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タグチメソッドとは?品質管理や実験計画法との違いについても解説

タグチメソッドとは?品質管理や実験計画法との違いについても解説

タグチメソッドとは、設計段階における市場で発生する製品の不具合の防止を目的とした工学手法です。生産管理の課題となる品質トラブルを解決する重要な考え方でもあります。今回は、タグチメソッドにおける品質の考え方、品質管理や実験計画法との違い、タグチメソッドが生産管理にもたらすメリットについて解説します。

製造業では、日常の品質管理を実施しているにもかかわらず、量産に入ると上手くいかなかったり、出荷後に市場不良が発生したりといった問題が起こり得ます。製品開発や生産に携わる技術者は、このような不具合や品質問題の解決に多くの時間を費やすこともあるでしょう。こうした課題を別の切り口から解決する手法が「タグチメソッド」です。

今回は、タグチメソッドにおける品質の考え方や、品質管理や実験計画法との違い、タグチメソッドが生産管理にもたらすメリットについて解説します。

タグチメソッドとは?

タグチメソッドとは

タグチメソッドとは、日本の工学者として多くの功績を残した故田口玄一博士が約半世紀という長い時間をかけて考案した工学手法です。製造業では国際的に活用され、日本では「品質工学」とも呼ばれます。主な目的は、市場で発生する製品の不具合を設計段階で未然に防ぐことです。

タグチメソッドは開発・設計の時点で品質をつくり込むためのガイドラインであると同時に、必要な分析ツールの集まりでもあります。

品質管理との違いは?

タグチメソッド(品質工学)と混同しやすい考え方が「品質管理」です。ふたつとも「品質」に関係しますが、「どの工程の品質を向上させるか」という点で大きな違いがあります。

品質管理は、製造工程で不具合を発生させないことを重視します。不良品が出にくい製造方法の採用、不良品を検出しやすいシステムの導入といった方法は、品質管理の考え方がベースです。

ー方でタグチメソッドは、製造工程で不具合が発生しない製品の設計を重視します。製造時には、使用する装置の摩耗具合や工場内の温度などの箇所に「ばらつき」が生じる可能性があります。「ばらつき」とは、ある特定のデータを複数集めたとき、それぞれのデータが異なる値になる現象です。

タグチメソッドでは、ばらつきが予期せぬ不良の原因になる可能性に着目しています。ばらつきに影響されにくい設計をすれば、いかなる方法や環境で製造してもびくともしない製品が期待できます。このような設計は「ロバスト(強固な)設計」と呼ばれ、タグチメゾットにおいて重要な概念です。

関連記事:品質管理の4Mとは?変更管理の方法や5M+1や6Mとの違い

実験計画法との違いは?

品質管理以外のタグチメソッドと関係が深い用語として、「実験計画法」が挙げられます。実験計画法は、統計学をもちいて実験の回数を減らす「直交表」によって因果関係を把握する手法です。特定の原因を組み合わせて何らかの結果を得る実験を行うとき、その原因の組み合わせを最小限にできます。

タグチメソッドにおける実験計画法は、主にばらつきをおさえるための製造条件を細かく整理するために使用します。そのうえで、タグチメソッドに含まれるさまざまな技法を駆使して、実際にばらつきを抑える実験を行うのです。

つまり、実験計画法はタグチメソッドにおけるツールのひとつであり、ふたつは厳密には別物であると把握しておきましょう。

タグチメソッドにおける品質の考え方

タグチメソッドでの品質は、「まったくばらつきのない理想状態にどれくらい近いか」という尺度で定量化されます。理想状態を良しとするわけではありません。

ばらつきの発生自体は問題ではなく、ばらつきの大きさが品質のムラを生み出しています。つまり、ばらつきが大きくなる要因を探す方法と、その要因による影響を抑える方法が重要となります。これらを提供するのがタグチメソッドです。

