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在留資格認定証明書の概要
ここでは、外国人が日本に中長期滞在する際に必要となる「在留資格認定証明書」について解説します。
在留資格認定証明書とは
在留資格認定証明書は、外国人が日本に中長期滞在するために必要な在留資格を取得する際の事前審査証明書です。日本の出入国在留管理庁が発行するこの証明書は、外国人本人が在外日本大使館・領事館でビザ(査証)を申請する際に提出することで、ビザ発給手続きを大幅に簡素化・迅速化することができます。
COEの最大の特徴は、外国人が来日する前に日本国内で在留資格の要件を満たしているかを審査する点にあります。これにより、企業は採用した外国人材が確実に入国できるかどうかを事前に確認でき、外国人本人も安心して来日準備を進めることができます。
在留資格認定証明書の役割と意義
在留資格認定証明書は、外国人が日本に入国するための「事前審査パス」として機能します。通常、外国人が日本に入国する際には、在外公館(大使館・領事館)でビザ申請を行い、在留資格の要件を満たしているかの審査を受ける必要があります。しかし、在外公館では日本国内の受入企業の状況や雇用条件を詳細に確認することが困難なため、審査に時間がかかったり、不許可となるリスクが高まります。
COEを事前に取得しておくことで、日本の出入国在留管理庁が既に在留資格の要件を審査済みであることが証明されるため、在外公館でのビザ発給手続きは原則として形式的な確認のみとなり、数日から1週間程度で完了します。これにより、企業は外国人材の入社時期を正確に見積もることができ、採用計画を円滑に進めることが可能になります。
対象となる在留資格と除外されるケース
在留資格認定証明書の交付申請が可能な在留資格は、中長期滞在を前提とした就労系・身分系の在留資格に限定されています。具体的には、「技術・人文知識・国際業務」「技能」「企業内転勤」「高度専門職」「経営・管理」などの就労系在留資格や、「家族滞在」「留学」などが対象となります。
一方で、以下のケースはCOEの交付対象外となります。まず、「短期滞在」の在留資格は、観光や短期商用などで90日以内の滞在を想定しているため、COEの申請は不要です。また、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」といった身分系在留資格を既に持っている外国人が再入国する場合も、COEは必要ありません。さらに、既に日本国内に在留している外国人が在留資格を変更する場合は、COEではなく「在留資格変更許可申請」の手続きを行います。下記の表は、在留目的ごとの区分と代表的な在留資格、COEの要否を整理したものです。
| 分類 | 在留資格の例 | COE申請 |
|---|---|---|
| 就労系(中長期) | 技術・人文知識・国際業務、技能、企業内転勤、高度専門職 | 必要 |
| 身分系(新規入国) | 家族滞在、留学 | 必要 |
| 短期滞在 | 観光、短期商用(90日以内) | 不要 |
| 既存の身分系 | 永住者、日本人の配偶者等(再入国時) | 不要 |
| 国内での資格変更 | 在留資格変更許可申請 | 不要(別手続き) |
在留資格認定証明書の交付申請の流れ
在留資格認定証明書の取得には、複数の段階を経た手続きが必要です。申請から取得、そして最終的に外国人が入国するまでの全体の流れを理解しておくことで、計画的に外国人雇用を進めることができます。
申請者と申請先
在留資格認定証明書の交付申請は、外国人本人が海外にいる状態で、日本国内の受入機関(雇用企業等)または行政書士等の代理人が行います。申請先は、外国人が日本で活動する予定地を管轄する地方出入国在留管理局またはその支局・出張所です。例えば、東京都内の企業に勤務予定の外国人であれば、東京出入国在留管理局が申請先となります。
実務上は、人事担当者が直接申請するケースと、外国人雇用に精通した行政書士に依頼するケースがあります。大企業では専任の担当者が複数の申請を処理することが多いですが、初めて外国人を雇用する場合や複雑なケースでは、専門家への依頼も有効な選択肢となります。行政書士に依頼する場合、申請取次資格を持つ行政書士であれば、企業担当者が出入国在留管理局に出向くことなく、全ての手続きを代行してもらうことが可能です。
必要書類の準備
COEの交付申請に必要な書類は、申請する在留資格の種類や外国人の学歴・職歴、受入企業の規模等によって異なります。基本的には、以下の書類が必要となります。
- 在留資格認定証明書交付申請書(所定様式)
- 外国人の顔写真(4cm×3cm、申請前3か月以内撮影)
- 返信用封筒(簡易書留用、404円切手貼付)
- 外国人の学歴・職歴を証明する書類(卒業証明書、在職証明書等)
