製造現場の人手不足や生産性向上など、メリットが山ほどあるロボット導入。しかし実際にロボットを導入するまでには、大きなコストがかかります。しかし、導入までのポイントを理解してスムーズに検討できれば、無駄な負担を省き、コストを最小限に抑えられます。
そこで、ロボット導入を検討するときにチェックすべき項目をまとめました。これらのポイントをおさえて、スムーズに検討を進めましょう。
【情報収集・検討フェーズ】ロボット導入の決定まで
ロボットを導入するまでは、おおまかに「ロボット導入を検討するフェーズ」と「導入が決定してからの準備フェーズ」に分けられます。まず最初に、導入を検討する際にどんなことに注意すべきなのか、そのポイントと手順について解説します。
1.多様なメンバー構成で社内検討チームの結成
ロボット導入の検討をはじめるときは、社内検討チームを結成することからはじまります。検討チームは、経営者や現場の責任者だけでなく、広い部門のメンバーで構成されるのが理想です。
異なる部門のメンバーで議論することで、多角的な検証が可能になります。そのため、ロボット導入における、社内での情報共有やメリットの理解が容易になります。
2.ロボットが最も効果を発揮する作業のリストアップ
チームを立ち上げたら、ロボットがどんな作業をすれば課題を解決してくれるのか検討していきましょう。
各作業の内容や稼働時間、生産量、作業変更の頻度などを整理し、どの工程でロボットを使えば最も効果的か検討します。
作業現場の状況を把握するためには、現場の課題を最も理解している作業員からのヒアリングが効果的です。ロボットと人がそれぞれ最大のパフォーマンスを発揮できるように、最適な作業をピックアップしましょう。
3.ロボットが正常に動作する設置条件の確認
ロボット導入を検討するなら、設置スペースも確保しなければなりません。作業場の天井の高さや幅など、設置条件を正確に把握しましょう。また、ロボット設置に伴うほかの作業スペースや動線への影響も同時に検証していきます。
このほかに、ロボットが正常に動作する環境を整える必要があります。温度や湿度、防水防滴、振動や気圧などに加え、動力電源などを把握し、ロボットを設置するのに適している環境をつくれれるか確認しましょう。
さらに設置するロボットのサイズや種類によっては、安全柵やセンサーの設置も必要となる場合があります。この点について、安全衛生規則などの関連法規を調べて把握しておきましょう。
4.導入コストの試算だけでなく、長期的な費用対効果の検証
ロボットの具体的な作業内容や設置場所の目処が立ったら、計画に基づいて費用を見積ります。ロボットメーカーのカタログなどを取り寄せて、導入すべきロボットの種類や価格を検討しましょう。
初期費用はロボット本体以外に、周辺機器や設備、導入後のメンテナンス、ロボットを扱う人材育成費も含まれるため、これらすべてを考慮する必要があります。
さらに初期費用だけでなく、長期的な費用対効果についても念入りに検証しましょう。作業時間の短縮や生産量の増加など、想定している効果がどのくらいの期間で出せそうかを把握しておくと、導入後の効果検証が容易になります。
また導入後に、ロボットがスムーズに作動するとは限りません。ロボット導入済みの企業の事例を参考に、思わぬトラブルによる出費も想定しておきましょう。トラブルに陥ったときのリカバリー方法なども念頭に置いておくことで、想定外のコストを最小限に抑えることができます。
5.導入の具体的な流れをシステムインテグレータ(SIer)に相談
実際に、ロボット導入にまつわる全ての作業を自社で実行するのは大変です。特に、初めて導入を検討する企業にとっては、わからないことだらけでしょう。
そこで、社内で大まかな検討を終えたら、SIer(エスアイアー)と呼ばれる、ロボット導入のサポート事業者「システムインテグレータ」に相談するのがおすすめです。
SIerはロボットシステムのプロフェッショナル。ロボット導入の検討から、導入時の支援、場合によっては、初期運転サポートや導入後のメンテナンスまでを一貫して行ってくれる事業者もあります。
自社に合ったSIerが見つかれば、導入がスムーズに進むので、取引のある企業などからSIerの情報を集めておきましょう。
【導入決定後の準備フェーズ】導入決定後から本格稼働まで
これまでは、「ロボット導入を検討するフェーズ」を解説してきました。これからは導入が決定してから、ロボットが実際に稼働をはじめるまで、どんな準備をすべきかについて解説します。
1.本格稼働までのスケジュールを明確化
導入が決定したら、本格稼働までのスケジュールを立てます。稼働開始時期を基準に、メーカー選定やロボットの仕様決定、システム導入、運用テスト、研修など、必要項目をリストアップして、それぞれの期日を明確にしましょう。繁忙期など社内の事情も考慮しながら、現実的な計画を立てることが大切です。
2.希望するロボットの仕様書を作成する
ロボットの仕様書は、導入目的のほか、姿勢や構造、動作範囲、最大速度、可搬重量、既存ラインとの関係など、細かい項目を見直しながら作成します。
ロボットの具体的な仕様が知りたいときは、ロボットメーカーやSIerが心強い味方になります。希望する仕様のロボットを導入するために、必要に応じてアドバイスをもらいましょう。
3.ロボットを扱う運用メンバーの選定と育成
ロボットは導入するだけでは運用できません。なぜなら、ロボットを適切に扱える人材が必要だからです。導入が決まったら、なるべく早く社内のロボット運用メンバーを決めましょう。メンバーは、ロボットにまつわる知識や操作方法について、メーカーやSIerの協力を得ながら学びます。
また事業者には、ロボットを扱う労働者に対し、労働安全衛生法に基づく安全教育や特別教育を受けさせることが義務付けられています。安全特別教育は中央労働災害防止協会や民間企業などが行っています。
4.金銭的な負担を軽減する公的補助金の利用を検討
ロボット導入には公的な補助金制度があります。その一つがロボット導入実証事業。一般社団法人日本ロボット工業会が、経済産業省からの補助金を受けて実施するものです。
ロボットの活用領域などによって要件や金額が異なるため、慎重に確認しましょう。このほかにも、ものづくり補助金や自治体の助成金制度などもあるので、利用できるかどうかよく調べておくことが重要です。
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導入までの道のりは長いが、それに見合うメリットは必ずある
ロボットを導入するまでには、長い準備期間が必要です。導入が初めての場合は、不安に感じたり戸惑ったりすることも多いかもしれません。
こうした工程を自社で全て行うのが困難な場合は、SIerに依頼するとよいでしょう。ロボットの導入を準備から導入後まで一環してコンサルティングしてくれるSIerと協力することで、ロボット導入におけるコストを最小限にしてくれるはずです。
導入までの道のりは長いですが、社内や社外の人と協力し合いながら入念に計画を立てて、スムーズなロボット導入を目指しましょう。