「きつい」「きたない」「危険」の3つの状態を示す「3K」。
過酷な労働環境を意味する言葉であり、主に現場作業をともなう業務を揶揄するワードとして使用されることが多いものです。製造現場や食品加工場など、身体への負荷が強い現場作業は特に3Kに該当するシーンが多いことから、自社の従業員ではなく、必然的に外部からの派遣社員で充当しようとする力学が働くものです。「派遣社員には3K案件が多い」という印象が先行しているのも、あながち間違いとは言えないでしょう。
これに対して、株式会社アウトソーシングテクノロジーが提唱するのが「派遣2.0」モデルです。最新のテクノロジーを組み合わせた派遣業態を確立することで、効率化にともなう生産性向上はもちろん、それに付随して、従来からの3Kの脱却も実現する事業モデルです。
本記事では、この「派遣2.0」モデルの概要と、同モデルの実現によってもたらされる世界像、そしてAR/VRなどのテクノロジーを活用した具体事例について、それぞれ解説します。
「派遣2.0」モデルとは
派遣2.0とは、一言でお伝えすると、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を⼈材でドライブさせる、次世代型の派遣モデルのことです。
具体的には、従来からの人員派遣に加えて、DXをはじめとする各種デジタルテクノロジーニーズに最適なソフトウェアおよびハードウェアを、まとめて支援するというものです。従来だと10名のメンバーを派遣するというソリューションだったものを、たとえば5名のメンバーを派遣するにとどめ、その代わりにRPAやAR/VRソリューションといった必要なシステムもあわせて提供するというイメージです。
なぜ派遣2.0の考え方が必要なのか
なぜ、この派遣2.0モデルが必要かというと、少子高齢化にともなう労働人口の減少トレンドがあげられます。熟練工をはじめとする技術者の不足が顕著になると予想されることから、その不足分を補うテクノロジーの提案が、これからの時代で不可欠になるのです。
「それならば企業内従業員を教育して、企業内にITシステムを導入すれば良いのでは?」
このように考える人がいるかもしれませんが、ここでポイントとなるのが、企業による雇用リスクの増大です。必要以上の人員を抱えることは、これからのVUCA時代(※)において、企業にとっての大きなリスクになります。環境の変動にともなって柔軟に構造を変動できる組織を作る必要性が高まっているからこそ、企業の組織体はスリムでDXに最適化した形にすることが大切です。
※VUCA時代:不確実性の高い時代のことを示す言葉。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をつなぎ合わせた造語
また、高付加価値の技術人材を一企業が抱え込まず、派遣という形で複数企業がシェアリングできる環境を整えることで、人材の流動性が高まり、該当人材にとっては報酬も高まることから、社会と本人と企業の「三方よし」が実現することにもなります。
アウトソーシングテクノロジーによる派遣2.0スキーム
次に、派遣2.0の具体的なスキームをみていきましょう。ここでは、派遣2.0モデルの提唱企業であるアウトソーシングテクノロジーのケースを取りあげます。
同社では、派遣2.0を実現するスキームとして、「DX人材事業」と「DX支援事業」の2軸をもとにソリューションを提供しています。
DX人材事業
DX人材事業では、業務プロセスを把握し課題抽出やプロジェクトマネジメントを担う「DXビジネス⼈材」と、SaaS・クラウド技術を中⼼とする「デジタル技術人材」を、それぞれの課題にフィットさせる形で派遣しています。
この際に重要なことは、アウトソーシングテクノロジーサイドで、しっかりと該当人材の育成をしているということ。具体的には、「KEN スクール」と呼ばれる技術者育成スクールにおいて、DXに必要なスキルを持ち合わせた次世代⼈材を育成し、高付加人材にしたうえで輩出しているのです。
DX支援事業
DX支援事業では、先端技術導⼊によって⼈的課題を解決しています。具体的には、スマートグラスソリューションやセキュリティ関連ソリューション、業務管理系および作業効率系ソリューションを提供することで、派遣人材と相まったデジタル導入効果を促進することが想定されています。
なぜ、派遣2.0が「脱3K」につながるのか
なぜ、この派遣2.0モデルが「3K(きつい・きたない・危険)」の脱却につながるのでしょうか。
「きつい」からの脱却