- 雇用契約書または採用内定通知書
- 企業の登記事項証明書
- 企業の決算書類(直近年度)
- 事業内容を説明する資料(会社案内、パンフレット等)
- 従業員数を証明する書類
特に「技術・人文知識・国際業務」などの就労系在留資格では、外国人の学歴や職務経験と、日本で従事する業務内容との関連性を証明することが重要です。例えば、大学で情報工学を専攻した外国人をシステムエンジニアとして雇用する場合、卒業証明書や成績証明書に加えて、職務内容を詳細に記載した雇用契約書を提出することで、関連性を明確に示すことができます。
また、受入企業の規模によって必要書類が異なる点にも注意が必要です。上場企業や従業員数が一定規模以上の企業(カテゴリー1・2)では、提出書類が簡素化されますが、設立間もない企業やスタートアップ(カテゴリー3・4)では、より詳細な事業説明や財務状況の証明が求められます。
審査期間と有効期限
在留資格認定証明書の標準的な審査期間は、申請から交付まで約1か月から3か月程度とされています。ただし、申請内容の複雑さや審査時期によって期間は変動します。特に、3月から4月の新卒採用シーズンや、9月から10月の秋季入社シーズンには申請が集中するため、通常よりも時間がかかる傾向があります。
交付されたCOEの有効期限は原則として3か月間であり、この期限内に外国人が日本に入国しなければ証明書は失効します。そのため、企業は外国人の入国予定日から逆算して、余裕を持って申請を開始する必要があります。仮に有効期限内に入国できない事情が生じた場合、再度申請をやり直す必要があり、時間とコストが無駄になります。
実務上は、入国予定日の4か月から5か月前には申請準備を開始し、3か月前には申請を完了させることが推奨されます。これにより、審査期間のバッファを確保し、万が一追加書類の提出を求められた場合にも対応できます。在留資格認定証明書取得までの時系列は下記のとおりです。
| 時期 | 実施事項 | 備考 |
|---|---|---|
| 入国予定日の4~5か月前 | 必要書類の準備開始 | 外国人とのコミュニケーション含む |
| 入国予定日の3か月前 | COE交付申請の提出 | 出入国在留管理局へ |
| 申請後1~3か月 | 審査期間 | 繁忙期は長期化の可能性あり |
| 交付後速やかに | 外国人本人へCOE送付 | 国際郵便(EMS等)推奨 |
| 受領後すぐ | 在外公館でビザ申請 | 通常1週間程度で発給 |
| COE交付から3か月以内 | 日本入国 | 有効期限内の入国が必須 |
在留資格認定証明書交付後の手続きとビザ申請
在留資格認定証明書が無事に交付されたら、次は外国人本人による在外日本大使館・領事館でのビザ申請手続きに移ります。このステップを正確に理解し、外国人本人に適切な情報を伝えることが、スムーズな入国実現につながります。
在外公館でのビザ申請プロセス
COEを受け取った外国人は、母国または居住国の日本大使館・総領事館において、ビザ(査証)の申請を行います。この際、交付された在留資格認定証明書の原本、パスポート、ビザ申請書、顔写真などを提出します。COEがあることで、在留資格の要件審査は既に日本国内で完了しているため、在外公館での審査は主に本人確認と形式的なチェックに留まります。
通常、COEを提示したビザ申請であれば、審査は数日から1週間程度で完了し、ビザが発給されます。ただし、申請する在外公館の混雑状況や、外国人の国籍によっては、追加の審査が必要となるケースもあるため、余裕を持ったスケジュール設定が望ましいです。
企業側は、COEを国際郵便(EMSなど追跡可能な方法)で外国人本人に送付し、受領確認を行った上で、速やかにビザ申請を進めるよう促す必要があります。また、外国人から申請状況の報告を受け、問題が発生した場合には、行政書士や出入国在留管理局への相談も検討します。
入国審査と在留カードの交付
ビザを取得した外国人が日本の空港や港に到着すると、入国審査が行われます。この際、パスポート、ビザ、在留資格認定証明書の原本を提示し、上陸許可を受けます。上陸審査官は、ビザと在留資格認定証明書の内容を確認し、問題がなければ上陸許可のスタンプを押印します。
上陸許可を受けた外国人には、その場で「在留カード」が交付されます。在留カードは、外国人が日本に中長期在留することを証明する公的な身分証明書であり、在留資格、在留期間、就労制限の有無などが記載されています。企業の人事担当者は、外国人の入社手続き時に在留カードの写しを取得し、記載内容を確認することが重要です。
なお、一部の地方空港では在留カードが即日交付されない場合があります。その場合、外国人が日本国内で住民登録を行った後、登録した住所に在留カードが郵送されます。企業は、外国人が確実に在留カードを受け取るまでサポートすることが求められます。
