IoTやAIをはじめとしたデジタル技術の発展に伴い、これらの活用基盤となるデータの重要性が注目されつつあります。日頃の業務において、文書や画像などのデータを扱うことは多いものの、いわゆるビッグデータについてはその全体像や管理・活用方法をイメージしきれない方も少なくないのでしょう。
多種多様かつ大量のデータの集まりであるビッグデータの活用には、それ相応の仕組みとシステムが求められます。そこで本記事ではこのようなデータマネジメントの基盤をなすデータクラウドについて、概要やメリット、導入の注意点を解説していきます。
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データクラウドとは?
データクラウドは、膨大なデータの効率的な管理や分析、活用を目的としたクラウドサービス、あるいはプラットフォームを指します。
そもそもクラウドコンピューティング(単にクラウドとも)は総務省によれば、「共用の構成可能なコンピューティングリソース(ネットワーク、サーバ、ストレージ、アプリケーション、サービス)の集積に、どこからでも、簡便に、必要に応じて、ネットワーク経由でアクセスすることを可能とするモデル」とされています。インターネット環境があればどこからでもアクセスできるクラウドにデータマネジメントの機能が加わることで、社内のあらゆるデータをスムーズに活用できる仕組みを構築するのがデータクラウドです。
参考:総務省 クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン(第3版)
データクラウドの主な機能
具体的に、データクラウドはどのような機能を備えているのでしょうか。細かい部分はプラットフォームによって異なりますが、その一部を紹介します。
データの保管と共有
最も基本的な機能としては、データの保管と共有があげられます。クラウドサービスとして大量のデータをネットワーク上に保管でき、社内各所や複数拠点間でリアルタイムに共有可能です。
企業内のデータは日々蓄積されるため、それを保管する領域も状況に応じて拡張しなければなりません。データクラウドはクラウド仕組みを活かし、柔軟に保管領域を増減できるといった特徴があります。
データの分析・利活用
データの分析と一口に言っても、データの種類により必要な処理は異なります。データ分析において問題になるのは、構造化データ(共通した構造を持ち、同一のルールの元で扱えるデータ)、非構造化データ(事前の整形やルール化が行われていないデータ)これらの中間にあたる「半構造化データ」の3つの種別です。このうち非構造化データと半構造化データの分析に際してはデータ整形などの処理が必要となるため、対応する分析ツールが少ない傾向にあるのですが、データクラウドはこれらも含めて分析活用できる機能を持ちます。
組織同士のコラボレーション
データクラウドで連携できるのは社内だけではありません。グループ企業や、サプライチェーン上の取引先企業など、複数者でデータを共有できる仕組みを構築し、企業同士の連携やデータ共有をより強化にする機能も備えています。
また、サービスベンダーによっては自社のデータを第三者企業と売買できる仕組みを持つ場合があります。他社の持つデータを購入し自社のビジネスに活用する、あるいは自社のデータを販売する形で、データを文字通りの資産として活用することも可能です。
データクラウドで保存・管理するメリット
それではデータクラウドを利用することで得られるメリットのうち、代表的なものを4つ紹介します。
データマネジメント基盤の構築
データクラウドの導入により、データの保管や共有だけでなく、データを業務改善や経営判断へとスムーズに活用するデータマネジメントの基盤を構築できます。保管したデータを処理・分析し、実際の業務へと活かすためには、必要なデータを素早く抽出、加工、分析できる状態でなければなりません。このような機能を備えたシステムをデータウェアハウス(DWH)と呼びますが、データクラウドの多くはDWHとしての機能を持つため、データを目的に応じて抽出し、分析するまでの一連のプロセスを完結できます。
全社のデータを一元管理しつつも、必要なデータのみを取り出して活用できるため、多くの企業で課題になっているデータのサイロ化、すなわち部門毎にデータが断絶し、全社的な活用が難しくなっている状態の解消にも直結するプラットフォームです。
データ利活用の促進
データクラウドは分析や活用に役立つ機能を備えており、具体的にはデータを分析・可視化するBIツールとしての機能や、AI分析ツールとしての役割を果たします。ビッグデータであっても素早くかつ正確に処理できるため、企業のデータ利活用には欠かせません。
