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hakaru-cloudとは?
PROTRUDEの「hakaru-cloud」は顔を10秒ほど撮影し、その画像データを解析することで、5種類のバイタルデータを非接触で取得できるSaaSサービスです。
測定できるのは、心拍数、血圧、血中酸素濃度、乳酸値、血糖値です。hakaru-cloudは医療機器ではないため、測定される数値はあくまで参考値として出されます。SaaSシステムなので、企業側でサーバーを導入したり、ソフトのライセンスを従業員個別で用意したりといったことが必要ありません。
関連リンク:hakaru-cloud by PROTRUDE

執筆:小林由美
facetライター、編集者
従来の非接触バイタルセンシングの事例では、体温測定や視線の追跡、アルコール検出などが比較的よく見られます。hakaru-cloudは従来のシステムより幅広い種類のデータが収集できることが特色です。
過去の採用実績としては、スポーツ施設での運動時の生理指標、介護系の企業の出退勤システムなどがあります。
バイタルセンシングは、従業員の体調不良が仕事に大きく左右してしまう場合、または仕事中に命を落とすことになりかねない時に、日頃からの体調管理が厳しく求められる職種では特に有効です。hakaru-cloudは、取得できるさまざまな機能の掛け合わせにより、体調管理の分析指標の幅がより広がりそうです。とにかく導入も、使い方も非常に簡単なこともメリットです。
hakaru-cloudを使ってみた
hakaru-cloudはSaaSシステムなので、PCの他、スマートフォンやタブレット端末のいずれでも使用できます。Webブラウザでアクセスする画面も、とてもシンプルです(図1)。

▲ 図1 hakaru-cloudの画面
使い方はカンタン、カメラで撮るだけ
使い方は、システムを開き、PCや端末を構え、「バイタル測定を開始」ボタンを押すだけです。
カメラの前で停止していなければならない時間は8秒ほどです。瞬きをしたり、会話をしていても結果は変動しませんが、顔の位置は固定している必要があります。あまりアップにしない方がいいそうです。

映像を取り込み、結果を計算する時間は20秒ほどでした(図3)。

8秒の測定で、心拍数・血糖値・血圧・血中酵素・乳酸がまとめて測れる
撮影自体は8秒で終わるので、ストレスは感じられませんでした(図4)。

▲ 図4 測定結果の例
グラフ表示で日々の変化も把握できる
測定結果は指標ごとにグラフ表示することができます(図5)。

▲ 図5 グラフ表示の例(心拍数)
血糖値を測ってみた
今回は、食べ物を食べた時の血糖値のデータに着目して変化を見てみました。少しおやつをつまんだくらいだと、変化が確認できませんできませんでしたが、アイスクリームを食べたり、たくさん食事を取ったりすると、30分から1時間後に血糖値の変動を捉えることができました。
ハンバーガーで変化を測定・比較
測定に慣れてきたので、いよいよ実験開始です。
ハンバーガーショップでハンバーガーとポテトを食べ、hakaru-cloudで測定してみました(写真)。
結構ガッツリ食べました。
ドリンクはウーロン茶にしておきました。
(おいしくいただきました。)

測定結果は、、、
食べ終わった後は何も食べずに着座したまま滞在し、撮影条件をなるべく変えないようにしながら、数回測定してみました。
図6が食べる前、図7が食べ終わった直後です。
食べる前は64~75くらいで、食べた後は112~130くらいの幅に上昇していることが確認できました。


血糖値が最も高くなるといわれる1時間後は、今回の計測では、食べた直後と同等の値となっていました(図8)。
糖質が気になる方、ダイエットをしている方には、食事中の血糖値を気にする機会になりそうです。
ちなみに、、、、
血圧については、普段より明らかに高めで出ていました。というのも、筆者がたまたまテスト利用中に風邪薬を服用していたことが影響しているようで、そういった傾向もhakaru-cloudでは測定できていた、ということになるかと思います。

