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エンドミルとは?使い方、種類・選び方を詳しく解説

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エンドミルとは?使い方、種類・選び方を詳しく解説

製造現場において、高精度な部品加工を実現するためには、適切な切削工具の選定が不可欠です。CNCフライス盤で最も汎用性が高く、複雑形状や精密部品の加工に広く使われているのがエンドミルです。エンドミルは側面と底面の両方で切削できるため、溝加工や輪郭加工、穴あけ、面取りなど多様な加工に対応できます。しかし、その種類は多岐にわたり、加工目的や素材、仕上げ品質に応じた適切な選定が求められます。本記事では、エンドミルの基本構造から主要な種類、用途別の選び方、実践的な使い方まで解説し、製造現場における最適な工具選定と加工品質の向上を支援します。

エンドミルの基礎知識

エンドミルは、CNCフライス盤やマシニングセンタで使用される回転切削工具であり、工作物の側面や底面を削り取ることで所定の形状を創成します。ドリルが主に穴あけに特化しているのに対し、エンドミルは多方向からの切削が可能なため、より複雑な加工に対応できます。製造業の現場では、金型加工から精密部品の仕上げまで幅広い用途で活用されています。

エンドミルの定義と役割

エンドミルとは、円筒形状の工具本体に複数の切れ刃を持ち、回転しながら被削材を切削する工具です。工具の側面に配置された切れ刃で横方向の削り、底面の切れ刃で下方向の削りを同時に行うことができるため、一本の工具で多様な加工形状を実現できます。この特性により、溝加工や段差加工、ポケット加工、輪郭加工など、製造現場で求められる多くの加工ニーズに応えることが可能です。

エンドミルの役割は、単なる切削だけでなく、加工精度と表面品質の確保にあります。適切に選定されたエンドミルは、加工時間の短縮と工具寿命の延長を両立させ、製造コストの削減に貢献します。また、高硬度材料や難削材の加工においても、コーティングや材質の工夫により優れた切削性能を発揮します。

エンドミルの基本構造

エンドミルは、シャンク(柄)・ネック・切れ刃部(外周刃と底刃)で構成されます。シャンクは工具ホルダに固定される部分で、真円度や表面粗さが振れ精度に直結します。刃部とシャンクのつなぎ目で刃径より細く設計された部分をネックと呼び、深い溝や立壁の加工時に干渉を避けるためにロングネックやテーパネックが用いられることがあります。

切れ刃部は、側面に螺旋状に配置された外周刃と、先端で下向き切削を担う底刃からなります。外周刃の螺旋角(ねじれ角)は切削抵抗や切りくず排出性に影響し、刃数は2枚から多刃まで多様です。一般に刃数が増えると送り速度や仕上げ性は向上しますが、切りくずポケットが小さくなり、排出余裕は減ります。なお、用途に応じて刃先形状はスクエア・ボール・ラジアス、傾斜壁面にはテーパエンドミルが選択されます。

エンドミルと他の切削工具との違い

エンドミルとドリルの最も大きな違いは、切削方向の自由度です。ドリルは主に工具の軸方向(下方向)への穴あけに特化しているのに対し、エンドミルは軸方向だけでなく横方向への切削も可能です。この多方向切削能力により、エンドミルは複雑な三次元形状の加工や、輪郭に沿った切削が可能になります。

フェースミルとの違いは、主な切削方向と加工対象にあります。フェースミルは主に平面加工に特化しており、大きな底面刃で広い面積を効率的に削ります。一方、エンドミルは側面切削を主体とし、溝や段差、複雑な輪郭形状の加工に適しています。また、エンドミルの方がツール径が小さいため、細かい形状や狭い箇所の加工に向いています。

下記の比較表も合わせて参考にしてください。

工具種類主な切削方向主な用途特徴
エンドミル側面・底面溝加工、
輪郭加工、
ポケット加工
多方向切削が可能で汎用性が高い
ドリル軸方向(下方向)穴あけ深穴加工に優れる
フェースミル底面平面加工、
広い面の仕上げ
大面積を効率的に加工
リーマ軸方向穴の高精度仕上げ高い寸法精度と表面品質

エンドミルの種類と特徴

エンドミルには加工目的や対象素材、求める仕上げ品質に応じて多様な種類が存在します。それぞれの種類は切れ刃の形状や配置、刃数、材質などが異なり、特定の加工条件で最適な性能を発揮するように設計されています。適切な種類を選定することで、加工効率と品質を大幅に向上させることができます。

