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カンバン方式とは?トヨタ式生産管理の代名詞“必要なものを必要なだけ”の仕組み

生産・製造

カンバン方式とは?トヨタ式生産管理の代名詞“必要なものを必要なだけ”の仕組み

本記事では、カンバン方式の基本概念から具体的な運用方法、導入のメリット・デメリット、さらにはデジタル活用や他業種への応用事例まで、解説します。生産現場の改善を目指す方、トヨタ生産方式を自社に取り入れたい方にとって、実践的な知識とヒントが得られる内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。

カンバン方式の基本概念とトヨタ生産方式

カンバン方式は、トヨタ自動車が1960年代に確立した生産管理手法であり、トヨタ生産方式の中核を担う仕組みです。ここでは、カンバン方式の定義と、その背景にあるトヨタ生産方式の考え方を解説します。

カンバン方式とは何か

カンバン方式とは、「カンバン」と呼ばれるカードや表示板を使って、生産や運搬の指示を伝える仕組みです。この手法では、後工程が必要な部品や製品を前工程に引き取りに行き、その際に「カンバン」を使って必要な数量と品目を伝えます。これにより、作り過ぎや在庫の溜め込みを防ぎ、必要なものだけを必要なタイミングで生産する「ジャストインタイム(JIT)」を実現します。

カンバン方式は「スーパーマーケット方式」とも呼ばれます。スーパーマーケットでは、顧客が商品を購入した分だけ棚に補充されるように、製造現場でも後工程で消費した分だけ前工程で生産する仕組みになっています。この発想が、トヨタ生産方式の特徴である「プル型生産」の基盤となっています。

トヨタ生産方式の2本柱

トヨタ生産方式は、「ジャストインタイム」と「自働化(じどうか)」という2つの柱で構成されています。ジャストインタイムは、必要なものを必要なときに必要なだけ生産・供給する考え方で、カンバン方式はその実現手段です。一方、自働化とは、機械に異常検知機能を持たせ、問題が発生したら自動的に停止させることで、不良品の流出を防ぐ仕組みを指します。

この2つの柱により、トヨタ生産方式は在庫の削減、品質の向上、生産リードタイムの短縮を同時に達成しています。カンバン方式は、単なる在庫管理の手法ではなく、現場全体の改善活動と一体となって機能する点が重要です。

プル型生産とプッシュ型生産の違い

カンバン方式の特徴を理解するには、プル型生産とプッシュ型生産の違いを知ることが不可欠です。プッシュ型生産は、計画に基づいて前工程が部品を作り、後工程に送り込む方式です。一方、プル型生産は、後工程が必要なときに前工程から部品を引き取る方式で、カンバン方式はこのプル型を実現します。

下記は、プル型生産とプッシュ型生産の比較表になります。

項目プッシュ型生産プル型生産(カンバン方式)
生産の起点生産計画に基づく前工程後工程の実需
在庫の傾向在庫過多になりやすい最小限の在庫で運用
需要変動への対応計画変更が必要柔軟に対応しやすい
情報伝達上流から下流へ下流から上流へ(カンバン使用)

カンバン方式の仕組みと運用方法

カンバン方式の実際の運用では、「引き取りかんばん」と「仕掛けかんばん」という2種類のカードが中心的な役割を果たします。ここでは、カンバンの種類と役割、運用の流れを具体的に解説します。

カンバンの種類と役割

カンバン方式で使われる主なカンバンは、「引き取りかんばん」と「仕掛けかんばん」の2種類です。引き取りかんばんは、後工程が前工程から部品を引き取る際に使用し、品目・数量・納入先・納入時刻などが記載されています。一方、仕掛けかんばんは、前工程が生産を行う際の指示書として機能し、生産する品目・数量・使用する部品などが記載されています。

この2種類のカンバンを組み合わせることで、工程間の情報伝達が明確になり、過剰生産や在庫の溜め込みを防ぐことができます。カンバンは物理的なカードである場合が多いですが、電子カンバンやバーコードを使ったデジタル化も進んでいます。

カンバン方式の運用フロー

カンバン方式の基本的な運用フローは次のとおりです。まず、後工程の作業者が部品を使用し始めると、その部品に付いていた引き取りかんばんを外します。次に、作業者は引き取りかんばんを持って前工程の部品置き場に行き、必要な部品を引き取ります。この際、前工程の部品に付いていた仕掛けかんばんを外し、前工程の生産指示ポストに投入します。

前工程では、投入された仕掛けかんばんに基づいて生産を行い、完成した部品に再び仕掛けかんばんを付けて部品置き場に並べます。後工程が引き取りかんばんを持って来たら、その部品を渡し、引き取りかんばんを付け替えます。このサイクルが繰り返されることで、実需に基づいた生産と運搬が実現されます。

カンバン運用のルールと注意点

カンバン方式を効果的に機能させるには、いくつかの運用ルールを守る必要があります。第一に、後工程は前工程に引き取りに行く際、必ずカンバンを持参し、カンバンに記載された数量のみを引き取ります。第二に、前工程はカンバンで指示された順番・数量・タイミングでのみ生産を行い、勝手な判断で作りだめをしません。

また、不良品を後工程に流さないことも重要なルールです。前工程で異常や不良が発見された場合は、生産を停止し、原因を究明して再発防止策を講じます。これにより、品質の作り込みと問題の早期発見が可能になります。カンバン方式は単なる在庫管理ツールではなく、現場の規律と改善活動と一体で機能する仕組みなのです。カンバン運用ルールの要点は以下のとおりです。

  • 後工程は必ずカンバンを持参して引き取る
  • 前工程はカンバンの指示通りに生産する
  • 不良品は後工程に流さない
  • カンバンの枚数は最小限に抑える
  • 需要変動に応じてカンバン枚数を微調整する

