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製造業が取り組むべきSDGsの重要性とは?事例も解説

製造業が取り組むべきSDGsの重要性とは?事例も解説

SDGsとは、持続可能でより良い世界を実現するための国際目標の総称です。国連サミットで設定されて以降世界中で注目を浴びるようになり、あらゆる業界で目標達成に向けた取り組みが進んでいます。今回は、SDGsの概要や重要性、製造業に焦点を当てた取り組み事例などを解説していきます。

製造業におけるSDGs

国連の調査によれば、世界人口は2020年の78億人から2030年の85億人へ増加、さらに2050年には97億人へ増加すると予想されています。

急激な人口増加が見込まれる途上国においては、貧困や飢載、社会的不平といった課題が生じやすく、先進国においてもこれまでと同じような大量生産・大量消費を続ければ、いずれ食料や資源が枯渇するおそれがあります。

また、気候変動に伴う大規模災害や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が起こしたようなパンデミックなど、世界規模で発生し得る危機の深刻さも無視できない状況です。

今回は、こうした国際情勢を受けて注目を浴びている「SDGs」という理念について、概要や重要性から、製造業でSDGsに向けて取り組める内容の事例まで解説していきます。

参考:「World Population Prospects 2019: Data Booklet」国際連合経済社会局
関連記事:製造業におけるウィズコロナ時代の生存戦略とは?
関連記事:カギはDXにあり。製造業におけるアフターコロナ

SDGsとは?持続可能な社会の実現に向けて

SDGsとは

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、2015年9月に国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」における国際目標のテーマです。

SDGsは、2030年までに持続可能でより良い世界を実現するため、環境・経済・社会が抱える課題に関する17の目標と、働きかけるべき169のターゲットで構成されています。

持続可能な開発は、将来の世代が必要とする資源を損なわず、自然の脅威にも耐えられるような社会基盤の構築を意味します。こうした社会の重要度が高まっていることから、SDGsへの注目度も近年ますます向上しているのです。

上記サミット開催以降、各国では行政や民間企業、研究機関などが積極的に目標達成に向けた取り組みを進めるようになりました。

参考:「持続可能な開発目標(SDGs)達成に 向けて日本が果たす役割」外務省 国際協力局 地球規模課題総括課
参考:「2030アジェンダ」国際連合広報センター

製造業におけるSDGsの重要性

SDGsの重要性

では、製造業におけるSDGsをいかに考えるべきでしょうか。

製造業は、電子機器や自動車などの利器から、食品・医薬品・医療機器といった必需品まで、あらゆるモノの供給を担う業界です。

社会は一定の供給がなければ成り立たないため、製造業は持続可能な世界にとって重要な責任を負っていると言えるでしょう。

2018年の富士通総研による調査では、対象企業の23%がSDGsを参考に、10%が検討中とのことです。

とくに、食料品や電気機器、化学・医薬品の分野に、参考・検討中の企業が多いことも判明しています。

参考:「日本企業のSDGsの取り組みの現状と課題」株式会社富士通総研

製造業ではSDGsに向けてどう取り組むべきか

製造業におけるSDGsの取り組み

製造業における企業がSDGsに向けて取り組む場合、具体的に何を目指すべきなのでしょうか。

SDGsに設定される17の目標の多くは製造業と結び付きますが、中でも特にかかわりの深い項目を4つピックアップしました。

各項目について、概要や目的、また達成に向けて取り組める大枠の内容について解説します。

飢餓をゼロにする

SDGs2番目の目標である「飢餓をゼロにする」は、安定した食料供給によって、主に貧困地域で多発する飢餓を終わらせるために設定された目標です。

目標達成のため可能な取り組みとしては、以下の内容が挙げられます。

  • 食料品生産拠点の増築
  • 低所得者にも行き渡る低コスト商品の開発
  • 流通チャネルの拡大
  • 持続可能な農業の促進

働きがいも経済成長も

SDGs8番目の目標である「働きがいも経済成長も」は、あらゆる業界における持続可能な経済成長を達成しつつ、すべての人々の生産的な雇用と、働きがいのある人間らしい雇用を促進するために設定されました。

目標達成のため可能な取り組みとしては、以下の内容が挙げられます。

  • 現地生産体制の拡充による雇用の創出
  • 従業員のスキル向上に向けた教育の実施
  • 労働環境の改善や福利厚生の充実

当目標には、生産性の高い仕組みの中で人間が前向きが労働できれば、おのずと経済成長へと繋がるという理念が根底にあります。

産業と技術革新の基盤をつくろう

SDGs9番目の目標である「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、大きく分けて「インフラの強靭化」と「イノベーションの促進」の2つを達成するために設定されました。

