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メタバースとは?ビッグテック各社が開発に乗り出す次世代プラットフォームについて解説

メタバースとは?ビッグテック各社が開発に乗り出す次世代プラットフォームについて解説

バーチャル世界がゲームとしてではなく、リアルな社会生活の一部として活用されることを期待して、GoogleやFacebook、Microsoftなどのデジタルプラットフォーマーが集って研究開発を進めている構想「メタバース」について解説します。メタバースとはどのような概念で、なぜ世界のビッグテック各社が注目しているのでしょうか。

ここ数年でデジタルプラットフォームが人々の生活に浸透していくなかで、主にゲーム領域を中心に、バーチャル空間でアカウントをもち、一種の社会生活を営むケースが増えています。デジタルプラットフォーム上でアバターをカスタマイズし、自由な空間のなかで個別に設定したミッションをこなし、その世界の通貨を使って商取引を実施する。そんな光景は、なにも珍しいものではなくなりました。

今回は、そんなバーチャル世界がゲームとしてではなく、リアルな社会生活の一部として活用されることを期待して、GoogleやFacebook、Microsoftなどのデジタルプラットフォーマーが集って研究開発を進めている構想「メタバース」について解説します。メタバースとはどのような概念で、なぜ世界のビッグテック各社が注目しているのでしょうか。映画『マトリックス』シリーズのような世界観を見ていきましょう。

メタバースとは何か

メタバースとは、超(meta)と宇宙(universe)を合わせた造語で、言葉として最初に登場したのは、Neal Stephenson(ニール・スティーヴンスン)氏によるSF小説『Snow Crash』(スノウ・クラッシュ)です。この小説のなかでは、仮想世界を表す言葉として使われており、不特定多数の参加者がインターネットを通じたバーチャル空間上で自由に行動できる「場」として活用されていました。

一方で現在使われるメタバースとは、上記の定義によらず、さらに拡張した社会生活インフラとしての意味合いが強くなっている印象です。

ここで“印象”と表記した理由は、未だ誰もメタバースの厳密な定義をしていないためです。これまで登場したさまざまなメタバース志向のサービスをもとに推計すると、現実世界にいる我々の時間軸と同期がなされていて、自律的な経済圏があり、アバターのみならず自分で作成したコンテンツが設置流通していて、ゲームのオフボタンのような概念のないバーチャル空間だとイメージされます。

いずれにせよ、2003年に登場したオンラインプラットフォーム「セカンドライフ」から始まり、現在では「フォートナイト」や「VRChat」など、後述するようなさまざまなサービスがメタバースを目指している状況となります。

セカンドライフとは

上述した「セカンドライフ(Second Life)」とは、米サンフランシスコに本社があるLinden Lab(リンデン・ラボ)社が展開する仮想空間サービスです。参加者は多様な選択肢の中からアバターを選んで、バーチャル空間内を自由に行き来し、他プレイヤーとの交流や、独自の通貨「Linden Dollar(リンデンドル・L$)」を使って物品・サービスなどの売買を行うことができます。

サービスリリース自体は2003年ですが、日本では2007年からメディア各社による報道が加熱していき、また電通が広告代理店として積極的に発信することになりました。

しかし、セカンドライフ自体はサーバー環境などが追いつかず、モッサリとした動作や免許制による接続人数の制限などの要因によって一過性のブームで終わりました。

ただし、いわゆる一般的な「ゲーム」と違い、明確な目的がないなかで同時接続したユーザーと経済活動含めたコミュニケーションをとれるという体験そのものは、その後のバーチャルプラットフォームがメタバースを目指すうえで、大いに参考にした要素だといえるでしょう。

デジタルツインとは

近年イメージされるメタバースを実現する概念として重要になるのが、「デジタルツイン」です。別名「ミラーワールド」とも呼ばれます。

デジタルツインとは、現実世界の情報をリアルタイムに反映したバーチャル空間です。IoT技術が発達したことであらゆる場所へ安価にセンサーを設置することができるようになり、また5Gの整備によって大容量通信ができるようになってきたからこそ、デジタルツインのような構想が現実的になっています。

これは民間企業によるいちサービスとしての展開にとどまるものではなく、政府レベルでも明確な定義がなされています。たとえば、2016年1月に閣議決定された「第5期科学技術基本計画」に記載されている「Society 5.0」は、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」を実現するための社会のあり方として、デジタルツインの基盤となる考えを定義しています。

日本政府版デジタルツイン・プロジェクト「Project PLATEAU」

このSociety 5.0時代のデジタルツインを体現するプロジェクトとして注目されているのが、国土交通省による都市の3D化プロジェクト「Project PLATEAU(プラトー)」です。

このプロジェクトは現実の都市をサイバー空間上に再現し、3D都市モデルを整備・活用・オープンデータ化する事業となっています。2020年度の事業成果としては、全国56都市の3D都市モデルの整備完了、および開発したユースケース44件と実証成果を取りまとめた各種マニュアル・技術資料など10件の公開が、バージョン1.0として2021年3月に発表されました。

現実そっくりのバーチャル環境を用意することで、現実ではコストも時間もかかる各種シミュレーションの高速実施や、それに伴う品質の向上などが期待されており、官民連携したDXプラットフォームとしての活用が期待されています。

