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AI活用がナレッジベース構築やナレッジマネジメントを加速させる理由

AI活用がナレッジベース構築やナレッジマネジメントを加速させる理由

業務を効率化し、ノウハウの属人化を防ぐナレッジベースが注目を集めていますが、ナレッジベースはAIと組み合わせることでより大きな効果を発揮します。本記事ではナレッジベースの基本知識を踏まえ、AI活用との関連性について解説します。

デジタル技術の発達にともない、DX(デジタルトランスフォーメーション)をはじめとしたデジタル技術のビジネス活用が企業の大きなテーマとなっています。単なる作業の効率化にとどまらず、各社員のスキルアップや属人化の防止につなげることがDXの大きな目的のひとつです。

知識や経験の共有でそれを達成する「ナレッジベースの構築」や「ナレッジマネジメント」からDXをスタートする企業も少なくありませんが、ナレッジベースはAIと組み合わせることで、より高い効果を持ちます。

本記事ではナレッジベースの特性を踏まえ、AIを活用すべき理由や実際の事例、活用にあたっての課題点を解説します。

ナレッジベースとは

ナレッジベースとは、企業のもつ知識やノウハウ、経験を誰もが活用できる形で集約したデータベースを指す用語です。また、ナレッジベースなどを用いて情報を管理、共有、活用することをナレッジマネジメントと呼びます。

ナレッジベース導入の最大のメリットはノウハウの一元管理です。企業内に散らばった独自情報やデータ化されていない知識、ノウハウを見える化することで、ビジネスの高効率化を実現できます。まずはナレッジベースの基本概要について解説します。

ナレッジベースの役割

ナレッジベースの役割は、社内のノウハウを全社に展開し、活用できる形とすることです。具体的には、以下のような情報をナレッジベースに集約します。

  • 業務マニュアル
  • 部署毎のノウハウ
  • 問い合わせへの対応方法

社内のノウハウをデータベースに集約する理由は「属人化の防止」と「ノウハウの言語化」にあります。属人化とは、スキルやノウハウを特定の人物だけが独占していること。たとえば、営業部署である人物だけが抜群の営業成績を残し、他の社員が全く成績を収められない状態や、ある人物にしか対応できない業務が存在している状態があげられます。

ナレッジベースを構築することで、特定の社員だけが秀でた能力を発揮し、業務を独占する、あるいは業務が集中するような組織体制ではなく、優れたスキルを全社的に広めて組織全体で成果を出せる環境を生み出すことが可能です。

主なナレッジベースの種類

ナレッジベースにはさまざまな種類や形態が存在し、会社の規模や解決すべき課題、活用する範囲によって選ぶべきタイプが異なります。

【ナレッジベースの種類と特徴】

データベース型ノウハウや知識を必要に応じてデータベースから取り出せる
社内wiki型誰でも書き込み・情報提供ができ、匿名のコメント形式で知識やノウハウを共有する
グループウェア型グループチャット形式でスケジュール管理やノウハウを共有する
社内SNS型グループウェア型より「社員同士の交流」を目的とした気軽なコミュニケーションツール
ヘルプデスク型社員や顧客から出てきた情報や要望、クレームをF&Q型でデータベース化したもの
データマイニング型機械学習やビッグデータを活用し、市場の予測や戦略など価値ある情報を提示するもの

たとえば、店舗での小売を生業とする会社が各支店の社員に顧客対応のノウハウを浸透させるには、質疑応答で問題と答えが分かりやすいヘルプデスク型が好相性です。

一方、顧客情報や売上データをもとに高度な経営戦略やマーケティング施策をナレッジとして蓄積させるにはデータマイニング型が適切。

ナレッジベースは社内活用を基本としますが、情報をコンテンツとしてパートナー企業や商談先に配信し、企業活動の透明度を高める、あるいは商品として販売するといった活用もなされています。

AIとナレッジベースはなぜ相性が良いのか?

ナレッジベースへの関心が高まると同時に、AIを組み合わせることにも注目が集まりつつあります。なぜAIとナレッジベースが好相性なのか、どのようにAI技術をナレッジベースに応用するのかを見ていきしょう。

AIは情報の抽出や分析、内容の要約に優れる

AIは膨大な情報から必要な情報を自動で抽出・分析することに優れた技術です。例として、データベース利用者の閲覧履歴や読み込んでいるデータの傾向から、AIがおすすめのデータを自動で参照するといったツールがあげられます。

また、AIを用いたカスタマーサポートやチャットボットツールを活用すれば、顧客対応で蓄積されるナレッジを自動化することが可能です。

AIは情報の抽出・分析・蓄積に強いため、ノウハウや知識を集約するナレッジベースに相性AIを組み込めば、より少ない労力で利便性の高いナレッジベースを構築できます。

機械的な操作ではなく、自然なやり取りで情報を検索できる

通常、ナレッジベースはシステムや社内ポータルサイトを通じて情報を得ることになりますが、機械的な操作や情報検索を苦手とする社員も少なくありません。

そのため全社的に浸透できるナレッジベースを構築するには、直感的な操作ができ、サポートシステムを持つツールが必要不可欠です。

このようなシステムの構築に使えるのがChatGPTやAIチャットボットをはじめとした対話型AIです。前章のナレッジベースの種類からは、ヘルプデスク型のナレッジベースが該当します。特にChatGPTなど生成AIと呼ばれる技術は口語的な表現も理解することができるため、不慣れな人でも気軽にツールを活用できるでしょう。

