による消耗品費の削減なども含めると、長期的には大きな経済効果をもたらします。
安全性の向上と事故防止
運行管理システムの安全運転支援機能により、ドライバーの危険運転を検知・警告することで、事故リスクを大幅に低減できます。また、運転データの分析により、各ドライバーの運転特性や改善点を把握し、個別に最適な安全指導を行うことも可能です。
さらに、疲労や体調不良の早期発見、適切な休憩時間の確保なども支援するため、ドライバーの健康管理にも役立ちます。結果として、事故件数の減少だけでなく、企業としての安全意識の向上や安全文化の醸成にもつながります。
法令遵守(コンプライアンス)の強化
運送業界は、道路運送法や貨物自動車運送事業法など、さまざまな法令を遵守する必要があります。運行管理システムは、こうした法令遵守をサポートする機能を備えています。点呼の確実な実施・記録、運転時間や休憩時間の適正管理、各種書類の電子保存など、法令で求められる対応を漏れなく行うことができます。
また、行政への報告や監査対応も容易になるため、法令違反によるリスクを大幅に軽減できます。こうしたコンプライアンス強化は、企業の信頼性向上にもつながり、取引先からの評価アップや新規顧客獲得にも寄与します。
以下は、上記のメリットをまとめた表になります。
メリット | 具体的な効果 | 期待できる数値例 |
---|---|---|
業務効率化 | 配車業務の時間短縮、ペーパーレス化 | 配車業務時間 約50%削減 |
コスト削減 | 燃料費削減、車両維持費削減 | 燃料コスト 約10〜15%削減 |
安全性向上 | 事故件数の減少、安全意識の向上 | 事故発生率 約30%減少 |
法令遵守強化 | 違反リスク軽減、監査対応の円滑化 | 法令違反件数 ほぼゼロに |
運行管理システム導入の注意点とデメリット
運行管理システムは多くのメリットをもたらす一方で、導入には一定の注意点やデメリットも存在します。導入を検討する際には、これらの点も十分に理解した上で判断することが大切です。
初期費用とランニングコストの負担
運行管理システム導入の最も大きなハードルの一つが、費用面の負担です。初期費用としては、システム本体の導入費用だけでなく、車両へのGPS端末やドライブレコーダーの設置費用、サーバー構築費用などが発生します。(オンプレミス型の場合)さらに、導入時の社員教育やデータ移行にもコストがかかることがあります。
また、導入後も月額利用料やサポート料、機器のメンテナンス費用などのランニングコストが継続的に発生します。導入前に総コストを算出し、ROI(投資収益率)を検討することが重要です。場合によっては、段階的な導入や必要最小限の機能からスタートするといった方法も検討すべきでしょう。
既存業務フローとの調整の必要性
運行管理システムを導入する際には、これまでの業務フローを見直し、システムに合わせた形に調整する必要があります。長年続けてきた作業手順や慣習を変更することに対して、現場からの抵抗が生じることも少なくありません。
特に、紙ベースでの管理や対面でのコミュニケーションを重視してきた企業では、デジタル化による業務変更に戸惑いを感じるスタッフも多いでしょう。こうした変化に対応するためには、丁寧な説明と段階的な移行計画、そして現場の声を取り入れたカスタマイズなどが必要になります。
ITリテラシーによる活用度の差
運行管理システムの効果を最大限に発揮するためには、利用者のITリテラシーが重要な要素となります。特に年配のドライバーや管理者の中には、デジタル機器の操作に不慣れな方も少なくありません。そのため、システム導入後も十分な活用ができず、投資に見合った効果が得られないケースもあります。
この課題を解決するためには、導入前の十分な教育・研修と、導入後のフォローアップが欠かせません。また、直感的に操作できるインターフェースを持つシステムを選択することや、段階的な機能追加を行うことで、利用者の負担を軽減することも検討すべきです。
過度な監視によるドライバーのストレス
運行管理システムは、ドライバーの運転状況や位置情報を常時監視する側面があります。これにより、ドライバーが「常に監視されている」という精神的プレッシャーやストレスを感じる可能性があります。こうしたストレスは、モチベーション低下や離職率上昇などの問題につながりかねません。
この問題を回避するためには、システム導入の目的が「監視」ではなく「安全確保」「業務効率化」「ドライバー自身の負担軽減」であることを丁寧に説明し、理解を求めることが重要です。また、収集したデータの使用目的を明確にし、プライバシーに配慮した運用ルールを策定することも必要でしょう。
