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消費者を起点とするデマンドチェーン。サプライチェーンとの違いも解説

消費者を起点とするデマンドチェーン。サプライチェーンとの違いも解説

デマンドチェーンとは、消費者の需要を軸に市場へアプローチをかける業務の連鎖です。製造業では、サプライチェーンだけでなく、需要に即して供給を最適化するためのデマンドチェーンを意識する必要があります。今回は、事業活動におけるデマンドチェーンの位置づけや、サプライチェーンとの違い、デマンドチェーンマネジメントの運営方法やその成功事例について解説していきます。

デマンドチェーン 製造業では、モノが供給者目線で消費者へと流れていく過程であるサプライチェーンを意識したマネジメントが重要です。一方で、需要に適した供給が行われなければ、製品が売れなかったり、生産に過不足が生じたりします。 そこで意識すべきなのが、サプライチェーンの対となる業務プロセス「デマンドチェーン」です。 今回は、事業活動におけるデマンドチェーンの位置づけや、サプライチェーンとの違い、デマンドチェーンマネジメントの運営方法やその成功事例について解説していきます。

デマンドチェーンとは?

デマンドチェーンとは デマンドチェーンとは、消費者の需要を軸に市場へアプローチをかけ、供給者側へ需要に関する情報を遡及させていく業務連鎖です。ここでの業務としては、市場調査や購買情報の収集、または市場へ需要を作りに行く営業活動などが挙げられます。 事業活動におけるデマンドチェーンの位置づけを理解するために、アメリカの経営学者であるマイケル・ポーターが提唱した「バリューチェーン」という概念に触れてみましょう。 バリューチェーンは、あらゆる事業活動を価値の連鎖として捉える考え方です。同時に、「自社のどの活動が価値を生み出しているのか」という観点で分析を行うためのフレームワークでもあります。 ここでの価値の連鎖を具体的なビジネスプロセスで表すと、以下の順番で3つに分解可能です。
  1. マーケティングと営業:デマンドチェーン
  2. 製品開発:エンジニアリングチェーン
  3. 生産と供給:サプライチェーン
これらを再び繋ぎ合わせると、ターゲットを決めて商品を企画し、企画に沿った商品を設計・開発、そして具体化された商品を生産・供給することで顧客に届けるという大まかな流れになります。 関連記事:エンジニアリングチェーンで製造業を変革する。サプライチェーンとの関係は?

デマンドチェーンとサプライチェーンとは表裏一体

先ほど「生産と供給」で表したサプライチェーンは、原材料の調達から製造・流通・販売に至るまで、モノが供給される流れの総称です。 上記4つのプロセスチェーンの中でも、デマンドチェーンとサプライチェーンは表裏一体の関係にあります。 理由は、需要(demand)と供給(supply)が不可分であることためです。2つのチェーンには、「消費者あるいは生産者のどちら側から業務プロセスを見ていくか」という違いがあります。しかし本質的な目的は「価値の提供を最適化する」という観点で同じです。 例えば、需要側から特定の製品の販売数を正確に取得できれば、供給側がそれに合わせた部品・原材料の仕入れや生産計画を最適化できます。 関連記事:製造業界必須の知識、サプライチェーンマネジメントとは?

デマンドチェーンマネジメントの運用方法

デマンドチェーンの運用方法 デマンドチェーンマネジメント(DCM)は、デマンドチェーンを戦略的に構築・管理し、商品開発、生産・供給計画、流通、販売体制などを統合的に編成するための経営手法です。DCMを手順化すると、以下のようになります。

1.消費者のプロファイリング

プロファイリングとは、ある人物の個人情報や過去の行動を分析し、今後の行動などを推測することです。 つまり、消費者のプロファイリングは、顧客の年齢や購買履歴などから消費者購買行動を類型化し、需要を整理するのに役立ちます。 具体的な手段としては、POS(販売時点情報管理)システムの採用が挙げられます。 POSシステムは、小売店などで商品の販売・支払いが行われる時点で、その商品に関する情報を単品単位で収集・記録します。 記録されたデータは、店舗の売り上げや在庫を管理するだけでなく、消費者のプロファイリングにも利用できます。

2.マーチャンダイジング

マーチャンダイジング(merchandising)とは、「商品計画・商品化計画」を意味する用語です。 具体的には、消費者の欲求・要求に適う商品の企画・開発や調達、商品構成の決定、販売方法(店舗やEC)やサービスの立案、価格設定といった企業活動を意味します。 おおまかな流れは、まずプロファイリングで得た情報をもとに、顧客ターゲット層や店舗(またはECサイト)の品揃えを決めます。 そこから適切な数量、適切な価格、適切なタイミングを逆算し、需給調整を行うといった形となります。