目標達成のため可能な取り組みとしては、以下の内容が挙げられます。

  • 輸送機器や建設用重機、産業用ロボットの開発と製造
  • イノベーションを誘発できる組織づくり
  • 研究機関との積極的な連携

インフラに関しては大型機械の製造が可能なメーカーに限定されますが、イノベーションを促進する仕組みづくりはどの企業にも実現できる可能性があります。

また、産業用ロボットの導入で生産性や持続可能性向上を目指す立場の企業にとっても重要な目標です。

関連記事:産業用ロボットとは?主な5種類や事例、他のロボットとの違いを解説
関連記事:【法律・お金・実務】産業用ロボットの導入に最低限必要な知識まとめ

つくる責任つかう責任

SDGs12番目の目標である「つくる責任つかう責任」は、持続可能な消費と生産のパターンを確保するために設定されました。

目標達成のため可能な取り組みとしては、以下の内容が挙げられます。

  • 長期間使用できる製品の開発
  • 生産におけるあらゆる投入物および廃棄物を削減、再生、リサイクルできる工程の開発
  • 生産工場や流通ネットワーク全体でのエネルギー効率を高める

生産者は、製品を製造する(つくる)立場であり、資源やエネルギーをつかう立場でもあります。

この性質に対し、資源の枯渇や環境汚染といった課題に対する責任が生じるのです。

SDGsの取り組み事例

SDGsの取り組み

では、先ほど挙げた4つの目標ごとに、実際に企業が取り組んでいる事例を以下にご紹介します。

「飢餓をゼロにする」に向けた取り組み事例

富士通株式会社は、人々の食を支える「米」を取引するためのデジタル・プラットフォーム運営母体「ライスエクスチェンジ(Ricex)」のプロジェクトに参加しています。

同プラットフォームは、ブロックチェーン導入と取引プロセス自動化によって、米取引に関する全てのプロセスの効率性と信頼性を高めると同時に、米の栽培状況を管理して持続可能な生産に寄与します。

富士通はシステムの試作提供といった形でプロジェクトに取り組み、農家の収益や消費者への最適な流通の実現を目指しています。

参考:「SDGsへの取り組み : 富士通」富士通株式会社

「働きがいも経済成長も」に向けた取り組み事例

大和ハウス工業株式会社は、働き方改革への支援として、仕事と子育てを両立できる次世代型多機能物流施設「DPL流山」を開設しました。

同施設は物流業で働く人のための施設であると同時に、保育施設が併設された「職育近接」の労働環境でもあります。

また、免震システムや非常用自家発電機を設置するなど、防災配慮設計も徹底されているとのことです。

従業員が親子で通勤して保育所に子どもを預け、緊急時でもすぐ対応できる安心感の中働ける環境が整備されるため、「働きがい」を生み出す仕組みだといえます。

参考:「DPL流山I|マルチテナント型物流施設」大和ハウス工業株式会社

「産業と技術革新の基盤を作る」に向けた取り組み事例

株式会社JVCケンウッドは、社内に埋もれているアイデアの発掘と、イノベーションを促進する土壌形成のため、「イノベーションアクト」と呼ばれる活動に取り組んでいます。

この活動では、技術アイデアやビジネスアイデアに関するオーディションなどのプログラムや、従業員がアイデアを気軽に投稿できる専用の社内サイトを通じて、従業員から新たな技術・商品アイデアを得る仕組みを確立するのが狙いです。

眠っているアイデアをビジネスにつながるだけでなく、表彰制度を設けることで従業員全体のモチベーションの向上にも寄与しています。

参考:「SDGsへの貢献 | サステナビリティ」株式会社JVCケンウッド

「つくる責任 つかう責任」に向けた取り組み事例

富士ゼロックス株式会社は、「使用済み商品は、廃棄物ではなく、貴重な資源である」という考えのもと、廃棄・汚染・不法投棄をゼロにするための資源循環システムを運用しています。

このシステムは、以下の3つで構成されます。

  • 使用済み商品を資源として有効利用する「クローズド・ループ・システム」
  • 部品の再使用を前提にした「インバース・マニュファクチャリング(逆製造)」
  • 再使用できない部品の分別・資源化を行う「ゼロ・エミッション」

同社システムは日本以外にも東南アジアやオーストラリアでも導入しており、2010年以来、関連事業全体で最低でも99.5%のリサイクル率を維持しているとのことです。

参考:「富士ゼロックスの資源循環システム」富士ゼロックス株式会社

社会的価値と経済的価値の創造を両立する経営を目指そう

飲料の製造・販売などを展開するキリンホールディングスは2020年2月、原材料などの仕入れ先企業約250社に対して、「今後はその企業が気候変動や環境対策をしっかり行っているかどうかを含めて、取引先を選んでいく」とする方針を発表しました。

参考:「新型コロナ流行の今、SDGsの意義とは : 読売クオータリー : まとめ読み : ニュース」読売新聞

ここで仕入れ先企業目線に立つと、SDGsに向けた取り組みを行っていない場合、ビジネスパートナーとして選ばれなくなる可能性を危惧するべきです。

すでに社会の潮流として、持続可能性を重視すべきという考え方は普及しつつあります。

利益の一部を社会に還元するCSR(企業の社会的責任)をさらに発展させ、「社会的価値の創造と経済的価値の創造の両立する経営」が求められるのです。

SDGsが設定する目標は多岐にわたり、それに対する取り組み方も千差万別です。

まずはSDGsと自らの取り扱う事業とのつながりを内外部に広める取り組みから始めて行きましょう。

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