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食品製造業の異物混入防止対策とは?重要性や事例、4つの原則と具体的な方法を紹介

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食品製造業の異物混入防止対策とは?重要性や事例、4つの原則と具体的な方法を紹介

食品製造業において、異物混入は企業の信頼性を根底から揺るがす重大なリスクです。毛髪や虫、金属片などの異物が製品に混入すると、消費者の健康被害だけでなく、製品回収による経済的損失、ブランドイメージの低下、さらには法的責任の追及にまで発展する可能性があります。本記事では、食品製造現場における異物混入の実態と発生原因を明らかにしたうえで、異物混入防止の4つの原則と具体的な対策方法を解説します。

食品製造業における異物混入のリスク

食品製造業において異物混入対策は、単なる品質管理の一環ではなく、企業存続に関わる最重要課題です。異物混入が発生した場合、その影響は多岐にわたり、企業経営に深刻なダメージを与える可能性があります。ここでは、異物混入がもたらす具体的なリスクと、対策が求められる背景について解説します。

消費者の健康被害と企業の社会的責任

異物混入による最も深刻な問題は、消費者の健康と安全を脅かすことです。金属片やガラス片などの硬質異物が混入した場合、消費者が摂取することで口腔内の損傷や消化器官への障害を引き起こす可能性があります。

虫や毛髪などの生物由来の異物は、衛生面での不快感だけでなく、アレルギー反応や食中毒の原因となることもあります。食品製造業者には、安全な製品を提供する社会的責任があり、この責任を果たせない場合、消費者からの信頼を完全に失うことになります。

企業の信頼失墜とブランド価値の低下

異物混入事故が発生すると、SNSやメディアを通じて瞬時に情報が拡散される現代において、企業の評判は一夜にして失墜します。長年かけて築き上げてきたブランドイメージが一度の事故で崩壊し、回復には膨大な時間とコストがかかります。

特に大企業の場合、取引先や株主への影響も大きく、企業価値そのものが大きく毀損されるリスクがあります。消費者の「安全・安心」への期待値が高まっている現在、異物混入対策は企業のブランド価値を守るための必須要件となっています。

法的リスクと経済的損失

異物混入が発生した場合、食品衛生法や製造物責任法に基づく法的責任を問われる可能性があります。製品の自主回収や廃棄処分には莫大なコストがかかり、場合によっては損害賠償請求や営業停止処分といった厳しい措置が取られることもあります。また、取引先からの契約解除や新規取引の機会喪失など、間接的な経済損失も深刻です。

さらに、事故対応のための人的リソースの投入や、再発防止策の実施にかかるコストも考慮すると、異物混入の経済的影響は計り知れません。下記の表は、異物混入が企業にもたらす主要なリスクを分類したものです。いずれの影響も企業経営に深刻なダメージを与えるため、予防的な対策が不可欠です。

リスク分類具体的な影響企業への影響度
健康被害口腔・消化器損傷、食中毒、アレルギー反応極めて高い
信頼失墜ブランドイメージ低下、消費者離れ、株価下落極めて高い
法的責任製造物責任、食品衛生法違反、損害賠償請求高い
経済損失製品回収費用、廃棄処分費用、売上減少極めて高い
取引影響契約解除、取引停止、新規取引機会の喪失高い

異物混入の主な原因と発生事例

異物混入を効果的に防止するためには、まず異物がどのようにして製品に混入するのか、その原因を正確に理解する必要があります。食品製造現場では様々な経路で異物が混入する可能性があり、それぞれに応じた対策が求められます。ここでは、実際の製造現場で発生しやすい異物の種類と混入経路について詳しく解説します。

人的要因による異物混入

異物混入の原因として最も多いのが、従業員に起因する人的要因です。毛髪は異物混入の中でも最も発生頻度が高く、作業帽の不適切な着用や作業中の髪の毛の落下が主な原因となっています。また、つけ爪やアクセサリー、ボタンなどの私物が製造ラインに落下するケースも後を絶ちません。

作業着のポケットから個人の持ち物が落ちることもあり、ポケットレスの作業着導入が推奨されています。さらに、手洗い不足や爪の清掃不足による細菌や汚れの混入も人的要因に含まれます。これらのヒューマンエラーは完全にゼロにすることは困難ですが、教育と管理体制の強化により大幅に減らすことが可能です。