スクエアエンドミル(平エンドミル)

スクエアエンドミルは最も一般的なエンドミルで、底面が平坦な形状をしています。溝加工やポケット加工、段差加工など、直角な面が必要な加工に適しており、製造現場で最も使用頻度が高いタイプです。切れ刃が工具の外周と底面に配置されているため、側面切削と底面切削の両方に対応できます。

スクエアエンドミルは刃数によって2枚刃、3枚刃、4枚刃、多刃仕様などに分類されます。2枚刃は切りくずポケットが大きく、アルミニウムなど軟質材料や切りくずの排出性が重要な加工に適しています。4枚刃以上は送り速度を上げられるため、鋼材など硬質材料の効率的な加工に向いています。

ボールエンドミル

ボールエンドミルは工具先端が半球状になっており、曲面加工や3次元形状の創成に特化したエンドミルです。金型の曲面仕上げや複雑な立体形状の加工に欠かせない工具で、CAM(コンピュータ支援製造)と組み合わせて使用されることが一般的です。

ボールエンドミルの特徴は、あらゆる角度からの切削が可能な点にあります。これにより滑らかな曲面を創成できますが、工具中心部では切削速度がゼロに近づくため、中心切れ刃の設計が加工性能に大きく影響します。特に仕上げ加工では小径のボールエンドミルを使用し、細かいピッチで走査することで高い表面品質を実現します。

ラジアスエンドミル(コーナーラウンディングエンドミル)

ラジアスエンドミルは工具のコーナー部に丸みを持たせた形状で、スクエアエンドミルとボールエンドミルの中間的な特性を持ちます。コーナー部の応力集中を軽減できるため、工具寿命が長く、高速加工や高硬度材料の加工に適しています。

加工される製品側でも、コーナー部に適度なRがつくことで応力集中を防ぎ、製品強度の向上に寄与します。また、スクエアエンドミルに比べて欠けにくく、安定した加工が可能です。コーナーRの寸法は0.5mmから数mmまでさまざまな規格があり、加工対象や要求精度に応じて選定します。

荒加工用エンドミル(ラフィングエンドミル)

ラフィングエンドミルは、外周刃が細かな波形(セレーション)や不等分割・不等リードを採用した荒加工専用工具です。波状刃により切りくずが自動的に分断され、刃当たりの接触距離が短くなるため、切削抵抗とびびりを抑えつつ大きな切込み・高送りで安定加工ができます。切削油は波谷部から浸透しやすく、冷却・潤滑性の向上にもつながります。母材は超硬またはハイスが一般的で、超硬+コーティングは耐摩耗性に優れた高能率粗削りに、ハイスは靭性を生かした一般鋼・非鉄の荒取りに適しています。

一方で、表面粗さは粗くなりやすく、最終公差や仕上げ面が要求される箇所には不向きです。工程設計では、ラフィングで体積除去を優先し、その後にスクエア/ボール/ラジアス等の仕上げ用エンドミルで寸法精度と面品位を確保します。また、再研磨により継続使用できる場合がありますが、波形プロファイルや刃径・のど厚の保持など条件に制約があるため、工具状態と加工要求に応じて可否を判断します。

特殊形状エンドミル

製造現場では標準形状だけでなく、特定の加工目的に特化した特殊形状エンドミルも使用されます。Vビットエンドミルは先端が円錐形状で、面取りや彫刻、V溝加工に使用されます。ダブテールエンドミルはアリ溝加工など、特殊な形状の溝を加工する際に用いられます。

また、T溝加工用エンドミルや段付きエンドミルなど、機械のテーブル溝や特殊な段差形状を一工程で加工できる工具もあります。これらの特殊形状エンドミルを活用することで、工程集約や段取り時間の削減が可能になり、生産効率の向上にもつながります。

それぞれの特徴は下記のとおりです。

  • Vビットエンドミル:面取り、彫刻、V溝加工
  • ダブテールエンドミル:アリ溝など台形溝の加工
  • T溝エンドミル:機械テーブルのT溝加工
  • 段付きエンドミル:異なる径の段差を一工程で加工
  • 溝入れエンドミル:狭い溝の高精度加工

エンドミルの選び方

最適なエンドミルを選定するには、加工対象の素材、加工形状、求める精度と表面品質、使用する機械の性能など、複数の要素を総合的に考慮する必要があります。適切な選定により、加工品質の向上と工具寿命の延長、加工時間の短縮を同時に実現できます。ここでは実践的な選定基準を解説します。

