明確になっている課題に対し、具体的にどうすればその課題を解決できるのかがわからない場面は、品質管理や現場改善の分野に起こり得るものです。
そうした場面で役立つのが、言語データを整理して現状を分析する「新QC七つ道具」のひとつである「系統図法」です。
今回は、系統図法についての基礎知識やメリット、類似手法との違いや実際の進め方を解説します。
新QC7つ道具のひとつ「系統図法」とは?
系統図法とは、目的と手段を系統づけ、その体系を枝分かれさせてわかりやすく図式(系統図)化する手法です。
新QC7つ道具のひとつに数えられ、品質管理の場面で役立ちます。
系統図法には2種類があり、課題解決の手段を整理する「方策展開型」と、改善対策の内容を整理する「構成要素展開型」に分類可能です。
品質管理においては課題を発見することがより重視されやすいため、前者の「方策展開型」が使われるのが一般的です。そのため、本記事ではそちらの種類を中心にまとめていきます。
系統図は、まず左端に「目的」を設定し、その右に目的を達成するための「手段」を展開する形で図に表します。さらに、ある手段を「目的」として、それを達成するための手段を右へ展開していきます。
この一連の流れにより、具体的な手段の追究を行うのが系統図法だといえます。
系統図法を作成するメリット
系統図法を作成するメリットは、「情報を見える化」できる部分に集約されています。
「見える化」によって情報を体系的に整理することで、目的と各対策の関連性が一目でわかるようになります。
これによって、有効な解決策を見出すと同時に、「他に手段はないのか?」といった抜けや漏れがないかを確認しやすいのです。
また、職場内で品質管理活動を行う際は、メンバーと情報を共有しながら進める場面が多いでしょう。情報を図に表すことで、メンバー同士の認識が合っているかを確認することは重要です。
連関図法や親和図法との違い
系統図法と同じ新QC7つ道具の中には、「連関図法」と「親和図法」と呼ばれる手法があります。名前が似ていて混同しやすいため、これらふたつの図法と系統図法の違いを整理してみましょう。
連関図法と系統図法の違い
連関図法は、あるものごとに関する原因と結果の相関について、それぞれの因果関係を図式(連関図)化して整理する手法です。主に現場がかかえる課題の原因を明確にする目的で使われます。
連関図法が「課題の明確化」を目的とするのに対し、系統図法は「課題を解決する方法の模索」を目的としています。
関連記事:新QC7つ道具のひとつ、連関図法とは?活用して現場改善を徹底
親和図法と系統図法の違い
親和図法は、ある課題に対する事実・意見・発想を言語データに変換し、言語データ同士の「親和性」を見つけて統合図を作っていく手法です。主に将来の漠然とした課題や未知の課題の解決策を導き出すために使われます。
親和図法が「課題を解決するアイデアを生み出す」ために特化しているのに対し、系統図法は「課題を解決する手段を具体化する」ために特化した手法であるといえます。
関連記事:【新QC7つ道具】親和図法とは?うまく活用して現場の課題を整理
系統図法との組み合わせが効果的なマトリックス図法とは?
新QC7つ道具からもうひとつ紹介したいのが、マトリックス図法です。
マトリックス図法は、検討を行う2つの要素を行と列に配置し、それぞれの関連度合いを交点に表示することで問題解決を効果的に進めていく手法です。
二次元表の中で横方向に並んだものを「行」、縦方向に並んだものを「列」と呼びます。
たとえば、行には課題の対策案を配置し、列にはその効果や実現性、コストといった評価項目を配置します。
これによって、全体を見渡しながら着眼点を見つけ結論を導き出すことができます。
このマトリックス図法と系統図法は相性が良く、組み合わせて使うと効果的だといわれています。
具体的には、系統図法で目的を達成するための手段を洗い出し、次にマトリックス図法で手段の評価を行い、取り組む事項を決めるという使い方が考えられます。
他の新QC7つ道具もチェック
新QC7つ道具には、ここまで紹介した手法に加えて、アローダイアグラム法、PDPC法、マトリックスデータ解析法の3つが含まれます。アローダイアグラム法は複雑な作業の関係やスケジュールを図にする手法であり、PDPC法は事前に様々な結果を予測し、不測の事態に備えた目標達成の方法です。そして、マトリックスデータ解析法は複数の数値データを解析し、問題の整理や解決に役立つ統計学的手法です。
すべての新QC7つ道具を駆使して課題解決に役立てましょう。
関連記事:新QC7つ道具とは?従来の7つ道具との違いや各道具を解説
関連記事:PDPC法で品質管理を徹底する。図の作り方も解説
系統図法の進め方
系統図法の進め方は、大きく分けて3つのステップから構成されています。
現場のQCチームが複数人のメンバーで系統図をつくる場面を想定しつつ、各ステップについて順番にみていきましょう。
1.目的を明確にする
まずは、現場がかかえる課題と密接にかかわる「目的」を明確化します。
課題については連関図法を用いて内容を具体化したり、現場の声をヒアリングするなどして、組織全体の共通認識と呼べるものを選びましょう。
図の作成はホワイトボードや模造紙を使い、作成内容が全員に見やすい形にすると効果的です。
今回は、「作業ミスによる不良品発生を抑制する」という目的を設定し、図の左端にラベルとして貼り付けます。
実際は「いつまでに何%不良品発生率を抑えるのか」といったように、具体的な期日や目標値をあわせて設定することになります。
2.手段を展開する
目的が設定できたら、次はそれを達成するための手段を体系的に挙げていきます。
今回の例で考えると、目的に対する手段は次のようなパターンがあります。
- 作業マニュアルを作成する
- 作業時に確認の声がけをする
- 自動化により手作業を減らす
続いて、これらの手段を実現するために必要な二次的な手段を次のように考えます。
- 作業マニュアルを作成する
⇒QCチームが電子ファイルで作成する
⇒熟練工のAさんに監修してもらう
- 作業時に確認の声がけをする
⇒毎日の朝礼時に周知徹底する
- 自動化により手作業を減らす
⇒自動化可能な作業を特定する
⇒自動化できる機械やロボットを検討する
このように、手段は具体的に実施可能なレベルまで掘り下げていくため、二次的、三次的、もしくはそれ以上展開されていく可能性があります。
3.抜け漏れがないか確認する
最初に設定した目的から手段の派生がすべて完了したら、最後に系統図全体を見渡し、抜け漏れがないかを確認します。
「その目的を果たすための手段はこれで十分か?適切か?」などと疑ってみたり、有識者や関係者にヒアリングしましょう。
そこで気付いたことがあれば、系統図に手段を追加したり、修正することで補完します。
今回の例で考えると、次のような手段の追加があり得るでしょう。
- 作業マニュアルを作成する
⇒QCチームが電子ファイルで作成する
⇒熟練工のAさんに監修してもらう
⇒複数人によるレビューを行う
系統図法を活用して現場に効果的な改善策を
系統図法は、明確になっている課題の解決策を多角的に整理するために役立つ手法です。
系統図法単体でも効果を発揮しますが、同じ新QC7つ道具の連関図法やマトリックス図法と組み合わせるとより効果的に活用できます。
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