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AR・VRを使ったテレワーク。非接触 × 遠隔での業務実施は、どこまで可能になっているのか

AR・VRを使ったテレワーク。非接触 × 遠隔での業務実施は、どこまで可能になっているのか

テレワークを支援するツールとしてのAR/VR利用は、ここ1〜2年で注目度が高まっています。本記事では、ARやVRをテレワークツールとして活用する場合のシチュエーションやそのメリット・デメリット、具体的な活用事例について、それぞれご紹介していきます。

ゲームなどのエンタテインメント用途で活用されるイメージが強いARやVR技術ですが、昨今ではビジネスシーンにおいても活用の幅が広がっています。そのなかでも、テレワークを支援するツールとしてのAR/VR利用は、ここ1〜2年で注目度が高まっているといえるでしょう。

本記事では、ARやVRをテレワークツールとして活用する場合のシチュエーションやそのメリット・デメリット、具体的な活用事例について、それぞれご紹介していきます。

なぜテレワークが必要とされているのか

そもそも、なぜここ数年でテレワーク需要が高まっているかというと、まず挙げられるのが、政府主導の「働き方改革」への対応だといえます。首相官邸Webサイトによると、働き方改革は「一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ」だとされており、それをエンパワーするあり方の一つとして、総務省はテレワークを以下のように定義しています。

“「テレワークは、社会、企業、就業者の3方向にさまざまな効果(メリット)をもたらすもので、テレワークによる働き方改革を普及することで、一億総活躍、女性活躍を推進することが可能になります。」”

総務省HP

また、この流れに拍車をかけたのが、2020年にグローバルレベルで発生した新型コロナウイルスの存在です。感染拡大防止の観点で非接触によるニューノーマルな生活が推奨されるようになったからこそ、従来の通勤による就業ではなく、テレワークによる在宅勤務などが大きく注目されることとなりました。

テレワークにAR・VRを活用するとは

テレワーク実施にあたっては、Zoomなどのビデオ通話サービスやSlackなどのビジネスチャットなど、パソコンやスマホといった既存デバイスを前提にしたビジネスツールが積極的に活用されました。

一方で、ARやVRといった次世代型デバイスのテレワークへの活用も、近年ジワジワと期待値が高まっています。以下、具体的な使用ケースを考えてみましょう。

バーチャルデスク

主にARによるテレワークソリューションとして注目されているのが、バーチャルデスクでの活用です。例えばスマートグラスやARグラスをかけながらデスクワークをすることで、グラス上が一種の情報ディスプレイとして機能し、テレワークを進めるうえで必要なさまざまな情報を投影・確認することができるようになります。

たとえ物理的なデスク環境がなかったとしても、空間上での操作を前提とするのがARグラス/スマートグラスのメリットでもあるので、場所を問わずテレワークを実施できることが期待されています。

バーチャルオフィスでのコミュニケーション

こちらは主にVRを活用したユースケースとして、バーチャルオフィスの設置としても期待されています。

バーチャルオフィス自体は、何もVR空間上に構築された仮想空間だけを示すのではなく、例えばパソコンのデスクトップ上で構築されるものも含まれます。一方で、より実際のオフィス環境に即したコミュニケーションを進めるにあたって、VR空間上でのバーチャルオフィスの利用が期待されています。離れていたとしても、同僚の隣に座ったり、オフィス設置のホワイトボードや付箋を使って議論するといったことが再現できるでしょう。

「現場」とのコミュニケーション

オフィス環境以外でも、製造業や建設業といった現場作業のテレワークを実現するソリューションとしても、ARやVRは期待されています。

例えば建設現場では、HMDを装着することで目の前に建物が現れ、現地にいなくとも施主目線で外観や内観をチェックできるようになり、また設計データさえできていれば、建築開始前であっても建物のデザインなどを確認できるようになります。

また、上記のような建物のVRモデルができたあとは、現実の建設予定地にタブレット端末のカメラなどを通してVRモデルを再現する方法もとれ、実際に建築された後の景観などを行うことも可能でしょう。

もちろん建設業だけではなく、製造業での現場コミュニケーションにおいても然りです。このあたりの詳細については、以下の記事もご参照ください。

VR×建築の可能性とは?建築業界におけるVRの実用性やメリットを解説
ARは製造業をどう変えるのか?製造現場で活用できるARソリューションをご紹介

テレワークでAR・VRを活用するメリット

以上のようなユースケースを前提に、次はAR・VRをテレワークツールとして活用するメリットについてお伝えします。

物理的な制約を受けない

バーチャルデスクでもお伝えした通り、物理的な制約を受けないことが大きなメリットであるといえます。これは、デスクのようなワーク環境の制約もさることながら、自身がいる場所を問わないという観点においてもいえます。