被削材による選定

被削材の種類によって、エンドミルの材質やコーティング、切れ刃の形状を選定する必要があります。鋼材やステンレス鋼などの硬質材料には超硬合金製のエンドミルにTiAlNなどの硬質コーティングを施したものが適しており、高い耐摩耗性と耐熱性が求められます。刃数は4枚刃以上の多刃タイプを選ぶことで、切削抵抗を分散させ安定した加工が可能です。

アルミニウムや銅などの軟質材料には、切りくずの排出性を重視した2枚刃または3枚刃のエンドミルが適しています。大きな切りくずポケットにより切りくずの詰まりを防ぎ、溶着を抑制します。また、ねじれ角が大きい急傾斜タイプを選ぶことで、切削抵抗を軽減し加工面の品質を向上させることができます。

加工目的による選定

加工目的によって最適なエンドミルの種類は異なります。溝加工やポケット加工にはスクエアエンドミルが基本となりますが、荒加工段階では荒加工用エンドミルで大きく削り、仕上げ加工で精度を出す二段階のアプローチが効率的です。輪郭加工では加工経路に応じて適切なコーナーRを持つエンドミルを選定します。

曲面加工や3次元形状の創成にはボールエンドミルが必須となります。荒加工では大径のボールエンドミル、中仕上げでは中径、最終仕上げでは小径と、段階的に工具径を小さくすることで効率と品質を両立させます。面取りやバリ取りにはVビットエンドミルやコーナーラウンディングエンドミルを用い、製品品質の向上と後工程の削減を図ります。

工具径と刃長の選定

工具径は加工する形状の最小内部Rや溝幅によって決まります。一般的に、工具径は加工対象の最小内部Rよりも小さい必要があります。ただし、工具径が小さすぎると剛性が低下し、びびり振動や折損のリスクが高まるため、加工可能な範囲で大きめの径を選ぶことが望ましいです。

刃長(切れ刃の長さ)は加工深さに応じて選定しますが、必要以上に長い刃長は工具剛性を低下させ、精度悪化や振動の原因となります。基本的には加工深さの1.5倍程度を目安とし、深い溝加工では段階的に深さを増やすヘリカル加工などの工法を併用します。突き出し長さも短く保つことで、加工精度と安定性が向上します。

コーティングと材質の選定

エンドミルの基材は高速度鋼(HSS)と超硬合金が主流です。高速度鋼は靭性が高く欠けにくいため、低速加工や断続切削に適していますが、硬度と耐熱性では超硬合金に劣ります。超硬合金は高硬度で耐摩耗性に優れ、高速加工や硬質材料の加工に適しており、現代の製造現場では主流となっています。

コーティングは工具表面に硬質皮膜を形成することで、耐摩耗性と耐熱性を向上させます。TiNコーティングは汎用的で多くの材料に対応し、TiAlNコーティングは高硬度材料や高速加工に優れた性能を発揮します。ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングはアルミニウムなど非鉄金属の加工で溶着を防ぎ、優れた表面品質を実現します。加工対象と条件に応じて最適なコーティングを選定することが重要です。

被削材による推奨材質と推奨コーティングは、下記のとおりです。

被削材推奨材質推奨コーティング推奨刃数
一般鋼材超硬合金TiAlN、TiCN4枚刃
ステンレス鋼超硬合金TiAlN4枚刃
アルミニウム超硬合金DLC、無コーティング2~3枚刃
高硬度鋼超硬合金TiAlN、AlCrN4枚刃以上
樹脂材料超硬合金無コーティング2~3枚刃

まとめ

エンドミルは製造現場において最も汎用性が高く、多様な加工に対応できる切削工具です。側面と底面の両方で切削できる特性により、溝加工から複雑な三次元形状の創成まで幅広い用途に活用されています。適切なエンドミルを選定し正しく使用することで、加工品質の向上と生産効率の最大化を実現できます。

選定においては被削材の種類、加工目的、求める精度と表面品質、機械の性能などを総合的に考慮することが重要です。スクエアエンドミル、ボールエンドミル、荒加工用エンドミルなど、用途に応じた種類を使い分け、工具径や刃長、コーティングを適切に選ぶことで最適な加工条件を実現できます。

本記事で解説した知識を活用し、製造現場における加工品質と生産性の向上を実現しましょう。

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