VRは架空の世界を現実のように体感できる技術
VRは、眠っているときに見る夢のようなものです。夢を見るときのように、体は現実世界に置いたまま、意識だけが架空の世界に入り込んでいきます。そして、夢でもそうであるように、架空の世界がまるで現実であるかのように錯覚させられます。
たとえば夢の中で、あなたが空を飛んでいるとしましょう。上を向けば空と太陽があり、下を向けば家々が小さく見えます。あなたはまるで自分が鳥になったかのように感じるでしょう。
VRを使うときも、頭の向きを変えるとそれに応じて見える景色が変わります。上を向けば空と太陽があり、下を向けば家々が小さく見えるでしょう。もしも鳥の視点のVRを体験したとすれば、夢と同じように、まるで自分が飛んでいるかのように感じることができます。
リアルさを感じられる
VRの魅力は、通常の映像作品を見るときには得られない、リアルさを感じられることです。
たとえばVRの中で、あなたが空の上を鳥のように飛んでいるときに、突然急降下したとしましょう。目に映るのは、小さく見えていた家々がだんだんと大きくなり、地面が近づいてくる様子です。「怖い! 死にたくない!」と、まるで本当に空から落ちているかのように、強い恐怖心を感じるはずです。
このリアルな感情は「架空の世界が現実のように感じられる錯覚」から生まれます。
見ている映像は自分視点
「架空の世界が現実のように感じられる」要因のひとつは、自分が見ている映像が「自分視点」であることです。
奥行きのある映像を楽しめる4Dの映画と比較してみましょう。立体的な映像を楽しめる点はVRと共通していますが、映画はあくまで「客席からの視点」で映画を「見ている」だけ。一方VRは「その世界に入り込んで」、「その世界にいる登場人物の視点で」見ています。
たとえばアクション映画で、主人公がパリの凱旋門前をバイクにまたがり、猛スピードで駆け巡っているシーンがあるとしましょう。映画館の映像は「主人公がバイクに乗っているシーン」ですが、VRなら「あなたが主人公の視点で、バイクにまたがりパリの凱旋門前を猛スピードで走り回って」います。
もはや「見る」ではなく「VRの世界に入って」います。この自分視点で臨場感のある映像によって、架空の世界に没入することができます。
どこを見渡しても架空の世界
リアルさを感じられるもうひとつの要因は、「どこを見渡しても架空の世界」になることです。上下を見ても、左右を見ても、後ろを見ても、VRの架空の世界が広がっています。
たとえば「主人公がバイクでパリの凱旋門前を猛スピードで走りまわるVR」を体験するとき、あなたは上を見ても、左右を見ても、そこにはパリの凱旋門前の光景が広がっています。一方映画館では、スクリーンから目をそらすと、前の席に座っている観客の後頭部が見えてしまいます。映画のアクションシーンを見てハラハラドキドキしても、一瞬で気持ちが覚めてしまうでしょう。
VRを利用するときに必要なデバイス
VRは「どこを見渡しても架空の世界」で「自分視点の映像」を見ることができるため、「臨場感がある」ことはお分かりいただけたかと思います。
では、このVRを利用するにはどのようなデバイスが必要なのでしょうか? VRのデバイスには大きく分けて下記の3タイプがあります。
- スマートフォン+ゴーグル
- スタンドアロン型VRシステム
- パソコンと接続するVRシステム
1.スマートフォン+ゴーグル
スマートフォンの画面をVR映像の表示装置として使うことができます。スマートフォンを目の前の位置に合わせ、外部からの光を遮断するためのゴーグルとセットで使います。
2.スタンドアロン型VRシステム
スタンドアロン型のVRシステムは、ゴーグルに表示装置とコンピューターが内蔵されています。設定時にパソコンやスマートフォンと接続し、頭にゴーグル単体を装着するだけ。スマートフォンをセットするタイプのVRよりも高品質のVR体験ができます。
3.パソコンと接続するVRシステム
このタイプのVRシステムでは、接続された高性能パソコンで画像を処理するため、解像度が高いグラフィックでVRを楽しむことができます。ただしパソコンを別途用意する必要があるため、比較的初期費用が高額になります。
ビジネスのVR活用
VRといえばゲームを想像される方は多いと思いますが、ビジネスにおいても活用されています。この章では、下記3つの業務でVRがどのように使われているのかを解説します。
- 従業員の教育・訓練
- スポーツ観戦
- モックアップ(実物大の模型)制作
1.従業員の教育・訓練
世界最大規模のスーパーマーケットストアを運営する米ウォルマートでは、社員教育にVRを取り入れています。営業中に遭遇する可能性のある出来事をコンテンツ化し、社員にVR体験として提供しています。VRを使うことで社員はより安全に学ぶことができますし、本番でミスをするリスクを軽減できます。
2.スポーツ観戦
VRを使うことでバーチャルスポーツ観戦を体験できます。試合会場まで足を運ばなくても、まるで観客席からスポーツを観戦しているかのような臨場感を味わえます。
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3.モックアップ(実物大の模型)制作
VRは製造業におけるモックアップ制作の課題を解決します。新製品開発時、コストの面からなるべく試作回数は削減したいもの。VRを使えば、CGでつくられた実寸大の試作品を目の前に投影できます。試作品をよりリアルに再現することで、課題をより早く見つけることができます。
ARとの違い
VRと混同されることが多い技術にARがあります。ARとは「Augmented Reality」の略称。日本語では「拡張現実」と訳されることが多い言葉です。拡張現実とは、現実世界にはないものを、あたかも本当にそこにある現実のように見せる技術のことです。
ARとVRの違いは「ユーザーの目に映る景色」です。VRは架空の世界、ARは現実の世界がユーザーの目に見えます。
VRを使うとき、ユーザーの目に映るのは架空の世界です。たとえば国立科学博物館のVRを起動すれば、あらゆる方向を見ても景色は国立科学博物館の館内です。実際に今自分がいる場所の景色は、目に見えません。
一方ARは、現実の景色が見えます。ARコンテンツを起動すると、CGで作成された動物が自分の部屋に現れるアプリなどがあります。
このように、現実世界にデジタルで映像やCGを加えるARに対して、バーチャルな空間をつくり出すのがVRです。
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新型コロナウイルス(COVID-19)による需要増
新型コロナウイルスによる外出自粛の影響で、VRコンテンツの閲覧数は増加傾向にあります。自宅にいながら別の場所に行くことができるVRは、今後ますます需要を増していくでしょう。
VRはスマートフォンと組み合わせれば2,000円程度から楽しめます。まだ試していない方はぜひトライしてみましょう!