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パートナーシップ構築宣言とは?企業が取り組むべき理由と実践例を詳しく解説

購買・受発注

パートナーシップ構築宣言とは?企業が取り組むべき理由と実践例を詳しく解説

近年、サプライチェーンにおける取引適正化や価格転嫁の円滑化が、製造業にとって喫緊の経営課題となっています。原材料価格の高騰や人件費の上昇が続く中、大企業と中小企業が共存共栄できる取引環境の整備が求められています。本記事では、製造業の管理者が知っておくべきパートナーシップ構築宣言の基本から実践方法まで、補助金加点などのメリットも含めて網羅的に解説します。

パートナーシップ構築宣言の定義と基本構成

パートナーシップ構築宣言は、発注側の立場にある事業者が、サプライチェーン全体の付加価値向上と大企業・中小企業の共存共栄を目指し、代表権のある者の名前で公表する自主的な宣言制度です。この制度は下請振興法の趣旨に沿って設計されており、企業が取引適正化に向けた姿勢を明確にする仕組みとして位置づけられています。

制度の目的と社会的背景

パートナーシップ構築宣言の主な目的は、大企業と中小企業間の取引適正化と価格転嫁の円滑化にあります。近年、原材料費や人件費の上昇が続いているにもかかわらず、中小企業が価格転嫁しづらい構造が問題視されてきました。

この課題に対して、下請振興法や独占禁止法などの規制的アプローチだけでなく、企業の自主的な取り組みを促すソフトな仕組みとして本制度が整備されました。サプライチェーン全体での付加価値向上と生産性向上を実現するため、企業間の対等なパートナーシップ構築が重視されています。

宣言に必ず含まれる2つの核心要素

パートナーシップ構築宣言には、必ず以下の2つの要素を含むことが求められています。第一に「サプライチェーン全体の共存共栄と新たな連携」に関する方針です。これは単なる取引条件の改善にとどまらず、協業による新事業創出やDX推進など、サプライチェーン全体での価値創造を視野に入れた内容となります。

第二に「下請企業との望ましい取引慣行(振興基準)の遵守」です。具体的には、契約条件の明確化と書面交付、不当な買いたたきや支払遅延の禁止、型・治具・運送費などの費用負担の適正化、価格交渉や価格転嫁の適切な実施などが該当します。

公表方法と専用ロゴマークの活用

宣言内容は、専用ポータルサイトに掲載されます。企業は自社で宣言内容を作成し、このポータルサイトに登録する形で公表を行います。宣言を行った企業は、専用ロゴマークを名刺やウェブサイト、会社案内などに使用することができ、自社の取り組みを対外的にアピールする手段として活用できます。

このロゴマークは、取引先や金融機関、求職者などに対して、自社が公正な取引とサプライチェーン全体の発展に貢献する姿勢を示す視覚的なシンボルとなります。下記の表が示すように、パートナーシップ構築宣言は単なる取引条件の改善だけでなく、サプライチェーン全体での価値創造まで視野に入れた包括的な取り組みとなっています。

構成要素内容具体例
基本方針サプライチェーン全体の取引に関する姿勢共存共栄、
長期的パートナーシップ、
付加価値向上への貢献
振興基準の遵守望ましい取引慣行の具体的実践項目契約書面化、
価格交渉の実施、
費用負担の適正化
付加価値向上施策協業・連携による価値創造の取り組み共同開発、
DX推進、
人材育成支援

パートナーシップ構築宣言の歴史的変遷

パートナーシップ構築宣言は、下請振興法の改正と連動する形で政策パッケージの一環として整備されました。制度の背景には、従来の規制的アプローチだけでは解決しきれなかった取引慣行の問題があり、企業の自主的な取り組みを促進する新たな枠組みの必要性が認識されていました。

制度整備の経緯と政策的位置づけ

下請振興法の改正資料では、業界団体が自主行動計画で振興基準遵守を掲げることと、個別企業がパートナーシップ構築宣言で振興基準を遵守する旨を公表することが、連動した取り組みとして示されています。

