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システムの老朽化や陳腐化がもたらす問題-脱却・解消への道筋とは

システムの老朽化や陳腐化がもたらす問題-脱却・解消への道筋とは

社内システムは機械設備と同様に、長年運用し続けることで老朽化・陳腐化してしまうものです。そしてこの状態を長期間放置してしまうとさまざまな問題を引き起こします。本記事では、システムの老朽化や陳腐化がもたらす問題点と、その解消に向けたステップを紹介します。

デジタル技術の重要性が高まる昨今で、大きな課題として残っているのがシステムの老朽化です。実際にシステムの老朽化を放置し続けたことにより、セキュリティの脆弱化やシステムのブラックボックス化などの問題に直面している企業の例がみられますが、システム切り替えの難しさやコスト面の負担から旧来のシステムを運用し続けている企業が少なくありません。

本記事では、システムの老朽化や陳腐化がもたらす問題やその脱却、解消方法について詳しく解説していきます。

システムの老朽化・陳腐化とは

システムの老朽化とは、業務システムを長年にわたり使用することで、さまざまな問題が生じている状態を指します。システムの保守・サポート終了によって不具合やセキュリティのリスクが増加するといった例が代表的ですが、それ以外にも長年改修を繰り返した事によるシステムの複雑化や、日々変化する業務プロセスとシステムの不一致も老朽化によって生じる問題です。

また、陳腐化は「新しさ」やそれが生み出す価値が薄まった状態を指す言葉ですが、システムに置き換えて考えると、新しい技術が登場し既存のシステムが機能面で大きく劣るなど、時代遅れとなっている状態だと言えるでしょう。致命的な問題が生じていなくても、運用するシステムが新たなデジタル技術に対して十分な価値を発揮できていない場合、業務効率は低下してしまいます。

システムの老朽化・陳腐化は最終的に生産性や競争力の低下を招きます。このような状態に陥らないためにも、企業は定期的なシステム評価や技術的なアップデート、将来的な拡張性や柔軟性を考慮したシステム設計などを行い、システムの老朽化や陳腐化から脱却しなければなりません。

システムの老朽化による「2025年の崖」

このように、システムの老朽化により生じる問題は非常に大きいものがあります。経済産業省の調査によれば2025年に、システムの老朽化に伴う経済損失が最大で年間12兆円にのぼると推定されており、このことを象徴して「2025年の崖」と呼ばれています。

参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省)

システムの老朽化に潜む問題点・リスク

老朽化したシステムを長期間放置することによって生じる主な問題としては、以下の3つがあげられます。

セキュリティリスク

老朽化したシステムは高度化するサイバー攻撃の手法に対応しきれない場合が多く、使い続けることでセキュリティリスクを抱えてしまう可能性があります。サポートが終了したシステムは言うまでもありませんが、多くの改修を加え運用し続けているシステムは内部が複雑化し、最新のセキュリティ脅威に対応するためのアップデートがしづらい傾向があります。

また、安定稼働させるための保守作業に多大なリソースを割いてしまい、セキュリティ対策にリソースが割けないケースも考えられます。機密性の高い情報を扱うシステムがサイバー攻撃を受けると大きな損失につながるうえ、その被害が自社と連携する関連企業へと波及する最悪のケースも考えられます。

関連記事:サプライチェーン攻撃とは?手法や事例から学ぶ5つの対策方法

ブラックボックス化・スパゲティ化とサイロ化

老朽化したシステムの多くは、直近での活用事例や扱える人材が少ない「古いプログラミング言語」を使用して開発されています。長く運用していく中で当時のプログラミング言語を扱える人材が退職する、あるいは別の業務を担当するなどして、開発当時から業務に携わった人員がいなくなってしまえば、システムの運用保守は困難です。

また、長期間の運用において「その時々に使いやすい」形へと繰り返し改修を行ってしまうと、システムが複雑化してしまいます。その結果生じるのが、システムの中身を十分に把握できていない「ブラックボックス化」や、システムが複雑化し運用や保守に支障をきたす「スパゲティ化」です。

結果として、システムがある部門内でしか運用できず、部門間の連携が取れない「サイロ化」や、業務の属人化、技術紹介問題が生じ、最悪の場合は運用や業務遂行自体が不可能になるリスクも発生します。

関連記事:組織やデータのサイロ化とは?その問題点と解消方法を解説

業務の効率化やDXの足枷になる

新たにツールやシステムを導入し業務の効率化やデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組むとなった場合に、老朽化したシステムとの連携が難しく、結果として効率化や生産性向上の目的を十分に果たせない可能性があります。

また、運用が難しいシステムを使い続ける場合、「システムに合わせて業務する」ことを余儀なくされるため、業務プロセスを変えようと思っても変えられず、業務効率の低下やシステムの処理速度低下などを引き起こしてしまいます。

関連記事:製造業DXの失敗しない進め方とは?具体的なステップと事例を紹介!