カンバン方式導入のメリットとデメリット

カンバン方式は多くの企業に導入され、成果を上げていますが、万能な手法ではありません。ここでは、導入によって得られる具体的なメリットと、注意すべきデメリットを整理します。

在庫削減と現場の見える化

カンバン方式の最大のメリットは、在庫を最小限に抑えながら欠品を防ぐ運用が可能になることです。必要な分だけを生産するプル型の仕組みにより、過剰在庫や不要な仕掛品が削減され、キャッシュフローの改善や保管スペースの有効活用につながります。また、カンバンの流れを見ることで、どの工程でどれだけの部品が使われているかが一目で分かり、現場の状況が「見える化」されます。

この見える化により、ボトルネック工程や異常の早期発見が容易になり、迅速な対応が可能です。現場の作業者自身が問題に気づきやすくなるため、改善活動が活性化し、継続的な改善サイクルが回るようになります。

リードタイム短縮とムダの排除

カンバン方式では、工程間の在庫が減るため、製品が完成するまでのリードタイムが短縮されます。在庫の山に埋もれて部品が滞留することがなくなり、スムーズな流れ生産が実現します。また、作りすぎや運びすぎ、手待ちといったムダを排除することで、生産性が向上し、コスト削減にもつながります。

さらに、カンバン方式は現場の作業者に生産指示を直接伝える仕組みであるため、管理者の負担が軽減され、意思決定のスピードも速くなります。現場主導で改善活動が進むため、組織全体の柔軟性と対応力が高まります。

欠品リスクと柔軟性の課題

一方で、カンバン方式には注意すべきデメリットもあります。最小限の在庫で運用するため、需要の急増や供給の途絶が発生すると、欠品リスクが高まります。特に、部品の調達リードタイムが長い場合や、サプライヤーとの連携が不十分な場合は、生産ラインが停止する可能性があります。

また、品種や数量の変動が大きい製品には、カンバン方式の適用が難しいケースもあります。カンバンの枚数や運用ルールを頻繁に変更する必要が生じ、現場の混乱を招く恐れがあるためです。導入前には、自社の製品特性や需要変動パターンを十分に分析し、カンバン方式が適合するかを見極めることが重要です。

メリットデメリット
在庫削減とキャッシュフロー改善需要急増時の欠品リスク
現場の見える化と異常の早期発見品種変動が大きい製品には不向き
リードタイム短縮と生産性向上サプライヤーとの連携が不可欠
ムダの排除とコスト削減導入初期の現場教育が必要

カンバン方式の導入ステップと現場改善のポイント

カンバン方式を自社に導入する際には、段階的なアプローチと現場の協力が不可欠です。ここでは、導入の具体的なステップと、成功させるためのポイントを紹介します。

現状分析と対象工程の選定

カンバン方式の導入は、まず現状の生産フローと在庫状況を詳細に分析することから始まります。どの工程に在庫が溜まっているか、リードタイムが長い箇所はどこか、欠品や過剰生産が発生しているかを把握します。その上で、改善効果が大きく、比較的導入しやすい工程を選定し、パイロット導入を行います。

対象工程の選定では、工程間の距離が近く、需要変動が比較的安定している箇所から始めるのが効果的です。成功事例を積み重ねながら、徐々に適用範囲を拡大していくことで、現場の理解と協力を得やすくなります。

カンバンの設計と運用ルールの整備

次に、カンバンに記載する情報や枚数、運用ルールを設計します。カンバンには最低限、品目名・品番・数量・納入場所・納入時刻などを記載します。カンバンの枚数は、1日の使用量や補充リードタイムをもとに計算し、必要最小限に設定します。枚数が多すぎると在庫が増え、少なすぎると欠品リスクが高まるため、微調整が重要です。

運用ルールについては、前述の基本原則(後工程引き取り、カンバンなしで生産しない、不良品を流さないなど)を明文化し、現場の作業者全員に周知します。ルールが曖昧だと、カンバン方式の効果が発揮されないため、教育と訓練にも時間をかけます。

デジタルツールの活用と継続的改善

近年では、紙のカンバンに代わり、電子カンバンやバーコード、QRコードを活用するデジタル化が進んでいます。これにより、リアルタイムでの在庫把握や生産指示の自動化が可能になり、ヒューマンエラーの削減や業務効率化が実現します。製造実行システム(MES)や在庫管理システムと連携させることで、さらに高度な生産管理が可能です。

また、カンバン方式は一度導入して終わりではなく、継続的な改善が不可欠です。定期的にカンバン枚数や運用ルールを見直し、現場からのフィードバックを反映させることで、より精度の高い運用が実現します。現場の作業者が主体となって改善提案を行う文化を育てることが、長期的な成功につながります。カンバン運用における主な活動は以下のとおりです。

  • 現状分析と対象工程の選定を行う
  • カンバンの設計と運用ルールを明文化する
  • 現場教育と訓練を徹底する
  • デジタルツールを活用して業務効率化を図る
  • 定期的に運用を見直し、継続的に改善する

まとめ

カンバン方式は、トヨタ生産方式の中核を担う生産管理手法であり、”必要なものを必要なだけ”というジャストインタイムの理念を実現します。後工程が前工程から部品を引き取るプル型生産により、在庫削減、リードタイム短縮、現場の見える化といった多くのメリットが得られます。一方で、欠品リスクや需要変動への対応といった課題もあり、導入には現状分析や現場教育、継続的な改善が不可欠です。

自社の業務特性に合わせてカンバン方式を導入・応用することで、業務効率化や生産性向上を実現し、競争力の強化につなげることができます。本記事で紹介した仕組みや導入ステップを参考に、ぜひ現場改善の第一歩を踏み出してください。

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