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約40年ぶりに労働基準法が改正!制度変更の内容と企業が今すぐやるべきこととは?

【特集】2026年問題・課題

約40年ぶりに労働基準法が改正!制度変更の内容と企業が今すぐやるべきこととは?

2025年から2026年にかけて、日本の労働基準法が約40年ぶりの大規模改正を迎えています。長時間労働の是正、育児や介護との両立支援、多様な働き方への対応など、企業と働く人々の両方に大きな影響を及ぼす制度変更が段階的に進行中です。すでに2025年4月から施行されている改正内容に加え、2026年以降に予定されている労働時間規制の見直しまで、企業は複数の法改正に同時対応する必要があります。本記事では、製造業や工場現場の管理者が押さえるべき改正内容を体系的に整理し、今すぐ着手すべき対応策を具体的に解説します。

関連リンク:【特集】2026年問題・課題

労働基準法改正の全体像と背景

今回の労働基準法改正は、単独の法律改正ではなく、育児・介護休業法、雇用保険法など複数の労働関連法制が連動した大規模な制度変更です。厚生労働省の労働基準関係法制研究会が2024年に公表した報告書を起点に、労働者概念の見直しから労働時間規制の強化まで、労働法制の根幹部分を包括的に見直す方向性が示されています。

改正のタイムラインと施行スケジュール

この改正の背景には、日本社会が抱える構造的課題があります。少子高齢化による労働力人口の減少、過労死や長時間労働の問題、育児や介護を理由とした離職の増加、副業やテレワークなど働き方の多様化といった課題に対応するため、大幅な法改正が必要と判断されました。

改正内容は段階的に施行されます。2025年4月からは残業免除対象の拡大など、制度変更がすでにスタートしています。2026年には連続勤務日数の上限規制や勤務間インターバル制度の義務化など、労働時間に関する根本的な規制強化が予定されています。このスケジュールを理解し、計画的に対応準備を進めることが企業には求められています。

製造業や工場現場では、交代制勤務やシフト制が一般的であるため、これらの時間規制強化は業務運営に直接的な影響を及ぼします。早期に現状分析を行い、必要な体制整備に着手することが重要です。

改正が目指す3つの柱

今回の改正において大切なポイントは3つあります。第一に長時間労働の是正と過労死防止です。連続勤務上限やインターバル規制により、労働者の健康確保を制度的に担保します。第二に育児・介護との両立支援の強化です。子の看護等休暇の対象年齢引き上げやテレワークの活用により、ライフイベント期の就業継続を可能にします。第三に多様な働き方への制度対応です。副業者の労働時間管理やフレックスタイム制度の拡充により、個人のライフスタイルに応じた柔軟な働き方を支援します。

これらの目標は相互に関連しており、一体的な制度設計が図られています。企業はこれらを個別の対応としてではなく、総合的な人事労務戦略として捉える必要があります。

施行時期主な改正内容対象分野
2025年4月子の看護等休暇の対象年齢引き上げ(小学3年生まで)育児支援
2025年4月所定外労働の制限・免除対象拡大(小学校就学前まで)育児支援
2025年4月介護のためのテレワーク措置追加介護支援
2026年予定14日以上連続勤務の禁止労働時間規制
2026年予定勤務間インターバル制度の義務化労働時間規制

上記の表は主要な改正項目をまとめたものです。製造業の現場では特に2026年の労働時間規制強化への準備が急務となっています。

2026年以降の労働時間の規制を強化

2026年以降に予定されている労働基準法の改正は、労働時間規制の根本的な見直しを含む大規模なものです。連続勤務日数の上限設定、法定休日の特定義務化、勤務間インターバル制度の全面義務化など、企業の勤務管理体制に直接影響する内容が中心となっています。製造業の交代制勤務や24時間稼働体制には特に大きな影響が予想されます。

14日以上連続勤務の禁止

労働基準法では週1日または4週間に4日の休日付与が義務付けられていますが、運用の曖昧さから長期間の連続勤務が可能な状態が続いていました。2026年の改正では14日以上の連続勤務が明確に禁止される方向で検討されています。これにより、最大でも13日連続勤務までとなり、必ず14日以内に休日を付与する必要が生じます。

製造業の現場では、生産計画や納期対応のために長期連続勤務が発生しているケースが少なくありません。この規制により、シフト設計の抜本的な見直しが必要になります。特に少人数で運営している工場や、特定の技能者に依存している職場では、要員の増強や業務の標準化、複数名での対応可能な体制構築が急務となります。

勤務間インターバル制度の義務化

現在は努力義務とされている勤務間インターバル制度が、全面的に義務化される見込みです。勤務終了後から次の勤務開始まで一定時間以上の休息時間を確保する制度で、欧州では11時間が標準となっています。日本でも同程度の時間設定が検討されており、労働者の健康確保と過労防止を制度的に担保する狙いがあります。

交代制勤務を採用している製造業では、この制度への対応が大きな課題となります。現行のシフトパターンでインターバル時間が確保できない場合、勤務時間帯の見直しや要員の増強が必要です。また、突発的な残業や呼び出し対応が発生した場合、翌日の始業時刻を遅らせる必要が生じるため、生産計画への影響も考慮しなければなりません。