84の業界団体が自主行動計画を策定しており、これと宣言制度が両輪となって取引適正化を推進する構造となっています。宣言のひな形も振興基準を参照して作成・改定されることが期待されており、法制度と自主的取り組みが相互に補完する設計となっています。

普及状況と政府・自治体の推進活動

資料によれば、約7万社がパートナーシップ構築宣言を行っており、制度の認知度と参加企業数は着実に増加しています。国や自治体、経済団体が連携して宣言普及のための協定締結やセミナー開催を実施しており、各都道府県レベルでも独自の普及促進活動が展開されています。

価格転嫁や価格交渉に関する公的セミナーでは、宣言の活用方法が具体的に解説されるなど、制度の実効性を高めるための取り組みが継続的に行われています。

補助金制度との連携強化

パートナーシップ構築宣言は、多くの補助金・支援制度で加点項目として扱われるようになっています。中小企業成長加速化補助金では下請取引先に対する適切な取引姿勢の評価指標の一つとして言及されており、酒類業振興支援事業費補助金などでも加点対象として明記されています。

地方自治体の新事業チャレンジ補助金でも、自主宣言であることを前提としつつ加点対象として扱われるなど、政策的なインセンティブ設計が整備されています。この補助金との連携により、企業が宣言を行う実務的なメリットが明確化され、制度の普及が加速しています。

  • 下請振興法改正と連動した制度設計により法的枠組みとの整合性を確保
  • 84の業界団体が自主行動計画で振興基準遵守を掲げ業界全体の取り組みを推進
  • 約7万社が宣言を行い製造業を中心に幅広い業種で導入が進展
  • 国・自治体・経済団体が協定締結やセミナー開催で普及活動を展開
  • 複数の補助金制度で加点項目として扱われ実務的なメリットが明確化

上記の推進活動により、パートナーシップ構築宣言はSDGsやESGの文脈でも注目され、サステナビリティ経営の一環として位置づけられるようになっています。

企業がパートナーシップ構築宣言に取り組むべき理由

製造業の管理者にとって、パートナーシップ構築宣言への取り組みは単なる形式的な対応ではなく、経営戦略上の重要な選択肢となっています。発注者側と受注者側の双方にメリットがあり、サプライチェーン全体の競争力向上につながる可能性があります。

発注者側企業のメリットと戦略的意義

発注者側の企業にとって、パートナーシップ構築宣言は対外的な信頼性向上の手段となります。取引適正化に取り組んでいることを明示することで、サステナビリティやガバナンスの一環として評価されやすくなり、ESG投資の観点からも有利に働きます。また、複数の補助金制度で加点項目となっているため、設備投資やDX推進のための資金調達において優位性を確保できます。

価格転嫁交渉の場面でも、自社が宣言していることを前提に建設的な交渉の枠組みを整えやすくなり、取引先との長期的な信頼関係構築に寄与します。さらに、契約条件の明文化や取引プロセスの見直しを通じて、社内のコンプライアンス体制が強化され、下請法違反などのリスクを低減できます。

受注者側企業が得られる具体的な効果

中小企業などの受注者側にとって、取引先が宣言企業であることは価格交渉の重要な根拠となります。取引先が宣言企業かをポータルサイトで確認し、宣言文を印刷して交渉時に提示することで、「価格決定方法」を話題に出して価格改定の了解を得ることもできます。

これにより、価格転嫁の交渉が単発の要求ではなく、取引先自身が公表している方針に基づく対話として位置づけられ、交渉の心理的ハードルが下がります。また、契約条件の書面化や不当な取引慣行の是正が進むことで、予見可能性の高い取引関係が期待でき、経営計画の精度向上にもつながります。

サプライチェーン全体での付加価値向上

パートナーシップ構築宣言の本質的な価値は、取引条件の改善にとどまらず、サプライチェーン全体での付加価値向上にあります。適正な価格転嫁により中小企業の投資余力が生まれ、技術開発や品質向上、納期短縮などの改善活動が可能になります。発注者側と受注者側が共同開発やDX推進、人材育成支援などで協業することで、サプライチェーン全体の競争力が強化されます。