また、タグチメソッドは「品質活動は経済性とつながりを持たせるべき」という考え方をベースにしている点が重要です。この思想により、理想状態からずれている度合いは「損害金額」で表現されます。すなわち、製品を使う人にとっての品質(市場品質)について、製造工程も含め社会全体の損失金額で考えるのがタグチメソッドです。

タグチメソッドはQCDの同時達成がねらい

タグチメソッドはQCDが目的

タグチメソッドが実現するばらつきに強い設計は、製造業になにをもたらすのでしょうか。

一般的に生産管理の分野では、「QCD」を重視すべきといわれています。QCDとは、顧客の満足度につながる次の3要素です。

  • Q(Quality):品質
  • C(Cost):コスト
  • D(Delivery):納期

これらの要素は、ひとつを満たそうとすると他が犠牲になってしまうトレードオフの性質があり、同時達成が難しいとされています。しかし、タグチメソッドの活用で、この課題を克服できる可能性が高まるのです。QCDそれぞれの要素について、タグチメソッドがもたらすメリットを解説します。

関連記事:生産管理の「QCD」とは?プロセス改善で向上する企業の提供価値

クレームを減らす(Q)

タグチメソッドが重視するロバスト設計は、製造時の状況の変化に加え、出荷後における顧客のもとでの使用状況の変化にも強い製品をめざします。そして不良品が出る前提でトライ&エラーを繰り返すのではなく、不具合の予測ではじめから不良が出ない理想状態を追求するのです。この考え方によって、製造時の不良だけでなく、出荷後の市場における不良の予防も期待できます。

市場での品質向上でクレームを未然に減らし、顧客満足度やブランドイメージの向上が可能になるでしょう。

コストを削減する(C)

タグチメソッドを使用する場合、コストを削減できるポイントがふたつあります。

ひとつは、製造工程で発生する不良をリカバリーするコストです。タグチメソッドを使用しない場合は製品にロバスト設計が施されていないため、「不良品の原因は製造や品質管理の方法に問題があるのではないか」という結論になりやすくなります。

製造方法や品質管理方法の再検討や、違う製造装置の購入には大きなコストが必要です。

タグチメソッドを使用する場合、製造工程以降のやり方を変えずに、不良品が出ない設計を行うため、リカバリーにかかるコスト自体が発生しにくくなります。

ふたつめは、出荷後の不良によってリコールが必要になった際のコストです。リコールには、顧客へ通知するコストや不良品の回収・修理コスト、代替品の保管コストなど多くのコストを必要とします。経済的な損失だけでなく、顧客からの信用を失うリスクもあるでしょう。このような、事業に悪影響を及ぼすリスクは、タグチメソッドで出荷後の不良を減らすと回避しやすくなります。

開発期間を短縮する(D)

設計・開発の工程では、さまざまな分析や実験がおこなわれます。そこで重要となるのが、因果関係の整理です。未知の結果を因子の組み合わせから求めたり、求めたい結果を導き出せる因子を探したりと、複数の因子のパターンをサンプルとして用意しなければなりません。

しかしタグチメソッドでは実験計画法をもちいるため、最適解を出すためのサンプル数が最小限におさえられ、新製品の開発期間を大幅に短縮できます。

設計・開発工程以外では、企画工程でのコンジョイント分析のようなマーケティング手法にも実験計画法が役立つ場合もあります。

関連記事:コンジョイント分析とは?活用方法ややり方について解説

タグチメソッドを理解し、取り入れることが理想

タグチメソッドは工学手法の1つですが、単なる便利ツールではなく、市場の目線で品質を考える思想体系でもあります。つかうべき工法やその適用範囲はかなり膨大で、ものづくりへ落とし込むには統計学や工学の知識が不可欠です。

タグチメソッドをすべて理解した上での活用は簡単ではありませんが、もっとも重要なのは「品質にばらつきが出ない設計」です。生産管理におけるQCDの網羅を実現するためにも、タグチメソッドを上手に取り入れましょう。

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