法定休日の明確な特定義務

従来は法定休日をどの曜日とするか明確にする義務がなく、運用が曖昧なケースが多く見られました。2026年の改正では、就業規則において法定休日を明確に特定することが義務化される見込みです。

製造業では週休2日制を採用していても、繁忙期には両日とも出勤するケースがあります。法定休日が特定されることで、どちらの日の労働に35%割増を適用するかが明確になり、給与計算の精度が向上します。一方で、シフト設計や割増賃金コストの見直しが必要になる可能性があります。

規制項目現行制度改正後(2026年予定)
連続勤務明確な上限なし14日以上の連続勤務を禁止
勤務間インターバル努力義務一定時間以上の休息を義務化
法定休日の特定明確な特定義務なし就業規則での明確な特定を義務化
有給休暇賃金算定複数方式から選択可能原則として通常賃金方式に統一

上記の改正内容は、いずれも労働者の健康確保と労務管理の透明性向上を目指すものですが、企業側には大幅な体制見直しが求められます。

副業・多様な働き方への制度対応

働き方の多様化が進む中、副業を認める企業が増加しています。しかし、労働基準法上の労働時間は原則として通算する必要があるため、副業者の労働時間管理が新たな課題となっています。今回の改正では、副業者の割増賃金計算や労働時間管理の明確化が図られる見込みです。

副業者の労働時間通算管理

複数の企業で雇用される労働者の労働時間は、労働基準法上、通算して管理する必要があります。改正により、副業者の割増賃金を時間通りに計算する仕組みが明確化される予定です。これにより、本業と副業を合わせた労働時間が法定労働時間を超える場合、後から雇用契約を結んだ企業が割増賃金を支払う義務が生じます。

製造業においても、人手不足を背景に副業人材の活用を検討する企業が増えています。しかし、他社での労働時間を正確に把握する仕組みが必要となり、実務上の負担が増大します。労働者からの自己申告に頼るだけでなく、信頼性の高い情報共有システムの構築が求められます。

柔軟な働き方措置の複数選択義務

育児期の労働者に対して、企業は柔軟な働き方措置を複数準備し、労働者が選択できる制度を整備する必要があります。テレワーク、フレックスタイム制、始業・終業時刻の変更、短時間勤務、保育施設の設置、新たな休暇制度など、複数の選択肢を用意し、就業規則に明記することが求められます。

製造業の現場作業ではテレワークの適用が難しいケースが多いですが、フレックスタイム制や始業・終業時刻の変更、短時間勤務などは導入可能です。また、事業所内保育施設の設置や育児関連の特別休暇制度の創設など、業種特性に応じた柔軟な対応が求められます。重要なのは、労働者が実際に選択できる複数の措置を用意することです。

  • 副業者の労働時間を通算して管理
  • 割増賃金は後から契約した企業が負担
  • テレワーク、フレックスなど複数の柔軟措置を準備
  • 育児期の労働者が選択できる制度を整備
  • 就業規則への明記と周知が必須

これらの制度対応は、人材確保と定着率向上の観点からも重要な投資となります。特に若年層や子育て世代の採用競争力を高める効果が期待できます。

企業が今すぐ着手すべき5つの対応

複数の法改正が同時進行する中、企業は計画的かつ優先順位をつけて対応を進める必要があります。特に製造業や工場を運営する企業では、現場の実態を踏まえた実効性のある対策が求められます。以下では、今すぐ着手すべき5つの重要対応について具体的に解説します。

就業規則と労使協定の全面見直し

最優先で取り組むべきは、就業規則と各種労使協定の見直しです。2025年施行の改正内容については速やかに就業規則を改定し、所轄の労働基準監督署への届出を完了させる必要があります。特に所定外労働の制限、介護関連の柔軟措置については、取得要件、手続き、賃金の取扱いなどを明確に規定します。

36協定についても、2026年の労働時間規制強化を見据えた見直しが必要です。連続勤務上限やインターバル制度を前提としたシフト設計が可能か、現行の協定内容で対応できるかを検証します。また、過半数代表者の選出プロセスの透明性確保や、選出記録の適切な保管も重要なポイントです。

勤怠管理システムの機能強化

労働時間の客観的把握と法令遵守を確実にするため、勤怠管理システムの機能強化が必要です。特に連続勤務日数の自動カウント、勤務間インターバルの自動チェック、法定休日と所定休日の明確な区別、副業者の労働時間通算機能などが求められます。既存システムで対応できない場合は、アップグレードやシステム更新を検討する必要があります。

製造業の現場では、ICカードやタイムレコーダーによる打刻が一般的ですが、データの集計や分析機能が不十分なケースが見られます。リアルタイムでの労働時間管理、アラート機能、データ分析機能を備えたシステムの導入により、法令違反リスクを未然に防ぐことが可能になります。