3.バリューチェーン内の他部門との情報連携

ターゲットと販売体制が決まると、次は他部門で協働促進するための情報連携を行います。
例)企画した商品の要件⇒設計・開発部門 必要な材料の数量・価格・タイミング⇒購買部門
こうした情報連携で特に有効なのは、ERP(統合基幹業務)システムの導入です。 ERPは、営業・販売や調達管理から生産・物流まで、企業が持つあらゆる情報を共有のデータベースに格納します。すると、情報の一元管理が可能となり、全部門が互いの状況を把握できるようになります。 つまり、デマンドチェーンで需要予測データを提供できれば、購買部門は適切な調達を行い、生産部門は最適な生産計画を立てられるようになるのです。

デマンドチェーンマネジメントの成功事例

デマンドチェーンの事例 デマンドチェーンマネジメントをうまく運用している企業事例を2つ取り上げ、以下にご紹介します。

花王のデマンド・サプライグループ

大手化学メーカーの花王株式会社は、需要調整を専門とする部門「デマンド・サプライグループ」を設置しています。 同部門は、先ほど解説したDCMの流れを忠実に遂行しているため、参考として下記に業務内容をご紹介します。 まずは需要情報を取りまとめる業務が起点となります。内容としては、化粧品やビオレブランドのマーケティング・開発部門や販売会社から販売計画を入手・精査したり、社内の需要予測ツールを活用しているようです。 続いては、供給計画に携わる業務です。工場の生産計画立案や、サプライヤーからの原材料調達などが挙げられ、サプライチェーンにおける幅広い関係者を巻き込む多角的な内容となっています。 緻密な需要調整によって、顧客の需要に応じた商品の提供や、売れ残りによる利益損失や環境負荷の防止も実現できているとのことです。 こうした取り組みは、デマンドとサプライの両面から緻密なマネジメントが行われていると言える事例でしょう。 参考:「デマンド・サプライ No.01」花王株式会社

米アマゾンのデータ活用マーケティング

アメリカの大手テクノロジー企業であるアマゾン(Amazon.com, Inc.)は、ネットワークの活用により、膨大なユーザーデータを用いたマーケティングを得意としています。 ユーザーデータは、ECサイトから入手できる顧客の購入実績や閲覧履歴から、スマートスピーカー「Amazon Echo」を利用して収集する消費者の属性情報(家族構成や住所、好みなど)までさまざまです。 データの活用例として画期的なのは、翌日の注文数をユーザーの行動から予測し、注文が入る前から在庫拠点への商品出荷を可能にする「予測発送システム」です。 本国アメリカは国土が広大なため、ユーザーが分散してしまい、通常であれば当日発送は困難を極めます。 そこでアマゾンは予測発送システムを利用することで、予め中間拠点に商品を事前出荷し、在庫拠点を増やすことなく商品発送の迅速化に成功しました。 参考:「Method and system for anticipatory package shipping」Google Patents

デマンドの変化に対応できる柔軟なサプライを

デマンドチェーンは企業活動と市場の架け橋にあたります。需要情報の精度と、他部門への情報連携の精度はバリューチェーン全体に影響するため、非常に重要なプロセスと考えるべきです。 日本の製造業は、メーカーと市場の中間に商社が入る場面が多いため、メーカー側からはエンドユーザーの反応が見えにくい一面もあります。 そのため、国内メーカー企業のデマンドチェーンは世界的に見て弱いのも事実です。 しかし近年はインバウンドやSNSでの話題など、需要が生まれるポイントが多様化しています。エンドユーザーのニーズに応える知識とネットワークを有する商社と連携し、流動的かつスピーディなニーズの変化に対応できる企業こそが、今後競争力や生存力をより高めていくでしょう。 もちろんデマンドチェーンの構築だけでなく、柔軟かつ効率的な供給体制も合わせて構築することが必要です。その一例として、産業用ロボットによる生産自動化もひとつの選択肢として検討していてはいかがでしょうか。 関連記事:産業用ロボットとは?主な5種類や事例、他のロボットとの違いを解説 もしロボット活用や現場の課題についてお悩みの場合は、ぜひロボットSIerにご相談ください。問題点の抽出や改善施策のご提案、補助金申請のサポートまで、経験豊富なエンジニアが御社のお悩みを解消いたします。

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