受入企業の初期対応
外国人が無事に入国したら、企業は速やかに入社手続きを進めます。在留カードの確認に加えて、以下の対応が必要です。
- 外国人本人が市区町村役場で住民登録を行う支援
- 社会保険(健康保険、厚生年金)への加入手続き
- 銀行口座開設の支援
- 社内オリエンテーションとビジネスマナー研修
特に、大企業では外国人材の受入体制が整備されているケースが多く、専任の担当者が生活立ち上げの支援を行うことが一般的です。住居の手配、携帯電話の契約、日本語研修の提供など、きめ細やかなサポートを行うことで、外国人が早期に業務に集中できる環境を整えることができます。
実務上の注意点とよくあるトラブル
在留資格認定証明書の申請は、適切に準備すれば決して難しいものではありません。しかし、実務上は様々なトラブルが発生することもあります。ここでは、よくある失敗例と、それを避けるための実践的なポイントを紹介します。
書類不備による審査遅延・不交付リスク
最も頻繁に発生するトラブルは、提出書類の不備や内容の不整合による審査遅延や不交付です。例えば、外国人の学歴と職務内容の関連性が不明確な場合、出入国在留管理局から追加の説明資料を求められることがあります。また、雇用契約書に記載された業務内容が抽象的すぎると、在留資格の要件を満たしているか判断できず、審査が長引く原因となります。
よくある不備の例としては、以下が挙げられます。まず、外国語で作成された証明書に翻訳文が添付されていないケース。公的書類は原則として日本語訳が必要です。次に、企業の登記事項証明書や決算書類が古く、最新のものでないケース。これらは発行後3か月以内のものが求められます。さらに、職務内容の記載が不十分で、専門性や在留資格との関連性が読み取れないケースも散見されます。
これらを避けるためには、申請前に必要書類のチェックリストを作成し、漏れがないか確認することが有効です。また、行政書士などの専門家に事前相談を行い、書類の記載内容についてアドバイスを受けることも推奨されます。
有効期限切れと再申請の負担
交付されたCOEの有効期限は3か月間ですが、この期限管理を怠ると大きなトラブルに発展します。例えば、外国人本人の事情で出国が遅れたり、在外公館でのビザ申請が遅延したりした場合、有効期限内に入国できないことがあります。この場合、COEは失効し、再度申請をやり直す必要があります。
再申請には時間とコストがかかるだけでなく、外国人本人のモチベーション低下や、他社への流出リスクも伴います。特に、優秀な外国人材は複数の企業からオファーを受けていることが多く、手続きの遅延が採用機会の損失につながることもあります。
対策としては、COE交付後の入国スケジュールを外国人本人と綿密に調整し、入国予定日の1週間前までにはビザを取得できるよう計画することが重要です。また、万が一期限内の入国が困難になった場合には、速やかに出入国在留管理局に相談し、対応策を検討します。
法令改正と最新情報の確認
出入国管理及び難民認定法や関連する省令・告示は、定期的に改正されます。例えば、特定の在留資格の要件が厳格化されたり、新たな在留資格が創設されたりすることがあります。また、新型コロナウイルス感染症のような社会情勢の変化に伴い、入国制限や手続きの変更が行われることもあります。
企業の人事担当者は、出入国在留管理庁の公式ウェブサイトや、外国人雇用関連の専門サイトを定期的にチェックし、最新の情報を把握しておく必要があります。また、重要な法改正があった場合には、社内の関連部署や経営層に速やかに共有し、対応方針を決定します。
社内体制づくりのための対応事項は下記のとおりです。
- 出入国在留管理庁の公式ウェブサイトを定期的にチェック
- 法改正情報を社内で共有する体制の構築
- 行政書士や社会保険労務士との定期的な情報交換
- 業界団体のセミナーやウェビナーへの参加
- 外国人雇用に関する最新の判例や事例の収集
まとめ
在留資格認定証明書は、外国人材を日本に招へいする上で不可欠な重要書類であり、事前に在留資格の要件を審査することで、ビザ発給と入国をスムーズにする役割を果たします。企業の人事担当者は、申請の流れや必要書類、審査期間を正確に理解し、余裕を持った計画を立てることが求められます。実務上は、書類不備や有効期限切れといったトラブルを避けるため、チェックリストの活用や専門家への相談が有効です。
優秀な外国人材の確保は、企業の成長と競争力強化に直結します。在留資格認定証明書の手続きを適切に行い、外国人が安心して来日・就労できる環境を整えることが、グローバル人材戦略の成功につながるのです。
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参考文献
https://global-saponet.mgl.mynavi.jp/visa/3131
