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ものづくりDX推進コンサルの現場から【第8回】DX推進のための業務改革とは?

【連載】ものづくりDX推進コンサルの現場から

生産・製造

ものづくりDX推進コンサルの現場から【第8回】DX推進のための業務改革とは?

今回は、DX推進における業務改革において重要なことは何かについて、読者の皆さんと一緒に考えてみましょう。

今回は、DX推進における業務改革において重要なことは何かについて、読者の皆さんと一緒に考えてみましょう。
(執筆:高安篤史/合同会社コンサランス代表 中小企業診断士)

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自らを否定してみよう

私はDXについて相談してきてくださる方々に対し、「従来の業務のやり方を否定することから出発することが良い」という話をよくします。

DXによって、いろいろなものが変わることが必要との前提で考えていても、いざ今まで慣れ親しんだ業務のやり方を他人から否定されることは、やはり耐えがたい部分があると思います。しかし業務改革を成し遂げるためには、全ての担当者は何とか奮起して、従来の業務のやり方を自ら否定してみるべきではないのかと私は思うのです。

標準化はしてきたはずなのに――日本独自の仕事の在り方の問題

日本においては、業務の進め方が独自の方法になっており、そこにこそ価値があると誤解している企業や担当者が多数います。この独自な方法に固執することで、価値どころか、長期的に見るとそれが大きな負の財産になっているかもしれません。以降では、「なぜ独自の方法が負の遺産になってしまうのか」考えてみましょう。

業務改革を語る上には、まず“標準化の重要性”について説明しなければなりません。「“標準化の重要性”なんて分かっているよ!」との言葉が返ってきそうなのですが、日本はこの標準化の取り組みが遅れていることで、未曽有の危機を迎えていると言わざるを得ません。

標準化は従来から重要であったことは言うまでもないのですが、IoT(Internet of Things)によるつながる世界では、ネットワークの標準化、データの互換性がさらに重要になりました。ドイツでは、この標準化を第一優先に考え、「中小の製造業も含め、国全体を1つの工場とする取り組み」である「インダストリー4.0」が推進されています。通常、欧米の戦略は、自社において価値があり競争力につながる業務はほんの一握りという認識であり、ほぼ全ての業務は標準化へ進むことになります。

一方、日本では、国全体のDXの推進において、“標準化は二の次”とされてします傾向があります。思惑が異なる企業同士が業界団体の中で標準化を前提にしてしまうと、業界団体自体の存続ができない状況に落ち込むと考えるからです。

それでは、なぜ、この標準化が日本では遅れており、DXのボトルネックになっているのでしょうか?それは、下記の2つが主な理由です。

【理由その1】マニュアルに関する考え方

そもそも日本は、同じような価値観を持ち、非常に柔軟性が高く、知識レベルも高度な人材が同じ企業に継続的に勤めるという背景があります。そのため詳細な標準化を前提にしなくても、すりあわせながら業務を進めることができました。

私が、電気メーカーに就職し、制御ソフトウェアの開発部門に配属された際に、その当時の課長から言われたことは、「先輩のスキルを盗め」という指導でした。今でも、「マニュアル型人間になるな!」「先輩の背中を見て育つことは考える人材が育つ」ということを言う人に出会うこともあります。

「日本においてもマニュアルはしっかり存在する」と言われる方も多いかもしれませんが、海外ではいろいろなバックグラウンドを持った多様な人が同じ業務をやる上では、誤解がない標準的な仕事のやり方をマニュアルでまとめています。アジアでも日本以外の国では、このマニュアルや標準化が重要視されています。一方、諸外国の製造業の担当者からは、日本の業務マニュアルを見ても「全く意味が分からない」という意見が多数出てきます。