このような関係性は、単なるコスト削減競争ではなく、相互の強みを活かした価値創造へと取引関係を転換させる可能性を持っています。製造業においては、品質・納期・技術力の底上げが実現することで、最終製品の競争力向上につながり、結果として発注者側にも利益をもたらします。

ステークホルダー主なメリット留意すべき課題
発注者側企業補助金加点、
ESG評価向上、
コンプライアンス強化、
建設的な価格交渉の枠組み構築
仕入価格上昇への対応、
宣言内容と実態の整合性確保
受注者側企業価格転嫁交渉の根拠獲得、
契約条件の明確化、
予見可能性の向上
宣言の有無と実際の取引慣行の
ギャップへの対応
サプライチェーン全体付加価値向上、
技術開発促進、
品質・納期の改善、
共同開発の推進
短期的なコスト上昇と
長期的な競争力向上のバランス

この表が示すように、パートナーシップ構築宣言はステークホルダーごとに異なるメリットを提供する一方、実効性を高めるための継続的な取り組みが必要です。

パートナーシップ構築宣言の実践方法と活用事例

パートナーシップ構築宣言の効果を最大化するためには、宣言を行うだけでなく、実務の中で具体的に活用していくことが重要です。ここでは、価格交渉での活用方法、補助金申請での活用、業界レベルでの取り組みなど、実践的な活用方法を解説します。

価格交渉における宣言の戦略的活用

価格転嫁や価格交渉の実務において、パートナーシップ構築宣言は具体的なツールとして機能します。パートナーシップ構築宣言を活用する際には、まず、取引先が宣言企業かどうかを専用ポータルサイトで確認します。次に、宣言文を印刷し、価格交渉の場に持参します。

そして、宣言の「下請企業との望ましい取引慣行の遵守」を根拠として、「価格決定方法」を話題に出し、原材料費や人件費の上昇を踏まえた価格改定の必要性を説明します。このアプローチにより、価格交渉が一方的な要求ではなく、取引先自身が公表している方針に基づく建設的な対話として位置づけられます。

補助金申請での加点獲得と戦略的活用

パートナーシップ構築宣言は、ものづくり補助金や中小企業成長加速化補助金など、複数の補助金制度で加点項目として扱われています。「まずパートナーシップ構築宣言など、すぐに取得できるものから着手し、その後に時間のかかる認定を進める」という戦略が推奨される場合も老いです。宣言は自主的な公表であり、認定制度のように審査期間を待つ必要がないため、補助金申請の直前でも対応可能です。

ただし、宣言内容と実際の取引慣行が整合していることが前提となるため、社内の契約プロセスや価格決定方法を事前に整備しておくことが重要です。補助金加点を目的とするだけでなく、宣言を機に社内の取引慣行を見直し、中長期的なサプライチェーン戦略に結びつけることが理想的な活用方法となります。

業界団体・地域レベルでの集団的取り組み

個別企業の宣言に加えて、業界団体や地域レベルでの集団的な取り組みも展開されています。84の業界団体が自主行動計画で振興基準遵守を掲げており、会員企業に対して宣言を促すことで、業界全体の取引慣行改善を図る枠組みが機能しています。各都道府県でも、宣言普及に向けたセミナー開催や周知活動、補助制度との連携が進められています。

業界や地域単位での取り組みは、個別企業の努力だけでは変えにくい商慣習や取引構造を、集団的な行動変容によって改善する効果があります。特に製造業では、サプライチェーンが業界内で重層的につながっているため、業界全体での取り組みが重要な意味を持ちます。

  1. 取引先が宣言企業かを専用ポータルサイトで確認する
  2. 宣言文を印刷して価格交渉の場に持参する
  3. 振興基準遵守の項目を根拠に価格決定方法を話題にする
  4. 原材料費や人件費の上昇を具体的データで示す
  5. 定期的な価格見直しの仕組みを契約に盛り込む

