マシニングセンタとは?自動で工具を交換できるATCが特徴
マシニングセンタ(machining center:通称MC)は、それぞれの加工に必要な工具を自動で交換できる機能を備えており、一般社団法人日本工作機械工業会によると、以下のように定義されています。中ぐり、フライス削り、穴あけ、ねじ立て、リーマ仕上げなど多種類の加工を連続で行えるNC工作機械引用:『工作機械の種類と加工方法』一般社団法人日本工作機械工業会 加工に必要な作業工程などを数値によってコントロールし、自動化する「NC工作機械」に「ATC」が付いている機械がマシニングセンタです。ATCとは「Automatic Tool Changer 」の略であり、日本では「自動工具交換装置」と呼ばれています。ATCを装備することで、一度の工程で2本以上の工具を使う際、作業員が工具を取り替える必要がなくなります。
マシニングセンタの種類と特徴
マシニングセンタのなかでシェアが大きいのは、「横型マシニングセンタ」と、「立型マシニングセンタ」の2種類です。このほか、「門型マシニングセンタ」と「5軸制御マシニングセンタ」という種類もあり、それぞれの特徴について紹介します。加工精度と大量生産を求めるなら横型マシニングセンタ
工具を地面に対して水平方向に取り付けるのが、横型マシニングセンタです。X軸、Y軸、Z軸方向に稼働できるため、3次元での加工ができます。テーブルが水平方向に回転する軸(B軸)を持つものもあり、同時に4軸での制御が可能です。加工する材料の向きを手動で変える必要がなくなるので、加工の精度が高くなります。 自動で部品の輸送作業を行うパレットチェンジャーを装備できる点がメリットのひとつです。部品供給を自動化することで、手動で行っていた供給作業を省略できるので、長時間の連続稼働が可能になります。また、地面に対して水平に取り付けられているため、重力で削りカスが落ちやすいという点もメリットです。凹型の部品などに対しても多方向から切削工具を当てることができます。 しかし、材料を横から固定するので、材料が重すぎると、固定した際に主軸が乱れたり、たわんだりする可能性があることがデメリットです。そのため、高い加工精度が必要な精密小物部品加工に向いています。多品種少量生産に向いている立型マシニングセンタ
工具を垂直(立)方向に取り付けるのが、立型マシニングセンタです。固定した材料を縦方向から削っていくので、上から切削している状況を確認することができ、機械の動きを理解しやすい、という利点があります。そのため、1面を加工する箇所が多い、金型などの部品を多品種で少量生産する際に適しています。 また、立型マシニングセンタは機械が積み上がるような構造で作られており、コンパクトな造りになっています。そのため、横型マシニングセンタと比べると床の専有面積が小さく、導入しやすい点もメリットです。実際に、昨今のマシニングセンタ市場では最も多く出回っています。 しかし、パレットチェンジャーの取り付けが難しく、稼働時間が横型マシニングセンタよりも短くなります。また、縦方向に削っていくので削りカスが排出されにくいだけではなく、切りクズが長くなりすぎるとチッピングの原因になり、切り削工具や切り刃の刃先が細かく欠けてしまう可能性があります。そこで、切削工具の回転速度に緩急をつけたり、切削油の噴射速度をあげたりするなどの対策を取らなければなりません。したがって、大量生産にはあまり向かないでしょう。 参考:『平成27年度特許出願技術動向調査報告書(概要)ターニングセンタ及びマシニングセンタ』特許庁門型マシニングセンタと5軸制御マシニングセンタ
門型マシニングセンタは正面から見たときに、機械が門の形をしています。材料を置くテーブルが広くて長く、主に大型の製品を加工する際に用いられます。 また近年は、X軸、Y軸、Z軸の直線軸に2方向の回転軸が加わった5軸制御マシニングセンタが登場しています。3軸しか持たない機械で作業をする場合、3方向を加工するためには材料をそれぞれ3方向に手動で回転し、固定しなおさなければなりません。これでは作業工数がかかる上、手動で置き直した際に誤差が生じて製品精度にバラつきが生じてしまうこともあります。 対して5軸制御マシニングセンタで加工する場合、材料のセッティング作業が1度で済みます。工作物に対して切削工具の軸を適切に傾けたり、加工位置を選べるため、よく削れる部分を効率的に使用したり、突き出し量の少ない工具でも加工することが可能です。 デメリットは、制御が困難になることです。一般的に、産業用ロボットは軸が増えるほど、制御しづらくなります。3軸よりも5軸のほうが、制御しなければならない座標が多く、寸法ズレの対応が難しくなるのです。したがって、ティーチングを施す作業員はより細かな点に注意を払うことが必要になります。 5軸制御マシニングセンタは通常のマシニングセンタと同じように、立型や横型のほか、主軸が回転する型など、豊富なラインナップがあります。さらに、一度の固定で6面を同時に加工できたり、7軸制御ができたりするマシニングセンタも登場しているため、自社が扱う製品に適した機械を選択しましょう。産業用ロボットの種類と特徴、得意な作業について解説した無料ガイドは、こちらからダウンロードできます。