コロナ禍におけるニューノーマル生活では、いかに物理的な制約を解消できるかが働き方改革のキモの一つだといえるでしょう。

ハンズフリー&音声操作

上記のような物理的な制約を受けないなかでも、特にARやVRが得意とするのが、ハンズフリーによるコミュニケーションスタイルの実現です。

バーチャル空間上での手動操作のほか、最近では自然言語処理技術の向上によって、音声による操作も現実的になってきました。

よりリアルなコミュニケーションの実現

例えばパソコンのデスクトップ上の2次元映像でもコミュニケーション自体がとれるのでしょうが、バーチャルオフィスの箇所でもお伝えした通り、立体的な仮想空間に没入してコミュニケーションをとることで、より現実に即したやりとりを実現することができるでしょう。

なお、まだ研究段階ではありますが、ここまで見てきたような視覚と聴覚ニヨルディスプレイコミュニケーションのみならず、最近では触覚と運動感覚を伝播させるようなインターフェースも開発が進められています。

もしかしたら、ものを触ったり握手をするといったビジネスコミュニケーションも、実感覚と共にテレワークで再現される日がくるかもしれません。

視界共有

最後は、HMD装着者による視界の共有ができる点です。たとえば建設業や製造業などにおけるOJTを想定した場合、特殊技能や技術が必要な変動性の高い訓練でも、ARグラスやスマートグラス による遠隔指導ソフトウェアを活用することで、教わる側だけが現場にいて、教える側は遠隔から指導するといった方法が可能になります。

上記のような技術・技能伝承のユースケースについては、以下の記事もご参照ください。
新たなる「技術・技能伝承」手法として注目されるAR/VRソリューションについて解説

テレワークでAR・VRを活用するデメリット、留意点

一方で、テレワークでAR・VRを活用する際には、デメリットや留意点もあります。以下、3点について見ていきます。

イニシャルコストが高い

ARやVRをテレワークに導入する場合、パソコンやスマホで完結するコミュニケーションツールと比較して、どうしてもHMDなどの専用ハードウェアが必要となるケースが多く、イニシャルコストがかかってくることになります。

一方でARソリューションの場合は、ARグラスやスマートグラスのみならず、タブレットやスマートフォンといった既存のデバイスを活かしたサービスも多くなってきています。また、VRのHMDデバイスなどについても、価格が安いものも多く提供されるようになってきたので、ARとVRのいずれの場合でも、イニシャルコスト問題は少しずつ軽減されてきているといえます。

目の疲れや映像酔い

VRのHMDやARグラスの場合、目の疲れや映像酔いといった身体的副作用を引き起こしやすいという注意点もあります。

たとえばVR空間に埋没して長時間過ごすと、ユーザーによる動作とそれに対するシステムの応答にタイムラグが生じる「レイテンシ」によって、吐き気や胃のむかつき、発汗の増加、眠気など、乗り物酔いに近い生理学的な反応が出ることがあります。

とはいえ、近年のAR/VR技術ではレイテンシ問題も改良が重ねられてきており、以前よりも上記のような症状を訴える人は少なくなってきた印象です。

ネットワーク環境問題

3つ目は通信環境問題です。特にARグラスなどを活用したリアルタイムコミュニケーションを実施する場合、強靭な通信環境が必要となります。

Wi-Fiが2本くらいしか立っていないような環境の場合、スムーズなコミュニケーションができずに業務に支障が出てしまう可能性があります。また、たとえばスマートフォンのテザリングなど通信量上限のある環境で使った場合、すぐに上限に達するリスクもあるので、注意が必要となります。

以上の通り、新しい技術を活用する際にはデメリットや注意点も存在しますが、デバイスの進化や5G環境の登場など、日進月歩で技術革新が進んでいるからこそ、当初から存在するデメリットは徐々に解消されつつあることも、おわかりいただけたと思います。

ソリューション事例(Spatial「Holographic Office」)

最後に、テレワークでの活用を想定した最新のAR・VRソリューション例として、米スタートアップのSpatial社のプロダクトをご紹介します。

Spatial社ではさまざまな用途で活用できるARおよびVRソリューションを開発しており、そのなかでもテレワーク対応として有効なものが「Holographic Office」と呼ばれるバーチャルオフィスソリューションです。

こちらは、複数の従業員が同じ仮想空間上のオフィスを共有し、アバターを使って物理的なオフィスと同じような就労環境を提供するというもの。実際のオフィス環境を再現させ、先述したように、同僚の隣に座ったりホワイトボードや付箋を使って議論するといったことが可能なので、中長期的にはリアル空間にはないレベルでの効率的な業務環境を目指しているといいます。

百聞は一見に如かず。以下の動画にて、「Holographic Office」が実現する次世代型テレワークのコンセプトを確認することができます。

AR・VRはテレワーク活用でも効果を発揮する

今回はテレワークツールとしてAR・VRを活用するケーススタディやそのメリット・デメリット、具体的な活用事例について、それぞれ見ていきました。VRやARはゲームなどのエンタメ領域だけのツール、という認識が変わった方も多いのではないでしょうか? テレワーク体験をよりリッチなものにするソリューションとして、まずは一部門だけでもテスト的なAR・VRの導入を検討してみることをオススメします。

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