近年、あらゆるデータがクラウドで管理されるようになってきました。共有したいファイルはオンラインストレージドライブにアップロードし、必要なデータはインターネット網を経由して適切なセキュリティのもとで管理をされています。
本記事では、そんなクラウドとAR技術が合わさった「ARクラウド」のインパクトについてお伝えします。ARクラウドとはどのような技術で、なぜ注目されていてどんなことができるようになるのか。具体的な最新事例とあわせて解説していきます。
なお、ARについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
ARとは? VR・MR・xRとの違いやビジネスでの活用を解説!!
おさらい:クラウドとは

多くの方が一度は耳にしたことがあるであろう「クラウド」とは、簡単に表現すると、「インターネットを経由して、必要なサービスを必要な分だけ管理・利用する」という考え方です。別称で「クラウド・コンピューティング」とも呼ばれています。
クラウド以前のデータ管理といえば、企業内に独自のサーバー(オンプレミスサーバー)を設置し、社内活動に必要なネットワーク網を敷いたうえで、限定した範囲で共有ができるようにしていました。しかし、このような閉域でのネットワークだと、たとえば従業員が敷設ネットワーク外に出張した場合、社内管理の情報にアクセスできません。
そこで、いつでも誰でもアクセスできるインターネット上に仮想のサーバーを設置し、そこでデータの管理をしようという流れが、クラウドの概念が立ち上がった経緯となります。
現在では冒頭にも記載したような、さまざまな領域でのデータ管理がクラウドでなされるようになっており、私たちの生活に必要不可欠なインフラになっているといえるでしょう。
ARクラウドとは

このクラウドとARを組み合わせた技術として、「ARクラウド」があります。インターネット上のクラウドとシームレスでインタラクティブな通信を前提にしたAR技術およびAR製品の総称です。
AR技術の民主化がはじまった頃、ARといえば基本的にひとりで楽しむためのものとして設計されていました。インターネットと接続はされているものの、ユーザーAのアクションがユーザーBに影響することはなく、一人ひとりが独自にコンテンツを楽しむ形となっていました。
これに対してARクラウドでは、ユーザーAとユーザーBは同じARフィールドを共有することになるため、ユーザーAがAR空間上で何かアクションを行うと、その行動がユーザーBにも影響したり、直接コミュニケーションがとれるようになります。
このように「シームレス × インタラクティブ」であることが、ARクラウドの特徴だといえます。
ARクラウドが注目される理由
なぜ、このARクラウドが注目されているかというと、ひとつは5G通信のスタートがあげられます。5G通信はこれまでの4Gに比べて通信速度が速く、大容量通信を実現する通信規格です。
5Gの普及によって双方向通信がより簡単でスピーディーになるため、フィジカル空間(現実世界)の情報とサイバー空間の情報を融合させるようなARとは非常に相性が良いのです。5Gの普及にともなうVRへのインパクトについては、以下の記事もご参照ください。
VRの市場規模は5G登場でどう変わるのか?2020年の業界動向と、2021年以降の市場を予想
また、年々低下するARデバイスの価格も、ARクラウドの普及を後押しする要因になると考えられています。デバイスが手に入りやすくなると、多くの人がARクラウドを使うようになるため、その分ARクラウド上の情報の総量が多くなり、生活インフラとしての役割を担うようになるでしょう。
ARクラウドの先にある「デジタルツイン」
ARクラウドの先にある概念として特記すべきが「デジタルツイン」、もしくは「ミラーワールド」です(本記事ではデジタルツインと表現します)。
デジタルツインとは、フィジカル空間の情報をセンサーなどを使ったIoT技術を活用してリアルタイムに取得し、サイバー空間に同じような形で再現する技術の総称です。フィジカル空間からデータを取得し、そのデータをリアルタイムでサイバー空間へと同期させることで、現実と類似するバーチャル空間ができあがります。サイバー空間では、現実には難しいシミュレーションや解析を行うことができ、その結果をもとにしてフィジカル空間で実際のアクションを行う、というフィードバックループがなされる想定です。
ARクラウドが人々のインフラとして普及すれば、デジタルツインの世界が実現するといわれています。なお、デジタルツインについては以下の記事もご参照ください。
デジタルツインとは?VRと何が違う?国交省による「Project PLATEAU」など個別事例も解説
ARクラウドでできること

それでは、ARクラウドではどういうことができるのでしょうか。以下に3つのポイントを記載します。
ユーザー同士のリアルタイムARコミュニケーション
最も大きな要素は、ARサービスのユーザー同士でコミュニケーションをリアルタイムでとれるようになる点です。たとえばデジタルツイン上で会話をしたり、デジタルツイン上のモノを一緒に動かすなどのコミュニケーションをとることができるようになります。
シミュレーション技術の向上
上述のとおり、デジタルツインが実現すると、ARクラウドでアクセスできるフィールドは現実とほぼ同一になります。つまり、現実世界ではそもそも実現が難しいオペレーションなどを、ARクラウド上で行うことができるようになるため、さまざまな応用シミュレーションが可能となります。
シームレスな生活のサポート
ARクラウドおよびデジタルツインが実現すると、私たちの生活も劇的に向上するでしょう。たとえばスーパーに行った時にARグラスを装着すれば、どこにどんな商品があって、添加物は含まれているのか、どこの工場から出荷されたものなのか、といった情報が瞬時にわかるようになると想像されます。もちろん、スーパーは一例であって、さまざまな領域で日常情報の拡張が実現するでしょう。
ARクラウドの最新事例
最後に、ARクラウドを応用する最新事例を2つご紹介します。
Googleマップの屋内ライブビュー

2021年5月に開催されたGoogle開発者向け年次会議「Google I/O 2021」において、Googleは「屋内ライブビュー」のサービス開始を発表しました。
もともとGoogleマップでは、2019年に「ライブビュー(Live View)」というARナビ機能を導入しており、街中でスマートフォンをかざすことで周辺のお店情報などを現実風景に重ねて表示できるようになりました。今回の屋内ライブビューは、文字どおりその屋内版となり、ショッピングモールや空港、駅の構内、大きなビルの内部などでの通路の見通しや方向、道順などがわかるようになります。
たとえば日本の地下鉄は何十本も線が通っており、慣れない人が乗り換えをしようとすると簡単に迷ってしまうでしょうから、そのようなシーンでこの屋内ライブビューは非常に有効に機能するといえます。
まずはスイスのチューリッヒでサービスが開始され、その次は2021年6月より東京で導入されるとのことです。
詳細は以下の動画でご確認ください。
プレティア・テクノロジーズの体験型AR
日本で唯一ARクラウドを提供するスタートアップ「プレティア・テクノロジーズ株式会社」では、独自のARクラウド技術を活用して、体験型のARソリューションを提供しています。
直近ではフジテレビジョンと提携して、AR謎解きゲーム『PSYCHO-PASS サイコパス 渋谷サイコハザード』を共同開発。2020年1月から9月にかけて実際の渋谷の街を舞台にして、アニメの主人公と一緒に操作するようなAR体験を提供しています。
ビッグテック各社が参入するARクラウド
以上、今回はクラウドとAR技術を複合した「ARクラウド」のインパクトについて解説しました。現在は5Gがスタートして通信がよりスムーズになる基盤が整ってきたことで、デジタルツインも見据えたARクラウドが大きく前進していく過渡期だといえます。Googleをはじめとするビッグテック各社(FacebookやMicrosoftなど)も多く投資している分野なので、編集部でも引き続き、この領域を注視してまいります。