もう1つの背景には、日本語の文書の曖昧さがあります。日本では「行間を読め」などという教育がされていますが、日本の外ではその常識が通じづらいことが多いです。

【理由その2】競合する企業の数

日本では国内の市場が大きく、国内のどの業界もほぼ3つ以上の企業がライバル関係になっています。そのため1つの企業の方式に合わすと他の2つの企業が反対することで標準化が進まないのです。前述のドイツでは、国内の市場は日本に比べて小さく、市場はヨーロッパ全体であり、国内では各業界で主要な企業が1つ突出しています。これらの企業が政府主導の下、標準化を第一優先で考えることはDXにおいて合理的な推進方法です。

標準化の遅れが招く致命的な問題と負の遺産

この日本の標準化の遅れにより、下記の致命的な問題が発生しています。

  • 設備やシステムをつなげようと思っても、互換性が無く接続できない
  • 企業が連携(含む企業合併)して対応しようと思っても業務の進め方が異なり、効率が悪くなる
  • 同じ企業の中でも、事業部/工場/部門が異なると業務のやり方が異なる
  • データを利用しようと思っても、フォーマットが異なり活用することができない
  • 標準化が前提では無いため、属人化やノウハウが暗黙知化され、技術伝承が進まない
  • 新規に担当者が配属(含む中途採用)されても、特殊な業務が多く、短期間では立ち上がらない
  • 新入社員も学生時代に学習したことが生かせず、就職後改めて企業の教育を受ける
  • 学校教育が即戦力につながらないため、学校では実践的な学習では無く、知識習得/試験で点数をとること、無難に卒業することが重要視される。
  • ITシステムの負の資産により、新規のIT投資が進まない

ここまでのお話で、「日本の企業では標準化が遅れている」ということについてご理解いただけたのではないかと思います。自分たち独自の業務の進め方の大半に価値があると誤解し、そのやり方を信じて進み続けることで、「負の遺産」を作ってしまうのです。DX推進における業務改革とは、まさにそこに切り込んでいくということになります。

いよいよ最終回となる次回は、「負のIT遺産」について詳しく説明しつつ、DXにおけるITシステムのあるべき姿について考えていきたいと思います。

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執筆者プロフィール

合同会社コンサランス 代表/中小企業診断士。
https://www.consulance.jp/

早稲田大学理工学部工業経営学科(プラントエンジニアリング/工場計画専攻)卒業後、大手電機メーカーで20年以上に渡って組込みソフトウェア開発に携わり、プロジェクトマネージャ/ファームウェア開発部長を歴任する。DFSS(Design for Six Sigma:シックスシグマ設計)に代表される信頼性管理技術/プロジェクトマネジメントやIoT/RPAやDXのビジネスモデル構築に関するコンサルタントとしての実績 及び 自身の経験から「真に現場で活躍できる人材」の育成に大きなこだわりを持ち、その実践的な手法は各方面より高い評価を得ている。

IPA(情報処理推進機構)SEC Journal掲載論文(FSSによる組込みソフトウェアの品質改善 IPA SEC journal25号)を始め、執筆論文も多数あり。 2012年8月 合同会社コンサランスの代表に就任。

  • 中小企業診断士(経済産業大臣登録):神奈川県中小企業診断協会 所属
  • 情報処理技術者(プロジェクトマネージャ、応用情報技術者、セキュリティマネジメント)
  • IoT検定制度委員会メンバー (委員会主査)

■書籍

  • 2019年に書籍『知識ゼロからのIoT入門』が発売
  • 2020年に共同執筆した「工場・製造プロセスへのIoT・AI導入と活用の仕方」が発刊
  • 2021年10月に創元社より、やさしく知りたい先端科学シリーズ9として、書籍「IoT モノのインターネット (モノ・コト・ヒトがつながる社会、スマートライフ、DX推進に活用中)」が発売
  • 日刊工業新聞社「工場管理」 2021年10月臨時増刊号「ゼロから始めるモノづくりDX」で執筆
  • 2022年4月に共同執筆した書籍(プラントのDX化による生産性の向上、保全の高度化)が発刊

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