自社に最適な運行管理システムの選び方
運行管理システムを導入する際、自社の業務内容や課題、規模に合ったシステムを選ぶことが重要です。多くのシステムが市場に存在する中で、どのようにして最適なものを選ぶべきか、そのポイントを解説します。
自社の課題と必要機能の明確化
まず最初に行うべきことは、自社が抱える課題を明確にし、それを解決するために必要な機能を特定することです。例えば、「配車業務の効率化」が課題であれば配車支援機能を、「燃料費の削減」が課題であれば燃費管理機能を重視することです。
すべての機能が揃ったシステムは魅力的に映りますが、実際には使わない機能のために余分なコストを支払うことになります。自社にとって本当に必要な機能を見極め、それを備えたシステムを選択することが重要です。
企業規模や車両台数に応じた選択
運行管理システムは、対象とする企業規模や車両台数によって最適なタイプが異なります。小規模な事業者であれば、初期費用が抑えられ、必要最小限の機能を備えたクラウド型システムが適しているでしょう。一方、大規模な事業者では、カスタマイズ性の高いオンプレミス型や、より高度な分析機能を備えたシステムが効果的です。
また、車両台数に応じた料金体系になっていることが多いため、将来的な車両増減の可能性も考慮して選択することが大切です。スケーラビリティ(拡張性)の高いシステムであれば、事業拡大に合わせて柔軟に対応できます。
使いやすさとサポート体制の確認
いくら機能が充実していても、使いにくいシステムでは効果を発揮できません。特に、ITリテラシーにばらつきがある現場では、直感的に操作できるインターフェースを持つシステムが望ましいでしょう。デモ版やトライアル期間を活用して、実際の使い勝手を確認することをお勧めします。
また、導入後のサポート体制も重要なポイントです。トラブル発生時の対応速度や、操作方法に関する問い合わせ窓口の充実度、定期的にバージョンアップの有無などを事前に確認しておくことで、導入後の安心感が大きく変わります。
拡張性と他システムとの連携可能性
将来的な業務拡大や変化に対応できるよう、システムの拡張性も考慮すべきポイントです。必要に応じて機能を追加できるモジュール型のシステムや、新しい技術に対応可能なアップデート体制が整っているシステムが理想的です。
また、既に導入している会計システムや在庫管理システムなど、他のシステムとの連携可能性も重要です。データの二重入力を避け、業務の一貫性を保つためには、API連携などの機能が備わっているかどうかをチェックしましょう。将来的なDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を見据えると、こうした連携性は非常に重要な要素となります。
下記は、他のシステム活用の選定ポイントをまとめた表です。
選定ポイント | チェック項目 | 重要度 |
---|---|---|
必要機能 | ・自社課題解決に必要な機能が揃っているか ・カスタマイズ可能か | ★★★ |
コスト | ・初期費用は予算内か ・月額費用は継続して負担可能か ・追加費用の発生条件 | ★★★ |
使いやすさ | ・インターフェースは直感的か ・モバイル対応しているか ・操作マニュアルは充実しているか | ★★★ |
サポート体制 | ・導入時のサポート内容 ・問い合わせ対応時間 ・方法・定期的な研修の有無 | ★★ |
拡張性・連携性 | ・機能追加の可否 ・他システムとの連携可否 ・データエクスポート形式 | ★★ |
セキュリティ | ・データ暗号化 ・アクセス権限設定 ・バックアップ体制 | ★★ |
導入実績 | ・同業種での導入実績 ・ユーザーレビュー ・事例紹介の充実度 | ★ |
まとめ
運行管理システムは、運送業・物流業の課題解決に大きく貢献するツールです。GPS動態管理や配車計画支援、安全運転指導など多彩な機能により、業務効率化やコスト削減、安全性向上、法令遵守の強化などさまざまなメリットをもたらします。一方で、導入コストや業務変更の負担、ITリテラシーの問題といった注意点も理解しておく必要があります。
自社に最適なシステムを選ぶためには、まず自社の課題を明確にし、必要な機能を特定することが重要です。また、企業規模や予算に合ったシステムタイプを選択し、使いやすさやサポート体制、拡張性なども十分に検討しましょう。ぜひ、自社の状況に合った運行管理システムを導入し、業務の効率化と競争力強化につなげてください。
関連リンク:「脱Excel」に関する記事一覧
参考文献
https://blog.trck.jp/4407