設備・機械に起因する異物混入

製造設備や機械の劣化・破損により、金属片やプラスチック片、ネジ、ボルトなどが製品に混入するケースがあります。特に老朽化した設備では、摩耗による金属粉の発生や部品の脱落リスクが高まります。また、設備のメンテナンス不足により、潤滑油や洗浄剤が残留することもあります。

コンベアベルトやフィルターの破損による繊維片の混入も報告されています。これらの設備由来の異物は硬質であることが多く、消費者への健康被害リスクが高いため、定期的な設備点検とメンテナンスが極めて重要です。予防保全の考え方に基づき、破損する前に部品交換を行う体制を整えることが求められます。

原材料由来の異物混入

原材料の受け入れ段階で既に異物が含まれているケースも少なくありません。農産物に付着した土や石、虫、農薬残渣などが代表的です。畜産物や水産物では骨片や鱗、内臓の残渣が混入することもあります。また、原材料の包装材から剥がれたフィルム片やラベル片が混入する事例も報告されています。

これらの原材料由来の異物を防ぐには、仕入先の選定と管理が重要です。サプライヤーとの品質保証協定の締結や、原材料受け入れ時の厳格な検査体制を構築することで、上流段階での異物混入を防止できます。

環境要因による異物混入

製造環境そのものが異物混入の原因となることもあります。製造施設内の埃や塵、天井や壁からの剥離物、窓や扉の隙間から侵入する虫や小動物などが該当します。空調システムの不備により外部から異物が持ち込まれるケースや、清掃不足による異物の蓄積も問題となります。

特に害虫の侵入は深刻な衛生問題であり、定期的な害虫駆除と侵入経路の遮断が必要です。製造エリアのゾーニング設計や陽圧管理など、施設設計の段階から環境要因を考慮した対策が効果的です。下記のような異物混入原因は複合的に発生することもあり、それぞれの原因に応じた多層的な防止策を講じることが重要です。

  • 毛髪・つけ爪・アクセサリーなどの人的要因による異物
  • 金属片・プラスチック片・ネジなどの設備由来の異物
  • 土・石・虫・骨片などの原材料由来の異物
  • 埃・塵・剥離物・害虫などの環境由来の異物
  • 包装材の破片やラベル片などの包材由来の異物

異物混入防止の4つの原則

食品製造現場における異物混入対策は、継続的に実施する必要があります。「異物混入防止の4原則」は、効果的な対策を実施するための基本的な考え方を示しています。この4つの原則を理解し、それぞれに対応した具体的な施策を実行することで、異物混入リスクを大幅に低減できます。ここでは、各原則の内容と実践方法について詳しく解説します。

原則1:持ち込ませない

異物混入防止の第一原則は、異物を製造エリアに「持ち込ませない」ことです。この原則は、外部からの異物侵入を水際で防ぐことを目的としています。具体的には、従業員の入場時管理が重要であり、更衣室での作業着への完全な着替え、粘着ローラーやエアシャワーによる異物除去、金属探知機やX線検査機による持ち込み品チェックなどを実施します。

原材料の受け入れ時にも厳格な検査を行い、異物が含まれていないことを確認します。さらに、製造エリアへのアクセス制限を設け、不要な人の出入りを制限することも効果的です。サプライチェーン全体での品質管理も重要であり、仕入先との品質保証協定の締結や定期的な監査により、上流段階での異物混入を防止します。

原則2:入れない

第二の原則「入れない」とは、製造現場に異物を持ち込ませない仕組みを徹底することです。原材料や部品の受入検査や梱包状態の確認、包装の密閉や二重梱包、搬入口や作業ゾーンにおけるエアシャワーやエアカーテンの設置などで外部からの侵入を物理的に遮断します。

また、作業者の出入り管理や専用作業着・靴・ヘアネットの着用義務、工具・備品の管理(点検済みツールのみ持ち込み)を徹底し、職場への不要物の持ち込みを防ぎます。さらに、原材料の保管方法や保管場所の明確化、供給業者への品質要求(非分解部品の採用や耐久基準の明記)を行うことで、そもそも異物が現場に入らない体制を構築します。