デジタルツインやProject PLATEAUの詳細については、以下の記事もご覧ください。

デジタルツインとは?VRと何が違う?国交省による「Project PLATEAU」など個別事例も解説

メタバースが垣間みえる民間サービス事例3選

次に、現時点(2021年5月時点)でメタバースの一端が垣間見える民間サービスを3つご紹介します。

フォートナイト

「フォートナイト」は、米ノースカロライナ州ケーリーに本社があるEpic Games社が展開するオンラインバトルロイヤルゲームです。2017年9月にリリースされた、比較的新しいゲームタイトルですが、2020年時点で3.5億人のユーザーがアカウント登録をしています。

ゲームでは主に3つのモードからいずれかを選択することができます。複数のプレイヤーが協力してミッションを達成していく「世界を救え(Save the World)」モード、最後の1人(もしくは1組)になるまで戦う「バトルロイヤル(Battle Royale)」モード、そして専用マップで自由な世界構築ができる「クリエイティブ(Creative)」モードです。

またバージョン12.50では新たに「パーティーロイヤル」モードも登場し、戦いのない空間で、映画鑑賞やライブなどを楽しめるようにもなりました。

ひとつのゲームタイトルのなかで、ユーザーはさまざまな観点で遊び・コミュニケーションをとり、経済活動を行うことができるという観点で、フォートナイトは今、もっともメタバースに近いデジタルプラットフォームだといえるでしょう。

VRChat

「VRChat」は、米VRChat社が2013年から展開しているソーシャルVRプラットフォームです。2013年にリリースされました。

フォートナイトのクリエイティブモードと同様に、VR空間内に自分専用のスペース(ワールド)が用意され、そこで好きな素材をアップしていくことで自分好みの空間へと装飾でき、その空間をもとに他ユーザーと交流することができます。また、VRChat内でのオンラインイベントも人気で、交流拠点のひとつになっています。

VRプラットフォームでありながらHMDを用意しなくても楽しめる点や、ユーザーが主体的に参加できる自由度の高さなどに魅力を感じて、VRChatを継続利用するユーザーは多いようです。

あつまれ どうぶつの森

「あつまれ どうぶつの森」は、2020年3月に任天堂株式会社が発売開始した、Nintendo Switch用のゲームソフトです。単一のゲーム機ブランドで展開しているものにもかかわらず、2021年3月末時点でグローバル規模で3,200万本以上が販売されており、その人気ぶりがうかがえます。

「あつまれ どうぶつの森」では無人島が舞台となっており、プレイヤーは島での生活を1から設計していくことになります。島の地形をデザインしたり、島で手に入れた素材でアイテムを作ったり、他プレイヤーが構築した島に遊びに行ったりと、自由なコミュニケーションができるようになっています。

ビッグテック各社のメタバース動向

最後に、巨大IT資本が注目するメタバースということで、Facebook、Microsoft、そしてGoogleの3社によるメタバースへの取り組み状況をご紹介します。

Facebook

2014年にOculusを買収した米Facebook社は、その時点ですでにメタバースの構築をイメージしていたのかもしれません。同社は2019年に、Microsoft WindowsおよびOculusQuest用に開発されたオンラインVRゲームプラットフォーム「Facebook Horizon」を発表したのです。

Facebook Horizon | Virtual Reality Worlds and Communities

Facebook Horizonでは、プレイヤーはアバターを作成し、クリエイションツールなどを使って他プレイヤーとの交流を深めることができます。

現時点(2021年5月時点)ではまだクローズドベータ版の提供にとどまっていますが、SNS領域で圧倒的な存在感をほこるFacebookだからこそ、正式版リリースの際には、爆発的な数のユーザー登録がなされ、VR空間上での活発なコミュニケーションが期待できるといえます。

Microsoft

Microsoft OfficeやLinkedIn、Azureといったビジネスプラットフォームの他に、toC向けゲームブランドであるXboxを展開する米Microsoft社でも、VRの先をいくMRの新プラットフォーム「Microsoft Mesh」を2021年3月に発表しています。

Microsoft Meshは、Microsoft Azure(マイクロソフトが提供するクラウドコンピューティングサービス)上に構築されたMRプラットフォームで、物理的に別の場所にいる複数メンバーで3DCGの共有が可能なMRアプリを構築できるサービスです。

ここまで見てきたようなバーチャル100%のプラットフォームというわけではありませんが、今後同社がもつさまざまなデジタルブランドをコングロマリッド的に活かし、メタバース的なブランドを構築するかもしれません。

なおMicrosoft Meshについては、以下の記事もご覧ください。

MRの世界を変える!?新プラットフォーム「Microsoft Mesh」とその可能性を解説

Google

最後は、情報検索領域の雄であるGoogle(運営会社:Alphabet Inc.)です。同社では、2008年に約半年間だけ、「Lively」と呼ばれるメタバースサービスを発表・展開していました。3Dのアバターベースで他ユーザーとコミュニケーションがとれるという観点で、発表時はセカンドライフの競合として注目されましたが、コアである検索や広告、アプリビジネスに注力するために、半年間でサービスを閉鎖すると意思決定したのです。

それから約13年。2021年時点では目立ったメタバース構築の動きはないものの、Google GlassのようなARグラスの開発や、Google Mapなどに見られるようなバーチャルアシスタント提供を通じて、メタバース構築の機会を探っている可能性があるともいえるでしょう。

メタバースの覇者となるのはどこか?

今回はVRの延長線上にある「メタバース」について解説しました。セカンドライフからFacebook Horizonまで、さまざまなIT企業がメタバース構築に積極的になっている状況といえます。

ゲーム用途ではなく、経済活動を含めた実生活のプラットフォームの覇者となるのはどこなのでしょうか。引き続き各社の動向を注視したいと思います。

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