血糖値が最大になるといわれるタイミング
測定についての注意点
hakaru-cloudは、手軽に測れるという良さがある一方で、測るタイミングや照明の具合によって、結果に変動がみられるようです。測定精度をなるべく安定させるためにはカメラが固定されているノートPCのカメラで、測る距離を一定に保つとよいとのことです。
ただし、そもそも、hakaru-cloudは医療機器ではないため、測定結果にばらつきがあることは前提として、割り切って使うのが良いそうです。またhakaru-cloudで捉えるデータはどの指標にしても絶対値で捉えるのではなく、普段からhakaru-cloudで数値を取得しておき、特定の期間のデータを平均値でならして相対的に比較していく運用が望ましいのかもしれません。
血糖値測定に関する注意
血糖値測定器は指先に針を刺して採血して測定するタイプが一般的です。hakaru-cloud以外にも、非観血的測定が行えるスマートウォッチなどが既に販売されています。
FDA(米国食品医薬品局※)においては、スマートウォッチタイプの非接触血糖値測定器の認証をしている例がまだありません(記事公開時点)。そうした機器を、健康体の方が、(医療機器でなく)健康管理ツールとして利用するのであれば大きな問題はないでしょう。スマートウォッチタイプは精度が安定しないことから、糖尿病患者の方については、数値を過信して身体の異常を見誤ってしまう恐れから、使用はお勧めしません。
※Food and Drug Administration(FDA):米国食品医薬品局:米国において医療品規制や食品安全の責務を担う機関。
hakaru-cloudも医療機器ではないため、糖尿病患者の方の健康管理に使うことはできず、販売元のBREXA Technologyも、顧客に勧める際や契約時にはそのように注意を促しています。
しかしながら、針を刺さなくて済む血糖値計が欲しいという糖尿病患者の方は大勢いるかと思います。その中にはお子さんもいます。血糖値測の針を刺す際にはわずかに痛みもあり、採血をしますから、そういうことに抵抗感があるという人も少なくありません。hakaru-cloudのような簡便な使い勝手で、FDAが認めるほどの精度に進化してほしいものですね。
hakaru-cloudの可能性と課題
hakaru-cloudはリリースされて比較的間もないシステムです。そもそもバイタルセンシング自体が、国内の民間企業などで採用されるようになった時期は比較的最近で、黎明期でもあります。BREXA Technologyもこのシステムをどう進化させていくか、UIも含めて今も検討を重ねているところでもあります。
最近は、製造業でもメンタルの不調を訴える人やそれが原因で休職してしまう人も増えています。筆者は、ストレス指標やうつ傾向、パーソナリティなど心理面のデータとバイタルセンシングのデータを掛け合わせることができたら、それで何らかの傾向を捉えて、心が折れてしまう前に対処ができたりなどができそうだと考えました。目視検査を担当する人など、業務で五感や気力を使う人の体調管理をするのもよいかもしれませんね。
バイタルセンシングは、人によっては、「監視をされている」ことにプレッシャーを感じたり、自分のデータをクラウドに送られてしまうことが嫌な場合もあるかもしれません。バイタルセンシングを導入するにあたり、厳重な情報の保護や、データ取得について従業員本人の同意を得ることの他、バイタルセンシングを健康管理に使う意義などについて啓もうや事前周知も必要かもしれません。従業員の方に納得して使ってもらうためにも、本人があまり気にしない指標に絞る、管理者が個人のデータを本人の許可なく見られないようにするなどの工夫も必要そうです。
個人のバイタルデータが取れるということは便利で有意義なことですが、悪用もされかねません。バイタルセンシングは、他には管理者やユーザーのリテラシーと倫理観も重要になるのかと思います。
しかし、それらの問題を何らかの形できちんとクリアすれば、従業員個人個人の潜在能力や活力を高めることができ、ひいてはそれが企業の組織を元気にしていくことになると筆者は思います。
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執筆者プロフィール
facet代表 ライター、編集者。
一般社団法人 日本デジタルライターズ協会 会員。
町工場でのトレースや設計補助、メーカーでの設計製造現場での実務を経験した後、アイティメディア株式会社に入社。「MONOist」の立上げから参画し、月間100万PV以上の業界最大手サイトに成長させるべく尽力した。MONOistの編集記者として約12年間、技術解説記事の企画や執筆の他、広告企画および制作、イベント企画など、幅広く携わる。
2019年には3D設計コンサル企業の株式会社プロノハーツにジョインし、広報・マーケティング担当として従事する傍らで、製造業に特化したライティング事業を展開する。
2020年5月に個人事業として独立。
■主な執筆歴
- アイティメディア「MONOist」「TechFactory」「キーマンズネット」
- 日経BP「日経ものづくり」「日経クロステック」
- 金森産業「PlaBase」
- オートデスク「Redshift」
■書籍
- 一般社団法人セーフティグローバル推進機構
- 『実践!ウェルビーイング世界最強メソッド「ビジョン・ゼロ」』(日経BP)
- 「カーボンニュートラル 注目技術50」(日経BP、ムック)
- 「SDV革命 次世代自動車のロードマップ」(日経BP)

