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JIS規格にもとづく外観検査の照度とは?現場で使えるチェックポイント

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JIS規格にもとづく外観検査の照度とは?現場で使えるチェックポイント

製造業における外観検査の品質向上において、適切な照度設定は避けて通れない重要な要素です。しかし多くの現場では、労働安全衛生法の最低基準とJIS規格の推奨値の違いが曖昧であり、具体的な照度値や点検方法に関する明確な運用基準が不足しています。その結果、不良の見逃しやばらつきが発生し、検査品質の安定化に課題を抱えているのが現状です。本記事では、JIS規格に基づく外観検査の照度について、法令との違いを明確化し、現場で即実行できる具体的な設定・点検・運用方法を解説します。

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JIS規格と労働安全衛生法における照度基準の違いと位置づけ

外観検査の照度設定において、まず理解すべきは法令と規格の基本的な位置づけです。労働安全衛生法は法的拘束力を持つ最低基準を定めているのに対し、JIS規格は品質向上を目的とした推奨値を示しています。この違いを正確に把握することが、適切な照度設定の第一歩となります。

労働安全衛生法の照度基準とその背景

また、令和4年12月1日からの労働衛生基準の改正により、事務所での作業面の照度基準が変更され、従来の3区分から2区分に整理されました。改正後は、一般的な事務作業において300lx以上、付随的な事務作業については150lx以上の照度確保が求められています。付随的な事務作業とは、資料の袋詰めなど、文字を読み込んだり資料を識別したりする必要がある作業が含まれます。

さらに、この照度基準は、労働者の健康障害を防ぐために重要です。照度不足が原因で眼精疲労や不適切な姿勢を強いられ、上肢障害などが発生することがあります。特に、高年齢労働者が増加する中で、視力の矯正を促すことも重要となります。適切な照度の確保は、労働環境の改善に寄与し、健康障害の予防にも繋がります。

JIS規格(JISZ9110)の照度推奨値と品質向上への寄与

JISZ9110「照明基準総則」は、作業の種類と精密度に応じた推奨照度を体系化した規格です。この規格では、外観検査などの精密作業に対して750lxから1,500lxの照度範囲を推奨しており、作業内容や対象物の特性に応じてより具体的な値が設定されています。

JIS規格の照度値は法的拘束力は持たないものの、品質管理システムの要求事項や顧客監査における評価基準として位置づけられることが多く、実質的な業界標準として機能しています。特にIATF16949やISO9001などの品質マネジメントシステムにおいて、検査環境の管理要素として参照されるケースが増えています。

実務における両基準の使い分けと統合運用

現場での実際の運用では、労働安全衛生法の最低基準を確実に遵守した上で、JIS推奨値を上積みして設定するアプローチが最も現実的です。具体的には、作業エリア全体で300lx以上を確保し、検査作業面においては750~1,500lxを目標値として設定します。基準種別の運用方法は以下のように整理できます。

基準種別照度値法的位置づけ適用目的
労働安全衛生法300lx以上法的義務(最低基準)労働災害防止・健康確保
JIS Z9110750~1,500lx推奨値(任意基準)品質向上・検査精度向上
実務運用750~1,500lx両基準統合法令遵守+品質確保

外観検査に適した照度範囲と作業別の指針

外観検査における適切な照度設定は、検査対象物の特性、欠陥の種類、作業者の疲労軽減などを総合的に考慮して決定する必要があります。ここでは、実務で活用できる照度範囲と作業内容別の具体的な指針について詳しく解説します。

微小欠陥検出における照度要件と設定目安

微小な傷、へこみ、異物混入などを検出する精密外観検査では、1,000~1,500lxの高照度設定が効果的であり、均斉度0.7以上を確保することで見逃し率を大幅に削減できます。この照度レベルでは、0.1mm以下の微細な表面欠陥も明確に視認できるようになり、検査精度の向上が期待できます。

特に電子部品や精密機械部品の外観検査においては、表面の微細な変化を捉える必要があるため、高照度と均一性の両立が不可欠です。照明の配置は角度45度からの斜光照明と垂直照明の組み合わせが推奨され、影や反射による見落としを最小化できます。

色調・色検査における照度と色温度の最適化

塗装面の色ムラや印刷物の色調検査では、照度だけでなく色温度と演色評価数(Ra)の管理が重要になります。標準光源D65に近い6500Kの色温度と、Ra85以上の演色性を持つ照明を750~1,000lxで設定することで、正確な色の判別が可能となります。

色調検査では照度の安定性も重要な要素であり、±5%以内の照度変動に抑えることで、時間帯や経年変化による判定のばらつきを防止できます。LED照明を採用する場合は、調光機能付きの製品を選択し、定期的な照度測定によって設定値を維持することが推奨されます。

組立品・機械部品の外観検査における実用照度

自動車部品や家電製品などの組立品検査では、複雑な形状や材質の違いに対応した照明設計が必要です。基本照度として800~1,200lxを確保し、局部照明によって細部の検査精度を向上させるアプローチが効果的です。下のように照明の種類と照度を組み合わせることで、外観検査の効率を高めることができます。

  • 基本照明:800~1000lx(作業エリア全体の均一照明)
  • 局部照明:1200~1500lx(重要部位の集中照明)
  • 補助照明:300~500lx(影部分の補完照明)
  • 検査台照明:1000lx(検査作業面の直接照明)

現場で実践する照度測定・点検・改善の具体的手順

適切な照度設定を維持するためには、定期的な測定と点検、必要に応じた改善措置が不可欠です。ここでは、現場で即実行できる具体的な手順とチェックポイントを整理し、継続的な品質向上につながる運用方法を提示します。