需要予測や在庫管理、設備保全、経営判断などデータ利活用のユースケースは多岐に渡りますが、そのあらゆる目的おいて活用できる機能性と連携性を備えているのがデータクラウドです。
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高い連携性・拡張性
組織全体として長期的にデータを活用していくためには、周辺システムと連携しデータを収集する連携性や、データの増加や企業の成長に応じた拡張性も求められます。データクラウドはそのいずれにも優れており、既存のシステムや設備と連携し膨大なデータを自動的に蓄積、活用できる、必要に応じて機能を素早く強化できるといったメリットがあります。
セキュリティの向上
データクラウドのサービスベンダーは高度なセキュリティ対策を施しているため、企業独自でデータを保管するのに対してセキュリティ面でも優れている場合が少なくありません。自社で同等のセキュリティ対策も実施するには、インフラとソフトウェアに精通した人員と一定のコストが必要となります。
また、グループ企業や関連企業との間でデータを連携する場合、セキュリティ対策が不十分な関連企業へのサイバー攻撃を足がかりに本体の企業に忍び込む「サプライチェーン攻撃」が懸念されます。データクラウドを通じて他企業とコラボレーションすることで、連携先のセキュリティ水準を引き上げ、結果としてセキュリティリスクを抑えられる場合もあるでしょう。
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データクラウド導入における注意点
メリットの多いデータクラウドですが、導入においては注意すべきポイントもあります。以下、主な注意点についても知っておきましょう。
コスト管理に注意が必要
データクラウドは、使用したリソースに応じて費用が決定する従量課金性であることが一般的です。都度リソースを増減しやすいメリットがありますが、運用方法を誤ると、予想外に大量のリソースを使用し、高額な料金が発生してしまうリスクがあります。
よくあるトラブルとして、設定やデータの処理方法に誤りがあり、実際には使用していないのに「無駄なリソースを使用している」状態が生まれ、料金が積み上がってしまう…といったケースが見られます。
そのためコスト管理は細心の注意が求められますが、想定していた予算を超えずに運用するためには、サービスベンダーが提供するリソースやコスト管理ツールを活用し、使用状況を定期的にモニタリングすることが重要です。
データ移行の手間がかかる
既存の仕組みからデータクラウドへの移行は、時間と労力に加え高い専門性を求められる作業です。自社サーバーに保有する大量のデータをデータクラウドへと移行する場合に懸念されるのが、業務の停止やデータの損失ですが、これらの影響を最小限に抑えるためには綿密な計画が必要となります。
デジタル面の知識だけでなく、プラットフォームそのものに対する習熟度も重要となりますので、基本的には自社だけで完結することは難しく、サービスベンダーや、ベンダーの認定を受けたパートナー企業と共同で進めるプロジェクトであると認識しておきましょう。
運用管理が複雑になる
データクラウド自体は豊富な機能を備えているものの、運用管理の視点では業務が複雑になる可能性も捨てきれません。クラウドは柔軟性や拡張性に優れる一方、システム構成が複雑になりやすいとも言えます。
あるいは従来の仕組みに慣れた各部門の従業員にとっては、新たに導入されたデータクラウドの操作に慣れず、使いこなすまでに時間を要する可能性もあります。運用の難しさからデータクラウドが利用されないといった状態にならぬよう、マニュアルや社内ヘルプデスクの整備、継続的な教育は必須であると考えておきましょう。
データクラウド「Snowflake」の紹介
以上のようにデータクラウドは、企業のデータ利活用において必須となる基盤としての機能に加え、データを分析するツールとしての機能、他企業と連携するハブとしての機能も兼ね備えたプラットフォームです。
データクラウドのベンダーはいくつかありますが、最後にその中でも注目を集めているデータクラウド「Snowflake」について紹介します。
Snowflakeはデータの格納や処理、分析をスムーズに行えるよう設計されており、社内データを自社サーバーや他のクラウドツールから集約し、BiツールやAIによる分析、そして業務最適化へと繋げる一連の機能を兼ね備えています。外部企業とデータを売買できるマーケットプレイスの仕組みも保有しており、自社データの利活用にはもちろん、外部データを組み合わせた自社サービスの革新や経営戦略など、データドリブン経営には欠かせない機能を備えています。