シフト体制と要員計画の再設計

2026年の労働時間規制強化を見据え、現行のシフト体制が維持可能かを早急に検証する必要があります。14日以上連続勤務の禁止や勤務間インターバル義務化により、現行体制では対応できないケースが想定されます。シフトパターンの見直し、交代要員の確保、業務の標準化と多能工化など、複数の対策を組み合わせた対応が必要です。

特に24時間稼働の工場や、特定技能者に依存している職場では、要員の増強が避けられない可能性があります。採用計画の前倒しや、派遣・請負の活用、設備の自動化投資など、中長期的な視点での対応策を検討することが重要です。

両立支援制度の具体的設計と周知

育児・介護との両立支援制度を実効性のあるものにするため、具体的な制度設計と全社員への周知が必要です。柔軟な働き方措置として何を提供するか、取得手続きはどうするか、代替要員はどう確保するかなど、現場の実態を踏まえた運用ルールを明確にしましょう。制度はあっても使えない状態では意味がないため、管理職への教育と現場の理解促進が重要です。

製造業では、ライン作業やチーム作業が中心となるため、個人の休暇や時短勤務が業務全体に影響します。そのため、チーム全体でカバーする文化の醸成や、業務の見える化、マニュアル整備などが不可欠です。また、制度利用者が不利益を被らないよう、評価制度の見直しも併せて検討する必要があります。

コンプライアンス体制の強化と監査

複数の法改正に確実に対応するため、労務コンプライアンス体制の強化が必要です。人事・総務部門だけでなく、現場管理者や経営層を含めた全社的な体制を構築し、定期的な内部監査を実施しましょう。労働時間管理、休暇取得状況、割増賃金計算、就業規則の運用状況などを定期的にチェックし、問題点を早期に発見・是正する仕組みを整えることが求められます。

また、労働基準監督署の調査に備え、労務関連書類の適切な保管と記録の整備が重要です。タイムカード、出勤簿、賃金台帳、労使協定、就業規則変更の経緯など、法定保存期間を遵守した書類管理を徹底します。外部の社会保険労務士や弁護士によるアドバイスを定期的に受けることも、リスク管理の観点から有効です。

業種別の影響と対応戦略

労働基準法の改正は全業種に適用されますが、業種特性により影響の大きさや対応策は異なります。製造業の中でも、連続プロセス型の化学工場と組立型の機械製造では、求められる対応が異なります。ここでは、製造業における典型的な課題と対応戦略を整理します。

24時間稼働の連続プロセス型工場

化学プラントや製鉄所など、設備を停止できない連続プロセス型の工場では、24時間体制の維持が必須です。連続勤務上限やインターバル規制の導入により、従来の3交代制や4組3交代制での対応が困難になる可能性があります。要員の増強、交代パターンの見直し、DCS等の自動化システムの高度化など、複数の対策を組み合わせた対応が必要です。

特に定期修理やトラブル対応時の長時間労働をどう抑制するかが課題となります。計画的な修理スケジュールの策定、外部専門業者の活用、緊急時対応マニュアルの整備などにより、特定個人への負荷集中を回避する仕組みが求められます。

組立・加工型の製造現場

自動車部品や電子機器の組立など、ライン生産を行う工場では、受注変動への対応が重要な課題です。繁忙期の残業や休日出勤が常態化している場合、連続勤務規制やインターバル義務化により生産能力が制約される可能性があります。生産計画の平準化、多能工化による要員の柔軟配置、ボトルネック工程の自動化投資などが有効な対策となります。

また、特定の熟練技能者に依存している工程では、技能伝承と複数名での対応可能な体制構築が急務です。OJTの体系化、技能マニュアルの整備、若手育成の加速などにより、属人化を解消することが長期的な競争力維持につながります。

工場タイプ主な課題推奨される対応策
連続プロセス型24時間体制の維持、
緊急対応時の長時間労働
要員増強、
自動化高度化、
緊急時マニュアル整備
組立・加工型受注変動対応、
特定の熟練技術者への依存
生産平準化、
多能工化、
技能伝承の加速
検査・品質管理精密作業による負荷、
夜勤・交代制の限界
自動検査装置導入、
AIによる異常検知、
勤務体制見直し

業種特性を踏まえた実効性のある対応策を選択することが、法令遵守と生産性維持の両立につながります。

まとめ

約40年ぶりの労働基準法大改正は、2025年から2026年にかけて段階的に施行され、企業の労務管理体制に大きな影響を与えます。2026年には連続勤務上限や勤務間インターバル義務化など、労働時間規制の強化が予定されており、製造業の交代制勤務やシフト体制に直接的な影響が予想されます。

企業が今すぐ着手すべき対応は、就業規則と労使協定の見直し、勤怠管理システムの機能強化、シフト体制の再設計、両立支援制度の具体化、コンプライアンス体制の強化の5つです。これらは法令遵守のためだけでなく、人材確保と定着率向上、生産性維持の観点からも重要な投資となります

改正への対応は一時的な負担増となりますが、長期的には働きやすい職場環境の実現と企業競争力の向上につながります。計画的かつ着実に対応を進めることで、法令遵守と事業継続の両立が可能となります。人事・総務部門だけでなく、経営層と現場管理者が一体となった全社的な取り組みが求められています。

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