原則3:取り除く

万が一異物が混入した場合でも、製品が消費者に届く前に「取り除く」ことが第三の原則です。この原則では、各工程での異物検出と除去が重要になります。金属探知機やX線検査機などの異物検知装置を製造ラインに設置し、金属片やプラスチック片、骨片、石などを自動的に検出・除去します。光学センサーやカメラシステムによる外観検査も有効です。

また、原材料の洗浄工程やふるい分け工程を適切に設計し、物理的に異物を除去します。人による目視検査も依然として重要であり、検査担当者の教育と集中力維持のための環境整備が必要です。複数の検査ポイントを設けることで、検査の精度を高め、異物の見逃しを防ぎます。

原則4:管理する

異物混入防止対策を継続的に実施し、その効果を「管理する」ことが第四の原則です。HACCP(危害分析重要管理点)システムを導入し、各工程での危害要因を分析し、重要管理点を特定して監視します。日々の点検記録や検査記録を確実に記録し、異常があった場合の対応手順を明確にします。定期的な内部監査や第三者監査により、管理体制の有効性を確認します。

従業員への継続的な教育と訓練も管理の一環であり、異物混入防止の意識を常に高く保つことが重要です。また、異物混入が発生した場合の原因究明と再発防止策の策定、情報共有の仕組みを整備し、組織全体で学習する文化を醸成します。PDCAサイクルを回し、継続的な改善を行うことで、異物混入リスクを最小化し続けます。

原則目的主な対策
持ち込ませない外部からの異物侵入防止入場管理、原材料検査、アクセス制限、サプライヤー管理
入れない製造現場での異物発生防止設備メンテナンス、清掃徹底、衛生管理教育、予防保全
取り除く混入異物の検出と除去検知装置導入、洗浄・ふるい分け、目視検査、複数検査ポイント
管理する対策の継続的実施と改善HACCP、記録管理、監査、従業員教育、PDCA

この4つの原則は相互に補完し合う関係にあり、いずれか一つだけを実施するのではなく、すべてを統合的に実践することで、最大の効果を発揮します。

異物混入防止の具体的な対策方法

異物混入防止の4原則を実際の製造現場で実践するためには、具体的な対策方法を理解し、自社の状況に合わせて導入する必要があります。ここでは、効果的な異物混入防止策を分野ごとに詳しく解説します。これらの対策を組み合わせて実施することで、異物混入リスクを総合的に低減できます。

個人衛生管理と従業員教育の徹底

従業員一人ひとりの衛生意識と行動が、異物混入防止の基盤となります。作業前の手洗いは石鹸を使って爪の間まで丁寧に洗浄し、アルコール消毒を併用します。毛髪混入を防ぐため、作業帽は髪の毛を完全に収納できるタイプを使用し、鏡でチェックする習慣をつけます。ポケットレスの作業着を採用し、私物の持ち込みを完全に禁止します。

アクセサリー、腕時計、つけ爪、化粧なども製造エリアでは禁止し、更衣室でのチェック体制を整えます。粘着ローラーの使用を義務化し、作業着に付着した異物を除去します。さらに、定期的な衛生管理教育を実施し、異物混入防止の重要性と具体的な行動を繰り返し指導します。新入社員だけでなく、ベテラン従業員にも継続的な教育を行うことで、慣れによる意識低下を防ぎます。

設備・機械のメンテナンスと点検

製造設備からの異物発生を防ぐには、計画的なメンテナンスと日常点検が不可欠です。定期点検スケジュールを作成し、設備の摩耗状況や部品の劣化を確認します。ネジやボルトの緩みチェックを日常的に行い、脱落リスクを最小化します。潤滑油の管理を適切に行い、過剰な使用や漏れを防ぎます。設備の清掃マニュアルを整備し、清掃手順と頻度を標準化します。

特に食品に直接接触する部分は、分解清掃を定期的に実施します。予防保全の考え方に基づき、部品の交換時期を設定し、破損する前に交換します。メンテナンス作業後は、工具や部品の持ち出し・持ち込み管理を徹底し、作業エリアに異物を残さないようにします。