これらのステップを実践することで、価格交渉が継続的な対話の枠組みとして機能し、一時的な交渉ではなく長期的なパートナーシップ構築につながります。

リスク管理と将来展望

パートナーシップ構築宣言には多くのメリットがある一方、適切に運用しなければレピュテーションリスクやコンプライアンスリスクにつながる可能性もあります。また、制度の将来的な発展可能性を理解しておくことも重要です。

宣言内容と実態の乖離によるリスク

パートナーシップ構築宣言の最大のリスクは、宣言内容と実際の取引慣行の間に乖離が生じることです。宣言を行ったにもかかわらず、不当な減額や買いたたき、支払遅延などが続いた場合、取引先からの信頼を失うだけでなく、金融機関や従業員、取引先候補企業からの評価も低下します。特に宣言企業であるがゆえに、下請振興法や独占禁止法違反が発覚した際の批判が強まる可能性があります。

このリスクを回避するためには、宣言を行う前に社内の契約プロセスや価格決定方法、費用負担ルールなどを整備し、経営層から現場までが宣言内容を理解し実践できる体制を構築することが不可欠です。また、定期的な社内監査や取引先アンケートなどを通じて、実態と宣言内容の整合性をモニタリングする仕組みも重要です。

コスト負担と競争力のバランス

取引適正化や価格転嫁を進めることで、短期的には仕入コストが上昇し、自社の価格競争力に影響する可能性があります。この課題に対しては、単なるコスト転嫁ではなく、サプライチェーン全体での付加価値向上と連動させることが解決策となります。適正な価格転嫁により取引先の投資余力が生まれ、技術開発や品質向上が進めば、最終的には自社の製品競争力向上につながります。

また、DXや共同開発などの協業により、コスト削減と付加価値向上を同時に実現できる可能性もあります。短期的なコストと長期的な競争力向上のバランスを経営判断として明確にし、社内外に説明できることが重要です。

制度の将来展望とSDGs・ESGとの連携

パートナーシップ構築宣言は、SDGsやESGのために、活用が今後さらに広がると予想されます。現在も専用ロゴマークを活用したサステナビリティ報告や統合報告書での記載が進んでいますが、将来的には環境配慮や人権尊重、情報開示などの要素が宣言内容に組み込まれる可能性があります。

ポータルサイト上でのデータ活用が進めば、業種別・規模別の宣言内容分析や、ベンチマーク、スコアリング的な使い方も出てくるかもしれません。下記の表が示すように、リスクに対する適切な対応策を講じることで、パートナーシップ構築宣言を実効性の高い経営ツールとして活用できます。

リスク・課題対応策期待される効果
宣言内容と実態の乖離社内ルール整備、定期的モニタリング、現場教育の徹底レピュテーション維持、コンプライアンス強化
短期的なコスト上昇付加価値向上との連動、協業による生産性改善、長期視点での経営判断サプライチェーン全体の競争力向上
形骸化・名ばかり宣言経営層のコミット、KPI設定、取引先との定期対話実効性の高いパートナーシップ構築

まとめ

パートナーシップ構築宣言は、発注者側の立場にある企業が、サプライチェーン全体の付加価値向上と大企業・中小企業の共存共栄を目指して自主的に公表する宣言制度です。振興基準の遵守と新たな連携による価値創造の2つを核心要素とし、約7万社が既に宣言を行っています。

製造業の管理者にとって、この宣言は価格転嫁交渉の根拠として活用できるだけでなく、複数の補助金制度で加点項目となるため、設備投資やDX推進の資金調達において実務的なメリットがあります。また、ESGやサステナビリティの文脈での評価向上にもつながり、経営戦略上の重要なツールとなります。

一方で、宣言内容と実際の取引慣行の整合性を保つための社内体制整備や、短期的なコスト上昇と長期的な競争力向上のバランスを取る経営判断が求められます。宣言を単なる形式的な対応ではなく、サプライチェーン全体での価値創造につなげる戦略的な取り組みとして位置づけることが、製造業における持続的な成長につながります。

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