照度計を使用した正確な測定手順と測定ポイント

照度測定は校正済みの照度計を使用し、検査作業面から30cm上方の位置で、作業者の手や身体が影を作らない状態で実施することが基本原則です。測定時間は各ポイント10秒以上の安定値を記録し、蛍光灯使用時は交流周波数の影響を避けるため最低30秒間の平均値を採用します。

測定ポイントの設定では、検査エリアを縦横に等分割し、最低9点(3×3グリッド)での測定を実施します。特に重要な検査作業については、作業範囲内で50cm間隔での詳細測定を行い、照度分布の把握と均斉度の算出を実施します。測定結果は測定日時、測定者、使用照度計の型番とともに記録し、トレーサビリティを確保します。

グレア防止と反射抑制のための環境改善手法

グレア(まぶしさ)は検査員の疲労増大と見落とし率上昇の主要因であり、適切な対策が必要です。直接グレアの防止には、照明器具の配置角度を作業者の視線から20度以上ずらし、ルーバーやディフューザーによる光源の拡散を行います。

反射グレアの抑制には、検査対象物の表面特性に応じた照明角度の調整と、背景面の反射率制御(10~20%程度のマット仕上げ)が効果的です。金属部品や光沢面の検査では、偏光フィルターの使用や円偏光照明の採用により、表面反射を大幅に軽減できます。作業台の色調は中性グレー(N6~N7)を選択し、検査対象物とのコントラストを適切に保ちましょう。

定期点検スケジュールと改善アクションの標準化

照明環境の維持には計画的な点検と迅速な改善措置が重要です。日常点検では作業開始時の目視確認を実施し、照明器具の点灯状態、異常音、フリッカーの有無をチェックします。週次点検では照度計による主要ポイントの測定を行い、設定値からの乖離を監視します。以下は、照明設備の点検スケジュールと改善アクションを標準化した例になります。

点検頻度点検内容判定基準改善アクション
毎日目視点検・点灯確認全照明正常点灯不点灯器具の交換
毎週主要ポイント照度測定設定値±10%以内清掃・調光調整
毎月詳細照度分布測定均斉度0.7以上器具位置調整・増設
半年演色性・色温度測定Ra85以上・色温度±300K光源交換・器具更新

演色性・色温度・均斉度による検査環境の最適化

照度だけでなく、光の質を決定する演色性、色温度、均斉度の最適化は、外観検査の精度と安定性に大きく影響します。これらの要素を統合的に管理することで、見逃し率の低減と検査員の作業負担軽減を同時に実現できます。

演色評価数(Ra)の管理と色判別精度への影響

外観検査における色調判定では、演色評価数Ra85以上の照明を使用することで、自然光下での見え方に近い正確な色判別が可能となり、色ムラや色差の検出精度が大幅に向上します。特に塗装品質の検査や印刷物の色調管理では、Ra90以上の高演色照明の採用により、微細な色調変化も確実に検出できるようになります。

LED照明を使用する場合は、演色評価数の経年変化にも注意が必要です。使用開始から6ヶ月後、その後は年2回の演色性測定を実施し、基準値を下回った場合は速やかに交換しましょう。また、異なるメーカーや型番の照明器具を混用する場合は、演色評価数のばらつきが色判別に影響するため、同一仕様での統一が推奨されます。

色温度5000Kを基準とした標準光源環境の構築

JIS規格では検査用標準光源として6500K(D65)を推奨していますが、実用的な観点から5000Kの色温度設定が広く採用されています。この色温度は昼光に近い白色光であり、多くの色調において自然な見え方を提供します。

色温度の管理では±300K以内の精度を維持することが重要であり、定期的な色温度測定により設定値からの乖離を監視し、必要に応じて照明器具の調整や交換を実施します。混合光源を使用する場合は、主照明と補助照明の色温度差を200K以内に抑えることで、色判別の精度低下を防止できます。

均斉度0.7以上確保による検査品質の安定化

照度の均斉度は検査エリア内での照度分布の均一性を示す指標であり、0.7以上を確保することで検査位置による判定のばらつきを効果的に抑制できます。均斉度の算出は、測定エリア内の最小照度を平均照度で除した値であり、1.0に近いほど均一な照明環境を示します。以下に、均斉度の評価基準を示します。

  • 均斉度0.8以上:理想的な均一照明(高精度検査推奨)
  • 均斉度0.7~0.8:良好な照明環境(一般的な外観検査適用可能)
  • 均斉度0.6~0.7:改善要検討(局部的な照度不足の可能性)
  • 均斉度0.6未満:改善必須(照明配置の見直しが必要)

まとめ

JIS規格に基づく外観検査の照度管理は、労働安全衛生法の最低基準300lx以上を確保した上で、検査精度向上を目的としたJIS推奨の750~1,500lxを実用レンジとして設定することが基本となります。法的義務である労働安全衛生法基準の遵守と、品質向上を目指すJIS推奨値の統合運用により、コンプライアンスと検査品質の両立が可能です。

現場での実践では、照度だけでなく演色評価数Ra85以上、色温度5000K±300K、均斉度0.7以上を統合的に管理することで、見逃し率の低減と検査の安定性向上を実現できます。定期的な測定点検と改善アクションの標準化により、適切な照明環境を継続的に維持し、製品品質の向上と作業者の負担軽減を同時に達成することが可能となります。

これらの取り組みを通じて、自社の外観検査工程における照度環境を最適化し、顧客要求や品質監査に対応できる管理体制を構築していくことが、競争力向上につながるでしょう。

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参考文献
https://www.visualinspection-eqp.com/manual/brightness.html

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