新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークの普及やおうち時間の増加など、生活スタイルが大きく変化しました。
政府から旅行の自粛が要請されたことにより、世界各地や国内の観光地に訪れて楽しむ旅行のスタイルも変わってきており、修学旅行が中止になった高校も増えています。
現在大手企業が展開しているのが、VRを活用した旅行ビジネスです。
VR旅行は各地への旅行が難しい高齢者の増加を見越して以前から開発が進められていましたが、パンデミックを機に急速に広まりました。
実際にその場にいるかのような体験ができるVR技術の進歩は目覚ましく、旅行との親和性も高いため注目を集めているビジネスです。
本記事では、VRを活用した旅行について概要を解説するとともに、各企業の取り組みや旅行業界の今後についてもご紹介します。
VRを使った旅行ビジネスとは?
そもそも、VRを活用した旅行ビジネスとはどのようなものなのでしょうか。
VRの旅行ビジネスとは、VR(バーチャルリアリティ)を活用して、旅行の代替体験の提供、リアルでの旅行の意思決定のサポートなどを行うビジネスです。
VRの旅行ビジネスは、大きく「VR旅行」と「VRを活用した旅行の意思決定支援」の二つに分かれます。以下ではそれぞれ詳しく解説していきます。
VR旅行
VR技術によって、自宅や国内の施設で旅行の疑似体験の提供を行う「VR旅行」は、世界各地への旅行を代替するビジネスです。
実際に旅行に出向くことが難しい高齢者のために、介護施設でも活用されています。
今後は、リアルでの旅行のサポートを行う旅行会社にとってライバル関係にあたるビジネスとなるといわれています。
VRを活用した旅行の意思決定支援
一方、実際の旅行をより充実したものにするためのビジネスも存在します。
旅行代理店などでは、VRを活用して観光地や宿泊施設などを確認してもらえるようになっています。
技術を駆使して実際の旅のイメージを深めてもらい、より良い旅行体験のためのサポートをしやすくなるビジネスです。
その場に行っていなくても、旅行の擬似体験によって実際の旅行への欲求が高められ、実際の旅行への需要増加も狙えるビジネスともいえるでしょう。
なぜVR旅行ビジネスが注目されている?
最新テクノロジーを活用した旅行ビジネスが広がった大きな要因としては新型コロナウイルスがあげられますが、それ以外の要因も絡んでいます。
VR旅行に注目が高まっている背景について解説していきます。
今までの旅行ビジネスの限界
今までの旅行ビジネスでは、実際の旅行体験へのサポートが中心でした。しかし、高齢化社会の到来により、旅行に行くことができない高齢者に対する旅行体験の提供への需要も高まりつつあったのです。
開発を進めるなかで、2020年3月ごろからの新型コロナウイルス感染拡大により旅行の自粛が進み、急速に広がりました。
2021年現在のVR旅行ビジネス
2021年現在のVRを活用した旅行ビジネスはさまざまな形態があります。
コロナ前から展開されていたビジネスは引き続き拡大しており、VRゴーグルがあれば手軽に旅行体験ができるYouTubeなどはSNSなどでも拡散され、話題になっています。
また、コロナ禍による学校行事の中止のため、修学旅行や社会科見学などの疑似体験ができるプランも展開が開始されており、今後にも期待が集まっているビジネスです。
各企業によるVRの旅行ビジネス
ここでは、各企業のVRの旅行ビジネスについて紹介します。
エース株式会社 世界VR旅行
エース株式会社が提供する世界VR旅行は、VRゴーグルをつけてYouTubeにアップされている動画再生をすることで世界各国の観光ができます。自身でVRゴーグルを買うだけで、実際には長距離旅行となってしまう地点の景色を楽しめるビジネスです。
また、「リアルでの旅行が可能になってから訪れたい」と思っている場所を知るためにも活用できるのではないでしょうか。
JTB 修学旅行360
先ほども紹介した、修学旅行の疑似体験ができるビジネスはJTBにより展開されています。
第2編となる日光編は、2021年7月1日から募集開始、9月1日から配信です。コロナ禍で修学旅行が実施できない学校でも、VRによってリアルな修学旅行の体験、映像ならではの旅行体験を提供できます。また、修学旅行が実施できるようになってからも事前学習時に活用できる点もメリットといえるでしょう。
ANA NEO株式会社
ANA NEO株式会社は、2021年5月にANAにより設立された、バーチャルトラベルプラットフォーム「SKY WHALE」の開発・運営を担う企業です。
ANAでは、ニューノーマル時代の旅行体験のためのプラットフォームとして、「SKY WHALE」の開発を進めています。技術の進歩によって変化している顧客の需要に合わせたビジネスとして注目を集めています。
ARを活用した旅行ビジネス
VRを使った旅行ビジネスと共に、ARを使って旅行体験の向上を行うビジネスも注目されています。
ARを使った旅行ビジネスでは、仮想現実であるVRによる旅行ビジネスとはまた違った旅行体験を提供できる点が魅力です。
以下では地域や企業で展開されているAR旅行ビジネスを紹介していきます。
エアタグARスポットガイド
エアタグARスポットガイドは、空間にスマホをかざすと周辺施設の観光情報が浮かび上がるサービスです。観光客は、スマホをかざすだけで現在地から近い観光スポットを知り、時間を無駄にすることなく旅行を楽しむことができます。
また、お店側は、観光地を訪れた数少ない客に自店舗の情報を見てもらうチャンスが増えます。隠れ家のような立ち位置で、コロナ禍で落ち込んだ集客に悩む店や、外国人観光客の集客を行いたい店にはぴったりのビジネスといえるでしょう。
ARナイトウォーク「Star Fragment〜星のかけら〜」』長野県阿智村
2021年7月から、ARで星空観賞が楽しめる「ARナイトウォーク「Star Fragment~星のかけら〜」がスタートしました。AR技術と高精度の位置測定システムを活用して実現する幻想的な星空の干渉を楽しむことができます。
環境省による全国星空継続観察で「星の観察に適していた場所」の第1位(平成18年)となったこともある場所での星空観測とAR技術との掛け合わせにより、未体験の星空観賞が可能となるでしょう。
これからの旅行ビジネス
新型コロナウイルスによる影響により、大打撃を受けた旅行ビジネスですが、ニューノーマル時代の旅行スタイルに対応する動きが見受けられます。
旅行ビジネスへのVRやARの導入はその一環といえるでしょう。
新型コロナウイルスの影響がおさまり、実際に各地に訪れる旅行が可能になった時代でもVR/ARによる旅行ビジネスは継続されると予測されます。
新型コロナウイルスの感染拡大が始まる前から、デジタル化や高齢化社会の影響を受けてVR旅行ビジネスを展開する動きはあったため、コロナ終息後の旅行も見据えて開発が続けられています。
リアル旅行との掛け合わせがしやすいビジネスを中心に、今後も開発が進んでいくでしょう。