過去のデータにもとづく分析や予測をサポートできる

ナレッジベースには継続的にデータが蓄積されていくため、運用期間が長くなるほど、格納しているデータや利用状況の全貌を把握することが難しくなるでしょう。

しかし、AIをナレッジベースに導入すれば蓄積データが膨大でも高度な分析や予測データの割り出しが最短時間で実現可能です。前述したデータマイニング型のナレッジベースにも、AIが構築に活用されています。

また、AIによる分析は学習データや参照データが多いほど精度が向上する性質を持ちます。全社的に長期にわたって運用できるナレッジベースを構築する場合は、AIシステムの搭載は必須と言えるでしょう。

AIを用いたナレッジベースの事例

実際にAIを用いたナレッジベースの構築、活用を進めている企業の事例を2社ご紹介します。AI技術をナレッジベースに応用することでどのような仕組みづくりを図っているのか、どの程度の効果が期待できるのか、自社のナレッジベース構築の参考にしてみてください。

①生成AIを用いた社内情報検索システム(アサヒビール)

アサヒビール株式会社は、全社員の業務効率向上と商品開発の強化を目的とした社内情報検索システムを導入予定です。システムの情報を効率的に集約するため、ナレッジベースに生成AIを組み込んでいます。

具体的には、以下の機能を実現しています。

  • 形式の異なる資料データを複合的に抽出できる検索システム
  • 目的と一致した検索結果なのかを確認する、抽出データの概要説明文を自動生成

同社の事例が示す最大の特徴は、ツールの扱いに不慣れな人でも扱いやすい検索システムを構築しているところです。生成AIに操作や検索意図をサポートさせることで、簡単かつ的確に欲しい情報へとアクセスできる構造になっています。

参考:生成AIを用いた社内情報検索システムを導入

②社内問い合わせにサポートチャットボットの導入(パーソルテンプスタッフ)

パーソルテンプスタッフ株式会社は、高頻度に渡る部署間の電話問い合わせと煩雑なデータ構造を改善するために、AIを用いたサポートチャットボットシステムを導入しました。

社内の業務マニュアルをAIに学習させることで、少しのキーワード入力や直感的な操作で欲しい情報へたどり着けるよう構築されています。

同社の事例ではチャットボットの導入によって部署間の電話問い合わせが減少、間接部門にかかる業務負担を減らすことに成功しています。

また、導入前は回答を得るためにかかる平均時間が450秒なのに対し、チャットボット導入後は平均14秒と約95%の時間短縮を実現しました。

参考:「まずは電話で問い合わせ」が激減、問い合わせ業務の大幅向上へ | HCM・働き方イノベーションForum 2022 Online Seminar Review – 日経クロステック Special

AIを活用したナレッジベース構築の課題点

AIを搭載したナレッジベース構築においては課題点も残っています。ノウハウの自動集約・データ分析・操作性を兼ね備えたナレッジベースを実現するには、ナレッジマネジメントとAI開発の両面におけるさまざまな課題をクリアしなければなりません。

知識を集積する仕組みづくりが必要

高性能のナレッジベースを構築するには、データを蓄積させる仕組みづくりが必要不可欠です。顧客データや売上データと違い、ナレッジベースは社員のノウハウや意識など、言語化しにくい漠然とした情報をデータとして蓄積させなければなりません。

ナレッジベースの構築にあたっては、ナレッジを入力・共有する意識付けから、社員へのモチベーションアップ、入力サポートシステムを導入するなど、社員が積極的にデータベースへナレッジを蓄積させる工夫が必要です。

ナレッジベースの構築に専門知識が必要

ナレッジベースもデータ管理システムのひとつである以上、ナレッジマネジメントとデータベース分野の専門知識を持つ人材が必要です。

両方の人材が自社に揃っていれば内製も可能ですが、開発には一定のリソースを要するため、開発に専念できる状況を作らなければなりません。ナレッジベースの開発を専門の会社へ依頼する、あるいはナレッジベース構築ツールを用いる方法が効率的な場合もあります。

ナレッジベースとAIの接続性の問題

ナレッジベースとAIを連携させるためには、前述したナレッジマネジメントやデータベースに加えて、AIに関する知識と技術が欠かせません。

たとえばAIを用いたF&Q形式のナレッジベースの場合、自社のデータと入力キーワードを紐付けて回答するよう、AIに学習させるための基盤構築が必要となります。

仮に自社のデータベースが既に存在したとしても、AI開発に関する人材が技術に乏しい場合は両者の接続に時間を要するでしょう。AIが搭載された専用のナレッジベース構築ツールを導入し、データを移行する選択肢も検討の価値があります。

ナレッジマネジメントとAIでビジネスは大きく変わる

企業のノウハウ・技術・知識を集約したデータベースであるナレッジベースは、社内に存在する無数のノウハウを全社員と共有し、業務の属人化を防ぐための最適解です。どんな情報を蓄積させるかによって求められるナレッジベースの種類は異なりますが、いずれにおいてもAIとナレッジベースを連携させることで、より利便性の高いシステムが構築できることに違いはありません。

しかしながら、AIとナレッジベースの連携には高度な知識と技術が必要です。導入にあたっては、社内における「ノウハウを集積する仕組み作り」に注力しつつ、ナレッジベース構築を得意とする会社と連携しつつ進めていきましょう。

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