まずは「きつい」について。きつい職場の要因はさまざまでしょうが、そのなかでもずっと立ちっぱなしだったり、重いものを運ぶ系統の作業、もしくは同じ作業を延々と行うような業務については、産業用ロボットの技術が使えることになります。たとえば、重いものを運搬する系統の作業においてはロボットアームが活躍するでしょうし、同じ操作をずっと続けるようなパソコン作業についてはRPA(※)が有効です。
※RPA:「Robotic Process Automation」の略。人が手を動かす代わりに、業務を行う自動化ツールのこと
「きたない」からの脱却
同じく「きたない」についても、現場作業で汚れる可能性のあるものについては、ドローンなどのロボットによる代替や、VRによるシミュレーション代替が考えられます。たとえば空間洗浄が必要な作業については、人が行うよりもAIカメラを搭載したドローンを活用したほうが、より広範囲で人が気付きにくい汚れにも対応してくれる可能性があります。当然、人は操縦するだけで良いので、「きたない」からは解放されることになります。
「危険」からの脱却
最後の「危険」については、人による現場作業の代わりに、VRによるシミュレーションを行うといった方法が考えられます。たとえば建築現場における作業チェックについては、実際の環境を模したデジタルツイン環境を使ってシミュレーションをすることで代替するという方法が考えられます。シミュレーションなので、チェック担当者は足場から落ちるといったリスクからは無縁となり、「危険」な工程からは外れることができるでしょう。
なお、デジタルツインについては以下の記事もご参照ください。
デジタルツインとは?VRと何が違う?国交省による「Project PLATEAU」など個別事例も解説
AR/VRを活用する派遣2.0モデル事例
最後に、AR/VRを活用した派遣2.0モデルのソリューションについて、2つの活用事例をみていきます。
長谷工コーポレーション × 「AR匠」
大手ゼネコンである株式会社長谷工コーポレーションでは、マンションの外壁をチェックする労働者不足に悩んでいました。マンションの外壁は、劣化等による剥落リスクがあることから、10年ごとにタイル貼り、石貼り、モルタル等の全面打診調査が義務付けられています。特に2020年以降はコロナ禍にともなう非接触文化の推奨によって、建物診断時の人的負担の軽減が急務だったのです。
そこで同社はアウトソーシングテクノロジーとの共同で「AR匠RESIDENCE」を開発。現場作業員がHMDを装着することで、打診棒による検査結果をMR(Mixed Reality)空間に記録し、報告⽤レポートの出⼒までを⼀気通貫でできるようにしました。
結果、従来では2名で⾏っていた検査を1名で完了できるようになり、業務全体の約30%が削減されました。
日比谷アメニス × 「TeamViewer フロントライン」
造園に関わるさまざまな事業を展開する株式会社日比谷アメニスでは、他の同業他社と同様に、労働力の減少と熟練者の引退、コロナによる働き方の変容、そして現場作業以外の業務工数という課題に直面していました。
そこで同社は、アウトソーシングテクノロジーが提供するARソリューション「TeamViewer フロントライン」を採用し、現場作業の遠隔支援と報告書作成の2点でARグラスを活用しました。
具体的には、映像つきの遠隔通話によって現地に上席者が同行する必要がなくなり、初級者であっても緑地管理現場の状態確認ができるようになりました。また、長谷工コーポレーションの事例と同様に、スマートグラスのカメラ機能を使って報告書作成をシームレスに行えるようになったので、大幅な時間削減につなげることもできました。
なお、本事例の詳細については以下の記事もご参照ください。
スマートグラスを使って「造園技術」の遠隔支援と報告書作成業務を効率化〜ITトレンドEXPO2021春レポート
持続的な企業支援として有効な「派遣2.0」モデル
今回は、アウトソーシングテクノロジーが提唱する「派遣2.0」モデルの概要と、同モデルの実現によってもたらされる世界像、そしてAR/VRなどのテクノロジーを活用した具体事例について、それぞれご紹介しました。
労働人口の減少はもはや不可避であるからこそ、デジタルテクノロジーを積極的に活用し、それらも含めた形で提供する派遣2.0モデルは、持続的な企業支援のあり方として非常に有効だと言えるでしょう。
技術者不足やDX運用で悩んでいる企業担当者は、ぜひ一度、気軽にご相談ください。