システムの老朽化・陳腐化を解消するステップ

デジタル技術を用いて組織に変革をもたらすDXを推進し、企業の競争力を高めていくためには、老朽化したシステムは遅かれ早かれ刷新しなければいけません。実際にシステムの老朽化や陳腐化を解消するには以下の5つのステップが必要です。

  1. 現状の問題点を洗い出す
  2. システム刷新の方法を検討する
  3. 要件定義
  4. システム開発
  5. 運用

これらのステップには自社の業務理解だけでなく、それをシステムに落とし込む専門性や技術力が求められ、自社のみだけでは難しい場合がほとんどです。そのため専門の企業に相談しつつ進めるのが良いでしょう。

現状の問題点を洗い出す

はじめに、老朽化や陳腐化したシステムにより生じている問題点を明確にします。ここでの問題は、運用・保守コストの増大、セキュリティリスク、非効率な業務プロセス、システムで対応できない業務の増加など部門や立場などによってもさまざまです。

プロジェクトのメンバーのみでなく現場の従業員にもヒアリングをして、細かな課題まで収集するようにしてください。ただし、予算や期間が限られている場合はそれぞれに優先順位をつけて刷新する順番を明確にしましょう。

システム刷新の方法を検討する

現状の問題点が明らかになったら、それぞれの問題に応じた刷新の方法を検討していきます。

運用・保守コストやセキュリティのみが問題となる場合は、仕様はそのまま、開発言語や環境のみ刷新します。また、業務プロセスとの不一致が問題の場合は、システム刷新に際して新システムの要件定義と業務プロセス自体の見直しが必要です。

適切な刷新方法は、基幹システムの状況や目指すビジョンなどによっても異なります。それぞれの方法のコストや期間、リスク、将来の拡張性などを評価し最適な選択肢を選ばなくてはいけません。

要件定義

刷新の方法が決まったら、現状の業務プロセスに対しシステムで対応する領域や、必要となる機能、外部システムとの連携性などの要素をもとにシステム刷新の要件定義を行います。ここでの要件定義とは、新たな基幹システムに期待する効果や実装する機能など、自社の要望をまとめる作業のことです。

開発を外部へと委託する場合、整理した内容は要件定義書にまとめて開発側であるベンダー企業に提出します。要件定義はプロジェクトの成功に直結するため、関係者との継続的なコミュニケーションや明確で詳細なドキュメントを作成することが重要です。

システム開発

要件定義が終われば、新しいシステムの開発に着手します。システム開発の詳細は割愛しますが、ポイントとなるのは実際の業務において関連各所が使いやすいシステムかどうかという点です。

しかし、要件定義の段階でシステムに関わるステークホルダーの要望を全て考慮するのは難しいものです。そのため、定義した要件に沿って開発を進めるウォーターフォール開発だけでなく、顧客とこまめに話し合い要件を修正しつつ、素早いプロトタイピングや検証を実施するアジャイル開発を可能な限り組み合わせるのが得策といえます。

運用

新システムの運用にあたっては、全社スムーズに新システムへと移行できることがポイントですので、丁寧なマニュアルの整備や従業員への教育などが求められます。

また、運用開始後は当初の目標やKPIに基づいてその効果を測定し、定期的なレビューとアップデートを繰り返す必要があります。想定された効果が得られなかった場合は、ただちに業務プロセスの見直しやシステムの調整を行わなければなりません。

システム老朽化からの脱却にはベンダーへの相談が不可欠

繰り返しになりますが、システムの老朽化や陳腐化を放置したままでは、運用コストの増加や業務効率の低下を引き起こし、激化する企業競争に勝ち残ることはできません。一見問題なく運用できているように見えても、その裏には人的リソースによりシステムをカバーする状況があり、従業員の負担となっている可能性もあります。

しかし、システムの刷新は自社のみでは判断が難しいかもしれません。そのため、システムの老朽化に対処する際には、ベンダーとの積極的なコミュニケーションや相談を通じて、適切なシステム選定とプロジェクト計画を策定してください。そうすることで、企業の効率性やシステムの安全性、柔軟性といった刷新の目的はもちろん、そこに至るまでのプロセスもよりスムーズに進められるでしょう。

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