原材料管理とサプライヤー監査

原材料由来の異物混入を防ぐには、受け入れ段階での厳格な管理が重要です。信頼できるサプライヤーを選定し、品質保証協定を締結します。原材料の受け入れ検査では、外観チェック、異物の有無、包装の破損確認などを実施します。必要に応じて金属探知やX線検査も行います。サンプリング検査の頻度と基準を明確に定め、記録を残します。

定期的にサプライヤーの製造現場を監査し、衛生管理状況や異物混入防止対策を確認します。問題が発見された場合は、改善を要求し、改善状況をフォローアップします。また、原材料の保管環境も重要であり、専用の保管庫で温度・湿度を管理し、床から離して保管することで異物混入リスクを低減します。先入れ先出しの原則を徹底し、原材料の劣化を防ぎます。

製造環境の管理と害虫駆除

製造環境を清潔に保ち、外部からの異物侵入を防ぐ対策も重要です。製造エリアのゾーニングを行い、清潔度の高いエリアと低いエリアを明確に区分します。エリア間の移動時には、手洗いや着替え、粘着ローラーの使用を徹底します。製造室は陽圧管理を行い、外部からの異物侵入を防ぎます。窓や扉の隙間を塞ぎ、害虫の侵入経路を遮断します。

定期的な害虫駆除を専門業者に委託し、捕獲トラップの設置や薬剤散布を実施します。捕獲状況を記録し、発生傾向を分析して対策を強化します。清掃は製造終了後だけでなく、作業中も適宜実施し、床や壁、天井の汚れや異物を除去します。清掃用具は専用のものを使用し、他のエリアとの混用を避けます。空調フィルターの定期交換も忘れずに行い、空気中の異物を除去します。

異物検知装置の導入と運用

最新の異物検知技術を活用することで、人の目では発見できない異物も検出できます。金属探知機は、鉄、ステンレス、非鉄金属などの金属異物を検出し、自動的に製品をラインから除外します。X線検査機は、金属だけでなくガラス、石、骨、プラスチックなど幅広い異物を検出できます。光学センサーやカメラシステムは、色や形状の異常を検出し、表面異物の発見に有効です。

これらの検査機器は、製造ラインの複数ポイントに設置することで、検査精度を高めます。ただし、機器の性能を維持するには、定期的な校正とメンテナンスが不可欠です。検査機器の感度調整を定期的に行い、テストピースを使った動作確認を日常的に実施します。検査で除外された製品は、異物の種類と発生原因を分析し、再発防止に活用します。検査記録はすべて保管し、トレーサビリティを確保します。

  • 個人衛生管理の徹底(手洗い、作業帽、ポケットレス作業着、粘着ローラー)
  • 定期的な従業員教育と衛生管理訓練の実施
  • 設備の計画的メンテナンスと日常点検の実施
  • 原材料の受け入れ検査とサプライヤー監査
  • 製造エリアのゾーニングと陽圧管理
  • 定期的な害虫駆除と侵入経路の遮断
  • 金属探知機・X線検査機・光学センサーの導入と適切な運用

これらの対策を単独で実施するのではなく、統合的に運用することで、多層的な防御体制を構築できます。

まとめ

食品製造業における異物混入防止は、消費者の健康と安全を守り、企業の信頼とブランド価値を維持するための最も重要な課題です。異物混入が発生すると、健康被害、企業の信用失墜、法的責任、経済的損失など、多岐にわたる深刻な影響が生じます。

効果的な異物混入対策を実施するには、まず異物の種類と混入経路を正確に理解することが必要です。人的要因、設備由来、原材料由来、環境由来など、様々な原因に対応した多層的な防止策を講じることが求められます。異物混入防止の4原則を基本として、個人衛生管理、設備メンテナンス、原材料管理、製造環境管理、異物検知装置の導入など、具体的な対策を統合的に実施することが重要です。

経営層のコミットメントと従業員全員の意識向上により、組織全体で異物混入防止に取り組む文化を醸成することが、長期的な成功につながります。本記事で紹介した知識と手法を自社の製造現場に適用し、消費者に安全で安心な製品を提供し続けてください。

参考文献
https://kaminashi.jp/media/foreign-object-contamination

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